黒猫のつぶやき

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『コンプガチャ』だけではない? 課金ソーシャルゲームの実態

2012-05-11 13:39:32 | 時事
 今月になり,消費者庁がソーシャルゲームの「コンプガチャ」を規制する方針を打ち出し,それをきっかけに業界各社が相次いでコンプガチャの中止を表明するなど,波紋が広まっています。ただ,現状では「コンプガチャ」という言葉だけが一人歩きしているといった印象で,コンプガチャを含めたソーシャルゲームの課金システムについて,実態に踏み込んだ問題の検討が十分に行われているようには思えません。
 黒猫自身も,ソーシャルゲームにそれほど詳しいわけではありませんが,この記事では知っている限りで,課金システムの実態と問題点について考察を加えてみます。

1 キーワードは「カード形式」,「ガチャ」,そして「ユーザー同士の競争」
 ソーシャルゲームの特質については,一般論を長々と述べても経験のない人には実態が伝わりませんので,ここでは黒猫もプレイしている『ブラウザ三国志』というゲームを,実例として説明することにします。
 『ブラウザ三国志』は,文字通り三国志の世界を舞台にしたシミュレーションゲームであり,ソーシャルゲームの中では結構な歴史と知名度,人気を誇っています。基本プレイは無料ですが,ゲームを有利に進めるためのアイテムや一定の武将カードに課金されるシステムとなっており,その課金システムによって運営会社がかなりの利益を得ているようです。
 このゲームを開始すると,プレイヤーは最初に自分の城(本拠地)と,スターターの武将カード1枚(関羽,夏侯惇,周瑜の中から1人を選択)が与えられます。拠点を開発することで国力を高め,周囲の領地に出兵することで勢力を拡大していきます。出兵したり,内政の効率を高めたりするには武将が必要ですが,ブラウザ三国志の武将は「カード形式」になっています。
 カード形式というのは,ソーシャルゲームに限らず最近のゲームでは大流行になっている形式で,ブラウザ三国志の場合,ゲームで武将を使うには,使いたい武将のカードをデッキにセットする必要があります。各武将カードにはレベルと経験値があり,使い続けることでレベルが上がり強くなっていくほか,各武将カードには3種類まで特技を付けることができます。武将カードに新たな特技を付けたり,あるいは既に持っている武将カードを強化するには,他のカードと「合成」を行う必要があります。
 武将カードは,基本的に「ブショーダス」というガチャを引くことで手に入れることができます。出てくる武将カードはランダムですが,不要な武将カードは合成に使えるので,無駄にはならないわけです。
 そして,各カードには「レアリティ」が設定されており,C(コモン),UC(アンコモン),R(レア),SR(スーパーレア),UR(ウルトラレア)の5段階があります。同じ関羽でも,最初にもらえるUC関羽のほか,R関羽とSR関羽とUR関羽がいたりします。基本的には後者の方になるほど能力値が高くなり,出兵の際にも有利な特殊能力を持っていたりするので,ゲームを有利に進めるためには,より強い武将カードを入手し育てることが必要になります。

 マップの中には雲南,北平,鄴,長安,建業,成都,許昌という7つの城があり,このすべてを制圧することが最終的なゲームの目標となっています。もっとも,これらの城はとてつもなく強大な兵力を擁しており,プレイヤー1人の力ではとても攻略できません。そこで必要になるのが他のプレイヤーとの「同盟」です。
 大半のプレイヤーは数十名程度の「同盟」に加入しており(同盟の人数には制限があります),マップの各地に点在する城や砦などは同盟員が協力して攻略する必要があります。同じマップ内には他の同盟もいるので,もたもたしていると他の同盟が先に攻略してしまうこともあります。また,出兵によって他のプレイヤーの本拠地や領地を攻撃することも可能であり,ゲーム内では複数の同盟を巻き込んだ大規模な戦争が起こることもあります。
 ゲーム内では,同盟掲示板など同盟内のプレイヤー同士が連絡を取るためのシステムが複数用意されており,城などの攻略やプレイヤー同士の戦争に勝つには同盟内の連携が不可欠となっています。プレイヤー同士の戦争ともなれば,当然ながらより強い武将カードを持っている方が有利であり,同盟内でも自分の持っている武将カードを自慢し合ったりすることが多いので,自然に競争心が煽り立てられるわけです。
 そして,武将カードを手に入れるための「ブショーダス」には3つの種類があり,「ブショーダスライト」は無料で引くことができますが,URのカードを手に入れることは出来ず,RやSRのカードも滅多に引けません。レアリティの高い武将カードを手に入れるには,1回300円の「ブショーダスシルバー」や1回600円の「ブショーダスゴールド」を引く必要があるのですが,これを引いたからといって,レアリティの高い武将カードが手に入るとは限りません。最も高価な「ブショーダスゴールド」を引いても,最高ランクであるURの武将カードを引ける確率は1%にも満たないと言われています。
 武将カードの種類については,毎月のように新作が発表されているので何種類と具体的に特定するのが難しいのですが,URだけでも既に数十種類くらいはあるようです。URのカードを手に入れるには,おそらく何十万円もの投資が必要で,しかもお望みのカードが手に入る保障は全くないので,こんな馬鹿な投資をする人はさすがにいないだろうと思いたいのですが,実際にはいるんですね。しかも,URのカードを手に入れた人は当然ながら他のプレイヤーに自慢しまくるので,他のプレイヤーもライバル意識に駆られてURカードの入手に奔走するわけです。
 しかも,URカードは一旦入手すればそれで終わりというわけではありません。URカードに,別の強力な武将カードを何枚も合成すれば,さらに強力な特技を複数身に付けさせることも可能であるため,武将カードを強化できる可能性はほぼ無限大と言っても過言ではありません。
 そして,ブラウザ三国志の世界でおそらく最も有名なプレイヤーは,自ら攻略ブログ(実質的には,自分が持っている強い武将カードの自慢ブログ)を書いている内田博史という人物です。この人のブログを読むと,ここまで育てるのに一体何百万円かけたのかと聞きたくなる武将カードの画像がたくさんアップされているのですが,実際の課金額についても一昨年の段階で「800万円近く課金している」とか書かれていたりして,ブログの記事を読んでいるだけで寒気がします(黒猫自身は,そもそも課金自体あまりやっていないので,こんな人にはとても対抗できませんし,最近は所属している同盟内でも落ちこぼれ組に入っています)。
 このゲームに熱心なプレイヤーは,もはや普段の仕事は「給料をブラ三の課金につぎ込むため」という感覚になっているらしく,このように一部の廃人化したプレイヤーの奮闘により,ブラウザ三国志の運営会社は多額の収益を上げているわけです。
 ブラ三以外にも,ソーシャルゲームで人気を集めているゲームは,似たような方法で一部のヘビーユーザーから多額のお金を巻き上げ,その収益で運営されているわけですが,・・・何というか,キャバクラ嬢やホストの商売と似たようなところがありますね。
 黒猫自身は,最近療養のため実務から離れてしまっていますが,最近弁護士として自己破産事件などをやっている人の中には,依頼者の借金の原因がソーシャルゲームという例も着実に増えているだろうと推測されます。中学生などの未成年者が,課金されることを認識せずにガチャで何十万円も使ってしまい,トラブルになっているケースも少なくありません。

2 「コンプガチャ」の守備範囲
 毎度長い文章になってしまい申し訳ありませんが,上記のようにかなり問題があると思われる『ブラウザ三国志』のゲームシステム内にも,はっきり「コンプガチャ」に該当すると思われるものはありません(一定の武将カードを揃えるとご褒美がもらえるシステムは一応ありますが,その内容は必要な武将カードを集める労力に見合うものではなく,単なるおまけのようなものに過ぎません)。
 一般的にコンプガチャとは,ガチャで入手できる一定のカードやアイテムを揃えることによりご褒美がもらえるものを指すのですが,ブラ三にはうまく説明できる例がないので,別のソーシャルゲーム『100万人の信長の野望』で説明することにします。
 このゲームでは,期間限定イベントとして武将紹介状のガチャが設置されることがあり,過去の例では1回400円で里見八犬士(犬塚信乃,犬川荘助,犬山道節,犬飼現八,犬田小文吾,犬江親兵衛,犬坂毛野,犬村大角)の紹介状を引くことができ,この八犬士を全て揃えると,ご褒美として里見八犬伝のヒロインである伏姫(里見伏)の紹介状がもらえることがありました。
 ただし,このガチャでは同じ武将の紹介状が何回も出ることがあり,伏姫の紹介状を手に入れるためには1万円以上かかることも珍しくなかったようです。
 ・・・これは,黒猫が知っているコンプガチャの最も単純な例です。これでも『100万人の信長の野望』はガチャをあまり使わないゲームで,たまに開催されるガチャのご褒美も大して強い武将ではなく,期間限定ガチャの中にはダブりなし(上記のような例でも,同じ武将の紹介状は出ないので一定回数引けば必ずご褒美がもらえる)というパターンもあり,しかも毎回のガチャで引ける武将がどれも強力なので,ガチャシステムの中では良心的と言われていました。
 もっとも,ガチャとしては良心的であった「100万人の信長の野望」も,他の面ではアコギと言うしかない課金システムを次々と開発しています。
 例えば,このゲームでは期間限定で「討伐戦」というイベントが開催され,合戦をしていると一定確率で現れるボス敵を倒し,そのボス敵を倒した数などによってランキングが発表され,上位入賞者には特別なアイテムがもらえたりするのですが,そのボス敵と戦える回数は12時間以内に10回まで,それ以上戦うには1回あたり200円くらいの特別な課金アイテムが必要と定められています。そして,実際に上位入賞者の成績を見てみると,課金アイテムを数万円単位で使ったとしか思えないようなレベルになっており,運営会社のコーエーテクモがこの討伐戦イベントで大儲けしたことは確実でしょう。
 ちなみに,黒猫自身はプレイしたことがないので分かりませんが,テレビのCMで宣伝されている怪盗ロワイヤルなども似たような課金システムで稼ぎまくっているそうです。
 その100信も,最近はガチャで大儲けしている他のゲームに触発されたのか,武将の紹介状を入手するための課金システムがほとんどガチャに変わりました。黒猫自身は,このゲームにはいいかげん飽きてきたので別にどうでもいいですが。

 ・・・何か取り留めのない話になってしまいましたが,要するに消費者庁がメスを入れた「コンプガチャ」というのは,ソーシャルゲームの数ある課金システムの中では氷山の一角に過ぎないのです。5月中にコンプガチャを全て終了させるといっても,それ以外の課金システムまで禁止されるわけではなく,コンプガチャ以外にも荒稼ぎできる方法は既に様々なものが開発されているわけですから,コンプガチャの中止がソーシャルゲーム業界に与える影響はおそらく限定的なものにとどまると思われます。
 そして,コンプガチャについては,消費者庁は景表法という既存法律の解釈・運用で規制しようとしているようですが,ソーシャルゲームの課金システム全般について適切な法規制をかけようとするならば,ソーシャルゲームの実態を広く調査した上で,その実態に即した新たな法規制の枠組みを検討する必要があるでしょう。

1 コメント

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Unknown (ペールメール)
2012-05-12 09:47:07
アホの大王やな。そのうちだというのは
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