不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Su di Cinta senese

2006-12-24 00:47:57 | うんちく・小ネタ

ちゃんと忘れないうちにどこかに書いておかないと。
せっかく色々教えてもらったんだし。

Cinta Seneseとは豚さんの種類。
シエナ周辺のごく限られた地域で育てられる貴重な品種。
現在市場に出回っている一般的なシロブタさんなんかよりも
ずっとずっと歴史が古く、
シエナのAmbrogio Lorenzettiの描いた
1338年のフレスコ画「善政」の中にもチンタ君は登場します。
このほかにもシエナ周辺に残る
「家畜(とりわけ豚さん)」の守護聖人
S.Antonio Abeteにまつわる絵画にはチンタ君登場率高。

非常に丈夫な品種で順応性も高く
一時はトスカーナではよく飼育されたといいます。
基本的に自由放牧が必要な豚さんで
1ヘクタール当たり6-7頭の飼育が限度といわれています。
広い森や野原に放し飼いにされ
オリーブの実や木の芽、牧草など、
その辺に生えている自然の植物を餌にして育ちます。
森の中をぐんぐん突き進んでいくので
目を傷つけないように大きな耳が前に垂れていて
ちゃんと目を覆うようになっています。
それ以外の特徴は顔が他の豚さんに比べて長細いこと、
そして、前足周辺に薄桃色のワッカ模様。
厳しく定められた規定では
このウス桃色の部分が身体全体の50%以下であり
かつ、後ろ足部分は完全に黒いものだけが正式チンタ君。

第二次世界大戦後、北ヨーロッパから
成長が早く、放牧の不要なシロブタさんが入ってきます。
戦後の需要と一時蔓延したブタのペストの影響などで
大量生産できる豚の飼育が主流となり
飼育に広い敷地を要し
出荷できるサイズ(140キログラム)に育てるために
2年かかるチンタ君は生産効率が悪いので
徐々に数が減っていきます。

そうこうしているうちに1980年代。
気づいたときには純潔のチンタ♂一頭、
シロブタとの混種♀約20頭を残すのみの絶滅の危機。

ここから必死の救出作戦開始。
できるだけ純血に近いものを残して交配。

今回訪問したFattoria della Cinta(飼育規模トップ)では
♂一頭に♀10頭。
血が濃くならないようにという配慮でオスは二年に一回交代。

01
現役の種豚さんたち
結構デカイけどおとなしい

たまぁに昔の名残でシロブタちゃん、まだらちゃん、
真っ黒、茶色など規定外のチンタ君も生まれてきます。

03
必死でご飯食べてるのでおしり向けて失礼
ちょっと純血じゃないけど一応チンタちゃん

子豚ちゃんたちは生後二ヶ月までは
母豚と同じ敷地で育ちます。

02
ちっちゃくても白いチンタ模様くっきり

その後は自由放牧になり
森あり、草原あり、池ありの
広い敷地(25ヘクタール)で伸び伸びと育ちます。

Allevamento
果てしなく広がる大地
うらやましい

二年かけて140キログラムまで成長すると
立派なチンタ君。

04
立派に成長

メスは年間に二回出産。
一回の出産で5-6頭を産むようです。
単純に計算しても
♀10頭の規模の養豚場で
6頭×2回×♀10頭=120頭。
これだけしか出荷できないわけです。
だから貴重なハムやらサラミになるのですね。
チンタのサラミなどが高価なのも納得。

チンタ君の脂肪分は非常に良質で
人肌で溶解し
コレステロールも低いのだそうですよ。

色々教えてくれた養豚場のDanieleさんは
とても素朴でまじめな人でした。
こういう人に育てられた豚さんは幸せねぇ。

logo_albero4 banner_01

最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
チンタ君って、かわいい言い方。憶えてしまった。 (ハヤト)
2006-12-24 07:36:17
チンタ君って、かわいい言い方。憶えてしまった。
>ハヤトさん (albero4)
2006-12-25 11:52:04
>ハヤトさん
チンタ君、かわいいでしょ。
図体はでかいのだけど、なんだか愛くるしくて
ついつい見ると「ちんたくぅん」と呼びたくなります。

コメントを投稿