読書の森

遠くへ来てしまった



私は、知らず知らずに、随分と遠くへ来たと思う。
ほんの短い間、と言ってもここ10年程を、私はただ前を見れば良いと駆けてきてしまった。
その結果、大事なものを喪って今居る自分、今居る処は何なのだろうと思ってしまうのだ。

この10年間には、大震災があった。
自分としては友人との再会が出来た。
しかし、故あって移動が目まぐるしかった。

ひどく昔懐かしく、そして重なっていく年齢に逆らって妙に行動的になった時期だった。
木更津、市川、深川、両国、茅場町、横浜、横須賀、逗子、鎌倉、小田原。
思いつくと、電車に乗り知らない街の風景を見に行った。
知らない街へ行く迄の弾んだ気持ちの快さに現実の生活をすっかり忘れていた。

家には慣れない土地で、独りぼっちの母が何処へも行けずに待っていたのである。



年老いた母は徐々に弱り呆けて、私が気がついた時、取り返しのつかない状態になった。
母が他界して初めて、人の情というものを甘く見ていた自分に気付いた。

「私を本当に必要としていた人は、母親だけだった」という単純な事実にやっと気付いたのである。
それは母と娘の心理分析とか、母の介護の苦しさとかくだくだしい言い訳を超えた真実だ。

今、買い物や炊事をしても母の好物を選ぶ事もない。
それは寂しい事だ。
とっくの昔のそうだが、私の立ち位置は娘ではないのだ。
今やどう転んでも娘とは言えない。
誰に反抗する事も出来なければ、誰のせいにも出来ない。

母が別の場所で無事に暮らしていればこその自由だったのだ。
それがやっと分かった自分の、なんと情けない事だろう。

この時、私の人生も随分遠く迄来てしまったとしみじみ感じた。
もう後戻り出来ないのだ。

遠くへは来たが未だ私の旅は続きそうである。
続く以上歩いて行くのだろう。
これからも、ネットでもリアルでも人と出会い、心の触れ合いを持てたら良いと思う。

(^_^)暫くお休みして、又昭和レトロなお話をしたいと思います。
それまでお元気で!



この10年で自然も大きく変化したと思います。
厳しく激しく、人間を倒そうとしているかの様です。
強大な台風が日本列島に近づいていると言います。
どうかくれぐれもお気をつけてご無事でいてください。

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