特許異議申立制度が復活するということで、徐々にでも勉強していかないといけないなーと。まとめて後から勉強するって感じだと、お客様からの質問にもまともに答えられなくなるし…。
そんなこともありまして、とりあえず分かる範囲で旧特許異議申立制度や無効審判制度との違いを踏まえつつ、項目列挙してみました。何か間違っていたらご指摘くださいませ。
まずは、施行日・経過措置(の予想)
施行日:平成26年5月14日の公布の日から起算して一年を超えない範囲
→平成27年4月1日かな?(勝手な予想)
経過措置:過去の経過措置の例をみる限り、施行日以降に特許掲載公報が発行されたものが対象かな?
→仮にそうだとすると、平成27年4月1日(水)がちょうど特許掲載公報発行日ですね…
●(追記) 「施行日以降に特許掲載公報が発行されたものが対象」との回答が説明会でなされたとのことです。
<<特許異議申立制度についての、とりあえずのまとめメモ>>
では、以下、まとめた内容に!
(1)特許異議申立人
何人も申立て可(匿名は不可)【113条、115条1項】
・無効審判:利害関係人のみ請求可【123条2項。異議制度施行前は「何人でも可」】
(2)申立ての期間
特許掲載公報発行の日から6月以内【113条】
・無効審判:期間制限なし
(3)申立ての手数料(印紙代)
16,500円+請求項×2,400円【195条別表】
・無効審判:49,500円+請求項数×5,500円
・旧異議 : 8,700円+請求項数×1,000円
・新異議は、旧異議と比較して、2倍に!
(4)申立ての単位
請求項ごとに申立て可【113条】
(5)異議理由
公益に反するもの(新規性、進歩性、記載不備、新規事項追加等)【113条】
・無効審判:公益に反するもの
以外に、
権利の帰属に関するものも(冒認、共同出願違反)
(6)申立書の要旨変更補正
特許異議申立期間内であっても、取消理由通知があった後は、要旨変更となる補正不可【115条2項】
・無効審判:請求理由につき、条件付きで認める(審理を不当に遅延させず、かつ訂正請求による補正等)
・旧異議 :申立期間経過後は、要旨変更となる補正不可(経過前なら可だった)
・要旨変更具体例:申立人の変更
、対象特許番号の変更、請求項の変更、
申立理由・証拠の追加・変更など
※これについては、下の方で検討
(7)審理主体
審判官合議体【114条1項】
(8)審理の方式
書面審理【118条1項】
・無効審判:原則口頭審理
・旧異議 :原則書面審理
・口頭審理をせず、簡易かつ迅速な制度として、無効審判制度と区分けした感じ
(9)複数の申立ての併合
原則併合【120条の3第1項】
・無効審判:当事者の双方又は一方が同一である場合、併合可というレベル
(10)申立ての取下げ
取消理由通知があると取下げ不可【120条の4第1項】
請求項ごとの取下げ可【120条の4第2項】
・無効審判:審決確定まで取下げ可。但し、答弁書提出後は相手方の承諾必要
(11)参加
利害関係人による特許権者の補助参加のみ【118条1項】
・無効審判:請求人としての参加or
当事者の一方を補助するための参加が可能
(12)職権審理
申し立てない理由についても審理可、
申立てがなされない請求項については審理不可
【120条の2】
(13)特許権者の反論
取消理由通知に対して意見書・訂正請求書を提出可【120条の5】
・無効審判:審判請求書に対して答弁書・訂正請求書を提出可
(14)訂正請求
訂正可能時期:取消理由通知に対する意見書提出期間【120条の5第2項】
・無効審判:副本送達後の答弁書提出期間、無効理由通知に対する意見書提出期間、請求書要旨変更補正を許可したときの副本送達後の答弁書提出期間、審決予告に対する指定期間、その他134条の3
・訂正に関する要件は、たくさんあるので書ききれない(時期を除けば無効審判の訂正請求と同じって感じ。ただ、審決予告との関係のところを除く)
(15)訂正請求に対する申立人の反論機会
意見提出の機会あり。但し、例外あり【120条の5第5項】
新たな理由や証拠を提出することは、申立書の補正に該当する場合には、要旨変更として不可だけど、意見書の中でいう分には大丈夫(職権審理に委ねる旧制度と同じことになってしまうけど)
・例外:意見提出を希望しないときや(申立書にその旨記載等)、不要と認められる(取消理由解消しないのが明らかとか?)等の特別な事情があるとき
・旧異議:制度上、反論の機会はなかった(上申書で主張するのは自由だけど職権審理に委ねるしかなかった)
・無効審判:審判請求書の理由の補正、弁駁書の提出が可能
(16)決定
特許の取消又は維持の決定【104条】
(17)決定予告
なし????【164条の2不準用】
※これについては、下の方で検討
●(追記)「条文上規定はしていないが、報告書の内容に沿った形で運用上対応することで検討中」との回答が説明会でなされたとのことです。
(18)不服申立て
特許権者等は取消決定の取消しを求めて知的財産高等裁判所に出訴可
・維持決定に対しては不服申立て不可【114条5項、178条】
・無効審判:当事者等は、審決の取消しを求めて知的財産高等裁判所に出訴可
(19)(出訴後などにおける)訂正審判
特許庁係属から決定確定まで、訂正審判の請求不可【126条2項】
・特許庁係属(始期)の意義は、特許異議申立書の副本送達時(だと思う)
(20)一事不再理効
なし【167条不準用】
・申立人と同じ者が、同一証拠・同一理由で無効審判請求することができる
・無効審判:一事不再理効あり(但し、H23改正により、第三者効は廃止)
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※(6)申立書の要旨変更補正について<検討>
【参考】
「強く安定した権利の早期設定及びユーザーの利便性向上に向けて」(産業構造審議会知的財産分科会 報告書、平成25年9月公開)
http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/toushintou/tokkyo_bukai_houkoku1.htm
この審議会報告書によれば、以下の記述がある。
【審議会報告書P16】
『複数の申立てをまとめて審理するため、従前の特許付与後の異議申立制度では、申立期間の経過を待って審理をする運用をしていたが、新たな付与後レビューでは、特許権者が希望すれば、申立てがされた後、申立期間の経過を待つことなく速やかに審理を開始する運用とすることで、審理の結果を早期に得られるようにすることが適切である。』
上記報告書によれば、運用か何かで、特許権者が早期審理開始を希望できると思われる。この関係もあって、補正期間が短縮されているものと思われる。
異議対象案件については早期着手の希望があったかどうかをウォッチングしておく必要があるかも?
そうはいっても、そんなに早く申立書が提出される場面はあまりないだろうし(期限近くにならないと申立書が出てこないのが普通)、副本送達→希望伺い→希望受理→審理開始→取消理由通知、なんてやってると、結局のところ申立期間を過ぎてしまうような…。
それに、誰でも申立可能なわけだから、別の人が別の申立書を出せば…(特許異議申立の期間制限は6月固定なので)。
などなど。
ということで、今回新たに規定された要旨変更補正の期間制限については、そんなに大きな意味を持ちそうもないなと思うわけで。
※(17)決定予告について<検討>
特許異議申立制度では、無効審判における審決予告【164条の2】に相当する規定がないし、164条の2を準用していもいない。
そのため、審決予告に相当する決定予告制度は、導入されないようにも思われる。
ただ、上記報告書によれば、訂正機会を(少なくとも)2度与える方針となっている。
【審議会報告書P17】
『平成23年(2011年)の法改正で無効審判に審決の予告を創設した趣旨を踏まえ、付与後レビューにおいても、特許を取り消す旨の判断となった場合には、事前に審判合議体の判断を示した後に、訂正の機会を特許権者に与えることが適切と考えられる。この場合、特許権者は、審判合議体の判断を踏まえて訂正を行う機会が、先の取消理由の通知時と合わせて二度与えられる(無効審判の場合、審判合議体の判断が示されるのは審決の予告の時のみ)ことになり、より適切な対応を図ることが可能となる。』
うーん。
無効審判では、審決予告が規定されてあり、その場合には訂正請求が可能【164条の2】
そもそも、審決予告の導入と、提訴後の訂正審判を不可としたことは、セットであり、H23改正の基本姿勢だった。
ちなみに、上記(19)のとおり、異議決定後に訂正審判を請求できない点は明文化されている。
訂正審判不可は明文化してあるから、とりあえずキャッチボール現象やダブルトラック現象のないような手当はしてあるわけ。
でも、その前提で、異議決定前の訂正機会が1回しか保証されないのであれば、「無効審判を請求するより特許異議を申立てる方が、潰す側にとってオイシイ」(特許権者に酷)となってしまうのではないか?つまり、現行法より改正法の方が、特許権者にキツイ。
そう考えていくと、やっぱり、決定予告を明文化せずに運用によりなんとかする方向かなー。
仮に運用でなんとかするとしたら、運用で決定予告という体にしてしまうと、訂正請求についてまで運用になってしまうし、それは無茶な気が…。
そうすると、決定予告に代えて、再度(2度目の)取消理由通知を行うことが考えられるかな。
これなら運用で出来なくもないけど、そうすると、再度、特許異議申立人に意見を求めることが原則になってしまう(上記(15))。
そうすると無限ループっぽくなるし…。2度目の取消理由通知の際に訂正があっても、「不要と認められる等の特別な事情」で片づけて、議論させない運用(異議は当事者系じゃないしね)にしてしまうのだろうか。
どっちにしても、なんかしっくりこない。
運用等でなんとかするつもりだったなら、なぜ、最初から決定予告を明文化しなかったのか?という疑問が残る。
柔軟性をもたせたかったのかな?
運用や規則で訂正2回保障をしておき、後から様子をみて、「訂正機会なんか1回でもいいじゃん」とか運用変更で対応したいのかも?
ところで、取消理由通知を1回目にだした段階で、審判合議体としての取消の意思表示はしているわけだから、無効審判請求書の副本送達による訂正機会とは話が違って、実質的には無効理由通知や審決予告に対する訂正機会の保障と一緒だからな、というスタンスもあり得なくはないわけで。
このあたりは議論の分かれるところで、諸々の事情を踏まえて、とりあえず明文化を回避したと見るのが妥当かな?
そんなこんなで、今のままだと、ちょっと特許権者には厳し目になりそうな気がしつつ、運用等が明らかになることを楽しみに待つとします(結論なし(汗)…というか、独り言みたいなものでした)。
●(追記)「条文上規定はしていないが、報告書の内容に沿った形で運用上対応することで検討中」との回答が説明会でなされたとのことです。
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以上、自分的覚書としつつ、せっかくなので、ブログにアップしてみました!
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