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演劇「笑いの大学」を再度観る

2023年08月29日 | 演劇

以前、テレビで放映していた演劇「笑いの大学」(1996年)を観て大変面白いと思った。最近、PARCO劇場で当時と別の俳優で再演されたが、チケットがすぐに売り切れとなり買えなかった。そこで、録画が残っていた96年版のこの演劇を再度観ることにした。

三谷幸喜の傑作二人芝居「笑いの大学」

演 出: 山田和也 
出 演: 西村雅彦(向坂睦男:警視庁保安課検閲係)、近藤芳正(椿 一:劇団「笑いの大学」座付作者) 

この演劇は第4回読売演劇大賞最優秀作品賞を受賞している。

舞台は昭和15年秋、すでに戦争が始まって世の中が暗くなっていってた時代、劇団「笑いの大学」では新しい演目の上演準備を進めていた。この新作の台本を作ったのは劇団の座付作者の椿(近藤芳正)だが、上演前に警視庁に台本原稿を見せて上演許可を得なければならない。警視庁保安課取調室に呼ばれた椿は検閲係の向坂(西村雅彦)から検閲結果を聞くが、その場面から舞台が始まる。舞台はこの二人しか出演しない。

この検閲係とのやりとりが全部で7日間かかる大変な作業になる。その1日ごとに舞台転換がなされる。そして、この暗い時代に少しでも明るい演劇を上演して世の中のムードを明るくしようと思う劇団と、戦時中に「笑い」をとるなどとんでもない、と考える検閲係とのやりとりが延々と続く。ここを直せ、あそこを直せと注文が出て、徹夜で書き直して翌日持って行くと、次にまた、ここを直せと言ってくる。

そんなやりとりがずっと続くのだが、全然飽きない。例えば、当初の原稿はシェークスピアのロメオとジュリエットをもじった喜劇となっていたが、このご時世に西洋ものはダメだとケチを付け、金色夜叉のもじりに書き変える、そうすると今度はキスをするシーンはダメだから直せと言う。これが次から次へと続くのだが内容が面白いので笑える、そして、最後には・・・

今回、見直してみて驚いた、座付台本作者役の椿を演じているのは近藤芳正(1961生まれ)ではないか。初めて見たときは全然知らない役者だったが、今回観て驚いた、あの映画「紙の月」、TVの「おやじ京都呑み」に出ているあの近藤芳正だ。この頃はまだ若いが、今のイメージと変っていない。この演目では近藤の熱演が光った。公演初日が段々と近づく中で、役者の稽古も必要だし、大幅な台本修正は受け入れたくないという切迫感、しかし下手すると公演中止となるリスク、何とかOKを出してもらうべく必死にもがいている様を面白おかしく演じていた。西村雅彦も検閲係のいやらしさと意外な一面を持つ人物像を実にうまく演じていた。

たった二人だけしか出演しない芝居なのに、ここまで観てる者を引き込むのは三谷幸喜の脚本が良いからだろうし、演出、出演者、その他すべての関係者が100%の力を出し切っているからであろう。私が今まで観た演劇の中では一番面白かった。人気があるので、また、再放送してほしい。



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