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読書の森

五十嵐律人『喰うか騙るか』

少子化について話が飛躍した昨日です。

これについてSNSで(現在休止)婆さんが熱く語ると「恵まれた高齢者に何が分かるかよ」と反発受ける場合がよくあります。
確かに現社会で一番経済的に恵まれてる階層はバブル期に会社の中堅層だった高齢者でございます。ただし、これはあくまでも上層の人の話、年金生活者の半分くらいの貧窮度は昨今酷うございます(冗談抜きで婆もその一人)。

それでも高齢者をターゲットにした詐欺事件は後を断ちません。
何故なら金の有る無しにかかわらず高齢者の殆どがネット情報に弱いからですよ。
小さな頃からゲーム機器を楽しみネットに慣れた世代と、ネットなるものにまるきり触れて無い世代と、ネット技術の巧拙でその能力を比較するのは不公平である、と私は思うのですが、又も反発されちゃいそう。

無駄話はさておきオール讀物11月号記載の短篇小説『喰うか騙るか』は高齢者を狙う詐欺集団のお話であります。都会砂漠の乾いたお話。
著者五十嵐律人さんは新進気鋭の弁護士兼作家です。顔写真は『法廷遊戯』でメフィスト賞受賞当時のもの。彼が選んだ面白い小説に東野圭吾の『白夜行』があったので興味を持ちました。

丁度、就職氷河期と今どきのZ世代との中間で1990年生まれ、独身らしい。
婆さんは興味津々で読んだ。ところがよく分からない。断じてボケて筋書きが追えない訳じゃない(自分のプライドで言ってる)、つまり主人公の詐欺師の感覚に従いていけないのです。


この主人公は奨学金だけで大学生活を送り無事卒業、就職した若者ですが、どうも会社の仕事が合わない、たった4カ月で退職してしまいました。

一番困ったのが金の問題。
卒業時の奨学金の返済額は約500万円、そして貯金残高が830円。
リアルかつシビアに書いてある。

この時点で理解し難くなります。
新卒採用です、それがたった4カ月で何もかも嫌になって辞めちゃう、特にひどい理由がある訳じゃない、お金は借金だけなのにと????と思ってしまう。
結構頭の良さそうな主人公から笑われそうです。


生活資金を稼ぐ為にコンビニでバイトしてる主人公の許にリクルートの携帯がかかる。その相手はなんと詐欺グループの直接の上司だったのです。

詐欺グループにとって人の履歴情報を集めるのはお手のもので、奨学金を取る位の頭脳を持つ主人公は動かし易い訳なのです。
そして狙うターゲットは全て高齢者!
狙った高齢者の電話番号や住所を知るのは勿論、家族構成で孫の名前くらいバレるのは情報集めのプロからはかなり軽い仕事らしい。
そしてこれら詐欺グループの上層部は徹底的に姿を見せないので、捕まえても全てトカゲの尻尾切りになってしまいます。

そこら辺の犯罪経緯を、さすが弁護士さんで非常に明確に説明してくださいます。以前作った詐欺集団の自作のお粗末さが恥ずかしくて冷や汗をかきました。
ともあれ現実では容易に暴けない組織で、秘密を漏らすと命に関わる危険もあるようです。
明確に説明されてますが、明快とは言えません。
理解し難い点が多々あります。

何故かと言うと世代間で価値観が恐ろしく違うからなのです。
いくら援助してくれないからと言っても、
携帯で親からの電話全てを着信拒否にする主人公に私はついていけない。
故に彼らのつく「嘘」は何の為の嘘か判断出来ないからなのです。

ただ、この高齢者を狙う詐欺グループの話は非常に興味深いテーマです。
より心理的に深みを持たせて、血も涙もある物語かつ理性的に語るとかなり面白いと思います。


「嘘とお世辞のご時世」は何も今に始まった事でなく、この文句昭和30年代の演歌『東京流れもの』の歌詞にあります。

そこで今日のオマケ🫵
そうです。いつの嘘とお世辞の時代でも変わらないものは食欲^_^。
傷みやすい挽肉を保存食にする時、よくミートソースにして冷凍します。今回はカレー味のミートソースでスパゲッティにかけました。


さて上の写真に出てる方は作家としてベテランの域にある方々。
かなり楽に面白く読めます。
巧拙より世代間の差を強く感じた今日の読書でした。
要はバブルであります。バブル経験者は甘い砂糖的要素があって楽なのだと気づいたのです。

世代を超越した「面白い小説って何なのかなあ」としみじみ考えた本日であります。多分それって「とんでもないもの」かも知れませんよ。「オカルト」とか?

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