クリスマス時期から年始にかけて
ここ数年恒例となっている展覧会がI mai visti。
フィレンツェのウフィツィ美術館の保管室に所蔵されていて
これまで一般に公開されていない作品を
テーマに沿って集めて展示するもの。
今年の展示のテーマはIl Pane degli Angeli(天使のパン)。
天から与えられる食べ物をまとめて
パーネ・デリ・アンジェリと呼ぶこともありますが
新約聖書に限ると
Eucaristia(聖体)のことを主に指し示しています。
キリスト教ではキリストの血と体を赤ワインとパンに見立てて、
ミサでは聖体拝受という儀式が執り行われます。
このときに信者に与えられる
白く丸い食べ物(Ostia)が聖体と呼ばれます。
今回の展示では33枚の絵画作品と
3枚の大きなタペストリーを通して
旧約聖書から新約聖書まで
「Il Pane degli Angeli」にまつわるエピソードが紹介され、
救世のストーリーと聖体の秘蹟が語られています。
テーマとしては非常に難しく、しかし興味深いものです。
元々識字率の低かった中世の時代に、
広くキリスト教を普及させるために
様々なシンボルを絵画の中に散りばめて生まれたのが
宗教絵画ですが
昨今の宗教離れや無関心に伴い、
こうした絵画の中のシンボル自体を読み取れない人が
増えていることを受けて、
あえてこの難しいテーマに取り組んだ
という力の入った展覧会です。
アダムの創造から始まり、アダムとイヴの原罪、
地上の楽園追放、イサクの犠牲、
空より降るマンナ、受胎告知、キリスト降誕、
エジプト逃亡、聖母子像、
キリストの受難、ゴルゴダの丘へ上るキリスト、
十字架降下、キリスト復活など
一連の旧約聖書、新約聖書のエピソードが集められています。
聖母子像には若き日のボッティチェッリの作品で
修復が完了したばかりのものもあり
ウフィツィに展示されている師匠である
フィリッポ・リッピの聖母子像を思わせます。
また同じく聖母子像には、
書物を読み聞かせる聖母マリアに抱かれて
瞑想する幼子キリストの姿を描いた
パルミジャニーノの作品もあります。
タイトルポスターにも使われている
キリストの受難の品々を前にして苦しみの表情を浮かべる
アレッサンドロ・アッローリの「嘆きの聖母」も必見。
I mai visti Il Pane degli Angeli
会場:Sala delle Reali Poste (Galleria degli Uffizi)
ウフィツィ美術館の建物の一角にある王宮郵便局
(美術館とは入り口が異なります)
会期:2007年12月20日から2008年2月3日まで
開館時間:10:00-17:00
休館日:月曜日
入場料:無料
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