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読書の森

夏恋 その1 再び

 
しばらくお休みしましたが、皆さんお元気ですか?ご無事な事祈ってます。

そこで本日は昔のblog『夏恋』を大幅に添削して載せました。読んでいただければ幸いです♪





2018年、夏の事。

「夏休みの共同研究に東京オリンピックをテーマにするなんて、どうかな?
オリンピックなんてお祭り騒ぎでお金がかかるだけなんて言う人もいるご時世だろう。かなりナーバスな反応が出るんじゃないか」
と望。

冷気が効いてるファミレスの片隅で高校生のカップルが話し込んでいた。
私立高校二年生の希(のぞみ)と望(のぞむ)だった。名前が二人合わせれば希望だね、という事から親しくなった。

傍目にはいかにも初々しい二人に見えたが、彼らなら世の中の動きに敏感で、自分たちはいっぱし世間を知ってる気分でいた。

「だからさ、未来のオリンピックの開催について考えるんじゃないの。1964年のオリンピックについて振り返ってみるのよ」と希。

二人とも日本史担当の青木先生が好きだった。
定年間近なのに平の爺ちゃん先生は大学受験をかなり無視した授業をする。
太平洋戦争について生徒に討論はさせるし、理系を目指す生徒に向かって日本史を学ぶ意義をとうとうと演説する。

「戦時の歴史を正確に理解することが世界を救う事になる」なんて言い出すので、周りで「イッテルから気をつけて」とか、「あれを辞めさせないのは、校長が生徒にセクハラした秘密を掴まれてるからだ」と陰口を叩かれようが何のその、別に間違った歴史を教えてる訳ではないとか言って、堂々と教えている。

それでも二人はこの熱血教師が好きだった。何故なら二人とも同じ大学の史学科志望だったから。

ただ、この夏青木先生がお気に入りの二人に特別に課した宿題には閉口した。
「現代史の中の出来事で何か一つ取り上げて研究しなさい。自分で課題を決めて考えてレポートを書いて欲しい。真剣に歴史を学ぼうとするなら自分の頭で深く考えて勉強するのが一番重要だ」



二人とも歴史はもちろん好きな課目であった。
しかし、史学科を目指す動機はもう一つあった。

二人とも某有名私立大学を狙っていた。
そこで同じ教室で仲良く学び、ずっと一緒にいたい。
一人っ子同士の恋愛に渋い顔をするお互いの保護者に、二人の仲を認めてもらう為には名のある大学に同時入学するのが一番インパクトがあると言う思いだった。

その大学の史学科の競争倍率が、文学部の中で一番低いから志望を決めたのである。
この些か不純な志望動機を青木先生は知らない。青木先生はこの大学出身なので、二人を推してる。結構出身大学では顔が効くらしい。

ともあれ青木先生の内申書の成績を良くするために、形の整ったレポートを仕上げにゃならぬ。
二人で知恵を絞った挙句、希が突然「東京オリンピック」と言い出したのである。

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