「ぶかんくひどうとく」の続きです(笑)。
実は、部分意匠等、それぞれの制度がどの程度利用されているのかが急に気になってですね。
実際どうなの?が今回取り上げた最大の理由です。
部分意匠等のイメージがわかない方がいらっしゃったら、弊所HPの「意匠法特有の制度」でもみていただくとして、ここでは説明を割愛します。
さて、みていきましょう!
意匠登録出願は全体で年間3万件強です。昨年は約32,000件でした。
(1)部分意匠
約10,000件
微増傾向
3件に1件が部分意匠ということで、割とよく利用されていますね。
(2)関連意匠
約4,500件
横ばい傾向
この数年、安定していて、13-15%程度の利用率のようです。
(3)秘密意匠
約1000件
微減傾向
3%前後でしょうか。
すぐに商品化するような場合には利用価値がなく、意匠登録出願する場合は商品化が近い(又は既に販売している)ことが多いので…。ただ、発表がまだ(登録公報がでるよりも)先になるような場合にはよく使われる制度です。
(4)組物の意匠
2011年6件、2010年19件、2009年31件、2008年54件
ん?えっ?
利用度が異常に低い
若干数字が微妙な気がします。もう少し多いような…。
ということで、IPDLで2011年出願で登録されたものをチェックしてみたところ、20件弱はあるようです。
ちなみに、2012年出願で登録されたものは、今のところ9件か…。
まっ、異常に少ないのは確か。
利用率を語るレベルにはないようです。
その中でも、あえて特色を挙げるとしたら、「一組の自動車用フロアマットセット」の占める割合がきもーち多いようです(割合を語るほどでもないですけど)。
(5)特徴記載書
意匠登録出願上位600社についての集計(このデータしか見つけられませんでした)
平成11年には利用割合として1%を超えたけど、平成12年以降1%を切り、
平成16年以降は0.3%未満
おそらく全出願に対して、100件もないかな?数十件程度かな?というレベル
ともかく、利用数はもともと少なく、どんどん減少して近年では殆ど利用されていないというレベル
(6)動的意匠
件数不明(ご存知の方はいらっしゃいますか?)
なお、HYPAT-iで意匠の説明欄に動的意匠とか意匠法第6条第4項とかのKWを入れている出願が年間30件程度といったところ。
動的意匠の保護を受ける場合の願書記載要領にはバリエーションが多くて件数がつかみにくいですが、年30件ではなく実際はもっとあるでしょうね。
利用分野は多岐にわたっているようですが、比較的、蓋が開閉するものや展開できるようなもの(包装用の箱や容器)が多いようですね。
※(1)(2)は特許行政年次報告書2013年版「第1部 知的財産権をめぐる動向」より
※(3)(4)は意匠制度小委員会資料「部分意匠等の意匠登録出願の国際出願における取り扱いについて」より
※(5)は特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書19年度「意匠登録出願における「特徴記載書」に関する調査研究」より
さてさて、動的意匠については利用数も不明ですからなんともコメントできませんけど、私個人の印象としては、
(A)「組物の意匠」は予想通り利用度が極端に低い
(B)「特徴記載書」は予想より大幅に利用度が低い
組物の意匠については、システムデザイン等の適切な保護を掲げ、平成10年意匠法改正によって、組物全体の統一感を保護するイメージ(構成物品個々は新規性等がなくてもOK)で登録要件を緩和したり、保護品目を拡大したりしました。
ただ、やはり「セットもの」としての保護を受けてもなかなか行使できない(使いにくい)でしょうから、予想通りといいますか、利用は増えていないですね。
特徴記載書については、利用度はまぁ低いとは思っていましたが、これほどまでに低いとは。
特徴記載書についても、平成10年改正によるもので、施行は平成11年から。
初年度だけ1%、それ以降は1%も利用されていないわけですからビックリですね。
実際のところ、特徴記載書は「審査・審判の迅速」と「第三者に出願人が考える特徴を主張」という意図で導入されたものです。
もちろん、意匠法施行規則第6条第3項には「登録意匠の範囲を定める場合においては、特徴記載書の記載を考慮してはならない。」とされています。
でも、提出義務がないのに提出するなんて、出願人が得する場面はあまりないような気がします(ゼロとは言いませんけど)。
登録意匠の範囲を定める場合だって、やはり特徴記載書をチェックしないはずがないですし、判断するのは人間ですから特徴記載書があれば「ひきづられてしまいます」。
特徴は先行意匠との差異によって定められるものですから(←ここが重要)、自ら主張するのは墓穴を掘る可能性があります(特に、複数の特徴を見出せるような場合や、想定外の先行意匠が提示された場合など)。
異常に利用されていない制度はここまでとして…。
中国では、2009年10月(4年前)より、「関連意匠」制度に似た(保護可能という意味で)制度として、併合出願制度があります。
これを上手く利用すれば、部分意匠制度がないことの埋め合わせができ、特徴を浮き彫りにすることが可能です。しかも1出願で10類似意匠まで放り込めますし。
この制度を上手く使っていこうとすると、日本で関連意匠制度を使ってバリエーションを展開し、それらをまとめて中国へというルートが出来ますよね。
日本から中国へ意匠の保護を求める企業は多いものの、まだこの制度が上手く活用されていないような…(←個人的印象)。
ということで、宣伝↓(笑)。
中国の「1出願10類似意匠」関連の利用価値や留意点などは、弊所の以下の記事をご参照下さいませ!
IPレポート:《中国知財情報》
特に、
【中国意匠】模倣品対策シリーズ(2)-中国意匠制度の活用法と注意点-
とりあえず、「ぶかんくひどうとく」の利用度チェックは完了ということで。
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