野に撃沈

多摩地区在住の中年日帰り放浪者。ペンタックスK10Dをバッグに野山と路地を彷徨中。現在 野に撃沈2 に引越しました。

18キップの旅ー伊豆沼のマガン

2008-01-18 | 旅行
 <前回からの続き>
 その日は、伊豆沼の畔の旅館に泊まった。翌朝未明6時過ぎ、起きて伊豆沼へ向かう。辺りはまだ暗い。東北本線の踏切を渡ったすぐそばに沼はある。。



 踏み切りの近くの小さな池には白鳥やカモ類が多い。警戒心の強いガン類はこの辺りには近寄ろうとしない。野に生きる生き物達は、その種に応じて人との間合いを計っている。白鳥やカモの仲間はガンに比べその距離がかなり近い。


 今日はこの冬一番の冷え込みとか、鳥たちも氷結したかのように身じろぎもしない。



 池の中央部のまだ凍ってない所にキンクロやホシハジロ、オナガ等の小型カモ類がいた。

 そこに起き出した白鳥が一羽割り込んできてカモ達を追い払った。


 対岸では寒々とした風景が広がっている。


 漁具も凍り付いている。


 空は次第に色づいてきた。マガンは眠ったままだ。


 山の端が明るくなってきた。日の出は何度も見ているのに、いつだって崇高な気持ちに襲われてしまう。自然の壮大なドラマを見ていると少し謙虚な気分になる。


 白鳥のいる小さな池にも日が差し込んできた。 


 やっと2,3羽の白鳥が起きだしてきた。



 そのしぐさは何処となく滑稽で、新しい一日にとまどっているかのようだ。


 沼の反対側は日も差し込まずガンたちは依然眠ったままだ。


 7時少し前、やがて眠りが少しずつ破られてきた。身じろぎを始めるガンが現れ、小さなざわめきが段々と大きなくってくる。飛翔は間もなくだ。


 何がきっかけだったのかだろう。何の前触れもなかった。ただ突然大きな力強い羽音ともに群れが宙に浮き上がった。すさまじい羽音だ。

 眼を閉じて日本の音風景百選の一つ、伊豆沼のマガンの大飛翔の音を堪能した。

 空を旋回しながら隊列を整え、やがてガンたちはそれぞれの餌場へ向かって飛んでいった。

 私も餌場へといったん戻ることにしよう。

宿に戻って朝食を済ませ再び沼にやってきた。




 ハクチョウたちも起き出したようだ。





 これは珍しい。白鳥のそばにいるのは沼に多いマガンではなく、ヒシクイのようだ。


 沼の西側を岸沿いに少し歩いた。


 ガンの飛び去った後の水面は何か空虚だ。


 打ち捨てられた小舟と凍りついたハスの実。生き物の姿は見当たらない。



 水面を覆い尽くすハス、花の咲く季節にも訪れてみたいものだ。対岸の洒落た建物は伊豆沼・内沼サンクチュアリセンターで、沼に飛来する野鳥たちの拠点となっている。

駅から少し遠いのが難点だが、沼の周囲にはこうした施設が4箇所も設けられ、そのうちのウェットランド交流館では安く宿泊も出来る。

 葦原の中に入っていく。



 背の高い枯れた葦の向こうに、一羽だけ嘴を羽の中に突っ込んで眠っている白鳥が見えた。

 寒そうで寂しそうで胸に来るものがあった。




 この後、電車に乗って五浦海岸へ向かった。