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普段色々考えていることの日記です。

『名探偵の掟』 東野圭吾

2008年04月05日 | 推理小説
名探偵の掟 (講談社文庫)
東野 圭吾
講談社

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名探偵の掟 東野圭吾 講談社文庫 1999年
密室宣言 ートリックの王様
 まぁ、実際に密室宣言なんてされると吹き出しちゃうでしょうが、推理小説で密室宣言があると、「きた来た」と嬉しくなっちゃいます。
 私、美女空中浮遊のマジックとか好きですけど、それが何か?
 密室トリックを解くのは苦手ですけどね。特に、機械仕掛けのトリックは一番苦手です。実際に目の前で実演してくれると、「おお!」と感動できるんでしょうけどね。

意外な犯人 ーフーダニット
 犯人当てに関する記述にはかなりドキッと来た。実際にここまでひどくはないけど、私も犯人を当てただけで満足する部分があるから。
 で、結末は生ゴミ投げないよ。
 これはこれで、アリだと思うもの。きちんと伏線張ってくれればね。

屋敷を孤立させる理由 ー閉ざされた空間
 クローズド・サークルは嫌いです。そのシチュエーションにあまりにも無理があるし、犯人は外的要因に頼りすぎです。
 そもそも、なぜそんな場所選んだのか、そこの部分の説明をきっちりやって欲しいです。
 クローズドの説明で、私が一番納得した説明は「オリエント急行」ぐらいですか? 実現可能かどうかは置いておいて。

最後の一言 ーダイイングメッセージ
 ダイイングメッセージに関しては、有名なエラリー・クイーンが「Xの悲劇」で言及しています。(ネタバレじゃないよ)
 しかし、同じ作者によって全否定されていたりします。
 このダイイングメッセージは大っ嫌いです。無駄に状況を混乱させ、読者をミスディレクションに導こうという魂胆が見え見えです。
 そもそも被害者がそのメッセージを残そうとするのを、犯人が見過ごすってことがあり得るのだろうか?
 ああ、だから秘密めいた暗号なんだ。

アリバイ宣言 ー時刻表トリック
 有名な「点と線」で花開いた時刻表トリック。
 日本でしか実現不可能というのは、誇るべきなのかどうなのか。尼崎で起きた脱線事故を見つめながら、考えてしまいます。最近のJR西日本は、遅れるのが当たり前な電車になってしまって、それもどうかなと思います。
 話それましたね。
 アリバイに関しては、実際に本当に起こった殺人事件では、アリバイがある人の方が疑われていました。完璧なアリバイがある方が怪しいらしいですよ。普通の人はアリバイなんてありませんから。
 ちなみに、アリバイ崩しのまったく正反対の作品が「十二人の怒れる男」だと思います。

『花のOL湯煙温泉殺人事件』論 ー二時間ドラマ
 言い尽くされた話だよね。
 私の故郷も舞台に選ばれたことがあって、観光協会なんかはえらい張り切っていました。我が家にもその番組を録画したビデオがあります。
 ツッコミどころ満載。
 そんな伝説ねぇよ! とか。いや、それ伝統でも何でもないし。結構最近の話だし。とか。
 犯人の動機も適当なら、その犯人を見つけるヒントもかなり投げやりでした。
 番組のプロデューサーや脚本家は、これが本当に面白いと思っているのかなぁ。
 ム、いや、別の意味で爆笑できる作品だけど…

切断の理由 ーバラバラ死体
 実際の殺人事件では、ひとえに死体を持ち運びしやすいようにが第一の理由みたいですね。次に死体の身元が分からないように。
 死体を隠すのに最も手っ取り早い方法は、山中や海、湖、池に捨てることです。地中に埋めるという手もありますが、残土の問題がありますのでそれの処理が大変です。
 ただ、私の大学時代の教授曰く、十中八、九、身元はわれるらしいです。

トリックの正体 ー???
 あるものがないのであれば、それは初めから無かったのです。

殺すなら今 ー童謡殺人
 童謡殺人で最も有名なものは、『そして誰もいなくなった』でしょうか。
 この作品は叙述トリックとしてもピカイチで、探偵役のいない推理小説としても新境地をいっています。もちろん、クローズド・サークルの代表作でもあります。
 アガサは童謡殺人の名手で、『ポケットにライ麦を』とか『24話の黒つぐみ』なんかも有名です。

アンフェアの見本 ーミステリーのルール
 ミステリーのルールに関しては、『ノックスの十戒』が有名です。また、あわせて『ヴァン・ダインの二十則』も読んで頂けると、ミステリーのお約束が分かって面白いです。
 特に『ヴァン・ダインの二十則』は、『花のOL湯煙温泉殺人事件』を全否定です。
 『ノックスの十戒』で有名な項目は、「中国人を登場させてはいけない」です。
 当時の欧米は東洋人に対してミステリアスで超人的だという差別と偏見があったことによる言葉だとは思いますが、この言葉に関して面白い解説があったのでその文章を引用します。

~そうですねえ。異国の大地中国を舞台にした本格ミステリにおいて謎解き部分で明かされた真相が

 実は中国人が21日間かけて祈祷をして呪い殺そうとしたからだ。とか
 中国人の女の人が21枚の鏡を使って溶かし殺したのが真相です。とか
 この夏の盛りに2,3千人が凍死したのは中国人のジジイが術を使って気温を下げたからです。だの
 中国人の王子様が仙人から貰った特別な鏡の片面の光を当てたら相手は死にました。最後はもう片面の光を当てたらその人が生き返ったのでめでたしめでたし。

とか言われたら誰だって本を壁に叩きつけるでしょう。~

引用サイト:緋色の水面<ttp://www.mis.ne.jp/~sukkie/hiiro/>

 文章を書かれた方は封神演義ファン。上記のシーンは封神演義に実際にあるシーンです。
 あっはっは。
 確かに水面を歩くトリックも死んだあと復活するトリックも実は神の子だからだと言われると、本を壁に叩きつけたくなります。
 あと、『ノックスの十戒』に全て抵触するミステリー・ルール「アンチノックス」を作り、それに基づかれて書かれた小説とかもあります。姉妹品に「アンチ・ヴァン・ダイン」も。
 こちらもパソコンを壁に叩きつけたくなること請け合いです。是非検索してみて下さい。

禁句 ー首無し死体
 使い古された手なので、コメントのしようが……
 首無し死体もので一番好きな作品は、『奇巌城』です。
 あ、これは身元が判別しない死体でしたね。

凶器の話 ー殺人手段
 そんなに凶器にこだわらんでも普通に毒薬でいいんじゃねぇ?、とは言っちゃいけないんですね。

最後の選択 ー名探偵のその後
 名探偵の生きる余地って本当にないのでしょうか?
 確かに、警察の科学捜査の前には名探偵の推理も形無しですけど。
 でも、数ある冤罪事件を見ると、警察の科学捜査は意外と当てにならないんじゃ。
 特に、日本の警察は容疑者の自白に頼っていることで有名ですし、科学捜査ってどこまで信頼できるのだろうと思います。
 今こそ名探偵の活躍する場じゃないのかなぁ。


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