Notes3~ヨミガタリストダイアリー

名古屋市在住の俳優/朗読者・ニシムラタツヤの演(や)ったり読んだりの覚え書き

2つの僥倖(ぎょうこう)1-「女川歴史民俗紀行」について

2014年05月11日 | 朗読・声の周辺


■4月下旬から、全くの偶然から幸運としか言いようのない機会に連続して恵まれたので、これは記録しておかなくては、と思いました。ごくごく簡単でありますが、まずは4月27日から2日間にわたり参加させていただいた、「女川歴史民俗紀行」について、です。きっかけは、確か宮城県の民謡「大漁唄い込み」のことをつぶやいていたら、その時にTwitter上で知り合った井上リサ @JPN_LISA さんにお誘いを頂き、参加させて頂きました。宮城県の東端、牡鹿郡女川町および東松島市にお邪魔しました。東日本大震災で深く傷つき、復興途上にある町を巡り、その気候や風土、産業、そしてそこに住む方々から直接話を伺うことで、報道や通り一遍の情報では知り得ない地域の実相、と言うんでしょうか、それらに深く触れることができました。
■名古屋から女川まで、夜行バスと新幹線、路線バスを乗り継いで12時間。地元サッカーチーム、コバルトーレの試合を観戦し、NHKのドラマ「ラジオ」でも知られた蒲鉾本舗高政さん、おながわ災害FM、ど根性桜、東松島市の高砂長寿味噌本舗にお邪魔しました。私はそこで1日目の夜(ツアーとしては2日目の夜)、参加者の皆さんを前に、高村光太郎が若き日に石巻を発ち、三陸地方を北上した際に遺した紀行文「三陸廻り」、そして遥か平安期の東北における地震の史実を記録した「日本三大実録」の一部、そして東北電力女川原子力発電所の建設時において、作業員さんの間で歌われたと伝わる「女川建準行動歌」の3篇を読ませて頂きました。
■唐突ですが、私は原子力発電について、漸進的、段階的に使用しないように進めるべきだという考えを持つ者です。これまで自分からはっきり申し上げたことはありませんでしたが、だからといって現在問題になっているような、放射線や放射能に対する無知と無理解に基づく「風評被害」には反対し、自分がそれらを振りまかないように動く、と心に決めている者でもあります。そして被災地がどのような事情を抱えているか、そこに思いを至らせず、もしくは最初からそのつもりもなく、愉快犯的に被災された人々をセカンド・レイプする夥しい事象に、ずっと怒りを抱えてきた者でもありました。その意味で、今回の1泊2日という短い期間でありながら、一般の旅行者ではなかなか触れることが難しかった、地元の、そこに住み、働き、生きる人々の声を直接聞くことができたのは、単に震災云々という前に、表現に携わる者としても、本当に幸運なことだったな、と。
■風土、身体、そして音声と言葉。この4者がどのように結びあい、何を生むことができるのか、そこで自分は何をすべきか。そのための新たな出発点にしたいと強く感じています。今回のツアーをご案内頂いた井上さんを始め、参加されて私の朗読を聴いていただいた皆様、そして女川町、東松島市の皆様に深く御礼申し上げます。
■なお、今回読んだ3編については、近日きちんと公開できるよう準備を進めます。いずれもすでにパブリックドメインになっている(か、どうかも確認できない程古い)作品ばかりですので。

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