今年はカラヴァッジョの没後400年ばかりが
目立つ年になっていますが、
実はボッティチェッリの没後500年でもあります。
数年前にストロッツィ宮殿で
ボッティチェッリ展をやっているフィレンツェは
彼が生まれ、活躍し、永眠する街であるにもかかわらず、
今年特別な展示は行いません。
そんな中にあって現在ピッティ宮殿内の
銀器博物館ではメディチ家のカメオコレクションの
特別展が開催されています。
このあまり宣伝もされず、地味な感じの特別展には
フランクフルトからボッティチェッリの作品が出展されています。
1849年以来初めてのフィレンツェ帰還となる作品は
陰謀により1476年に早逝した
ジュリアーノ・ディ・メディチ(Giuliano De' Medici)に愛され
当時も理想の美しさをたたえる女性として誉れ高かった
Simonetta cattaneo(シモネッタ・カッターネオ)の肖像画。
Mario Vespucci(マリオ・ヴェスプッチ)の婦人であったため、
通常はSimonetta Vespucci
(シモネッタ・ヴェスプッチ)として知られる女性で
この肖像画の中では儚げな視線の妖精のように描かれています。
全体に真珠をちりばめ、
リボンで飾られたやわらかな金色の髪は
どういう構造になっているのか
理解するのに苦労するような
手の込んだ髪型にまとめられていて印象的。
そして彼女の首にかかっているペンダントが
Sigillo di Nerone(ネロ帝の印形)と呼ばれるカメオ。
オリジナルは紅玉髄にネガ彫されたもので
オレンジ色が美しい作品。
現在は失われていますが、この紅玉髄を飾るために
羽を閉じたドラゴンをかたどった
黄金の嵌台が添えられていたといわれ、
Lorenzo Ghiberti(ロレンツォ・ギベルティ)が
1428年ころにその装飾部分を手がけていたそうです。
その一部にネロ帝への捧詞が刻まれていたことから
ながくSigillo di Neroneと呼ばれてきたものです。
1487年にロレンツォ・イル・マニフィコが
ヴェネツィアで教皇Paolo II Bardoのコレクションから
買い取ったと記録されています。
この紅玉髄のネガ彫りを使って
後の世に数多く作られたもののひとつが
肖像画の中でSimonettaがかけているカメオです。
他96点のカメオとともにロレンツォ・イル・マニフィコの
宝飾コレクションとなっている作品です。
描かれているのはApollo, Marsia e Olimpo。
Marsiaはフルートの使い手として有名で
周囲の声にのせられて自信過剰になり、
シターンの名手であるApolloに挑戦を挑みます。
勝者は敗者をどのように扱ってもよいという条件で
Museを審判としてApolloとMarsiaはその技を競いますが、
一回目の判定は引き分け。
これを不服に思ったApolloは
それぞれの楽器を逆さまにして再度競い合うことを提案。
もちろんApolloはシターンを逆さまにしても弾くことができ
Marsiaはフルートを逆さまにして吹くことはできず
Apolloの勝利に終わります。
勝ったApolloはMarsiaの傲慢さを罰するために
木に縛り付けて生きたまま皮剥ぎの刑に処したのです。
Sigillo di Neroneにはこのシーンが描かれています。
シターンを持って右手に立つApolloと
左手に木に縛られたMarsia。
二人の間でApolloに取りすがるOlimpoは
一説ではMarsiaの父親とされています。
この特別展の目玉はこのシモネッタ・ヴェスプッチの肖像画と
一連のSigillo di Neroneコレクションですが、
それ以外にも膨大な数のカメオと
パルミジャニーノやレオナルド、ボッティチェッリのデッサン画など
テーマを絞った非常に興味深い展示になっています。
地味な展覧会ですが、
機会があれば時間を見つけて是非足を運んでみてください。
Pregio e Bellezza
Cammei e intagli dei Medici
会場:銀器博物館(ピッティ宮殿)
会期:2010年3月25日から2010年6月27日まで
開館時間:8:15-18:30
休館日:月曜日
入場料:10ユーロ(ボボリ庭園など共通入場券)
神話の世界も、なかなかに残酷ですなぁ~。
カメオ、大英博物館にもふるーいのが収蔵されてるんだけど、ちゃんと見るとけっこう面白いんだよね。興味津々ですが、これも6月末までかぁ(涙)
神話とか伝説の世界って
残酷で理不尽だけど、すごく面白かったりしてね。
西洋絵画を楽しむには
ギリシャ神話もローマ神話も
知っていたほうがいいんだよねぇ。
まだ勉強不足なんだけど。
カメオとか宝飾とか調度品のほうが
当時実は絵画より値が張っていたので
すごいものが残っていたりするよね。
たまに観ると面白い。
いっつもだと疲れる(笑)。