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歌劇「トゥーランドット」をテレビで鑑賞する

2024年07月29日 | オペラ・バレエ

テレビの録画で歌劇「トゥーランドット」を観た、2023年12月7・8・13日、ウィーン国立歌劇場での公演

作曲:プッチーニ (1858年~1924年、65才没)
台本:ジュゼッペ・アダミ、レナート・シモーニ(イタリア語)
原作:カルロ・ゴッツィの寓話劇『トゥーランドット』
初演:1926年4月、ミラノ・スカラ座、トスカニーニ指揮

出演:

トゥーランドット:アスミク・グリゴリアン(1981、リトアニア)
皇帝:イェルク・シュナイダー
ティムール:ダン・パウル・ドゥミトレスク
カラフ:ヨナス・カウフマン
リュー:クリスティーナ・ムヒタリヤン

大官:アッティラ・モクス
ピン:マルティン・ヘスラー
パン:ノルベルト・エルンスト
ポン:尼子 広志(1992年)

管弦楽:ウィーン国立歌劇場管弦楽団
指揮:マルコ・アルミリアート
演出:クラウス・グート

この作品は普段あまり鑑賞したことがなく、詳しいことは知らなかったので、今回は鑑賞の前にネットである程度の予習をした、その中からいくつか述べたい

  • 作曲はプッチーニであるが、今年は彼の没後100年のアニバーサリー・イヤーである
  • このオペラはプッチーニの最後のオペラだが未完に終わった、彼の死後、第3幕ラストのトゥーランドットとカラフの二重唱からは、プッチーニが残したスケッチを弟子のアルファーノが補筆し完成させた。
  • このオペラの初演を指揮したトスカニーニは、二重唱の前のリューの死の場面が終わると指揮棒を置き、「作曲者はここのところで亡くなりました」と言って演奏を中断し、全曲演奏は翌日に持ち越された
  • トスカニーニとプッチーニは第一次世界大戦時からの政治的対立(プッチーニは親ドイツ、トスカニーニは嫌独派)もあり数年間冷却関係だったが、その後、友好関係を取り戻した、そして、トスカニーニに宛て「この作品をやる時には、完成直前に作曲家は亡くなったのだと伝えて欲しい」という手紙を残していた

  • プッチーニの死後、補作を巡っての混乱があった。まずトスカニーニがザンドナーイの起用を主張したが、プッチーニの版権相続者となった息子トニオはそれに難色を示し、かわりにトニオが推したのがフランコ・アルファーノであった、当時プッチーニの後継第一人者を自他共に任じていたザンドナーイが、プッチーニの意図を離れたオリジナルなものを創作してしまうことへの懸念があったものとみられる。より中庸温厚な性格のアルファーノならプッチーニの構想により敬意を払ってくれるであろうとの期待、また東洋的な題材を扱ったオペラ『サクーンタラ』( 1921年)が成功していたことも理由であった
  • アルファーノは1926年1月に総譜を完成、それはまずトスカニーニの許へと送られた。ところがトスカニーニは「余りにオリジナル過ぎる」と評して、400小節弱の補作中100小節以上をカット。これは、ザンドナーイ起用案が退けられたことへの意趣返しなど様々の意図が込められていた行為とされている。アルファーノはこのカットに対して激怒したが結局は削除を呑まざるを得なかった
  • 今まではこの初演時のカット版が演奏されることがほとんどであったが、今回の公演では完全版による上演となった
  • 初演はイタリアにとっての国家的イベントと見做され、当初はオペラ愛好家でもあるムッソリーニ首相も臨席する予定であったが、当時国家元首の臨席時に演奏されるファシスト党の党歌の演奏をトスカニーニが拒絶したことから、ムッソリーニの出席は取止めとなった、優柔不断なフルトヴェングラーはナチにうまく利用されたが、トスカニーニは常にイエス・ノーをはっきり言える人間だったのだろう

さて、今回の公演は新制作である、演出はクラウス・グート(1964、独)、彼の演出について少し述べたい

  • 彼は、ワーグナーとR・シュトラウスの作品のオペラ制作で特に知られている、また、現代オペラにも力を入れている
  • 番組の説明では、今回の演出は、初演当時のヨーロッパの政治情勢から、舞台から中国趣味を排除し、カフカとジャック・タチ「プレイタイム」をヒントにスタイリッシュな不条理空間を創造した、とある
  • 主役以外の出演者は浅葱色のスーツや眼鏡、ネクタイをするなど現代風の衣装であり、その解釈がわからないところが多かった
  • 例えば、最初にコーラスの1列目(浅葱色スーツとメガネ集団)が登場して座ると舞台が開いてその後ろに同じく浅葱色スーツのメガネ集団がずらりと座っている、最後の場面でもこの眼鏡集団がずらりと並ぶが、その意味が分からなかった(これは民衆を表しているのかもしれないが)、また、この集団が座っている真ん中に時計があり、針が動いている、その意味も分からなかった

さて、出演者であるが

  • 通常、主役はタイトル・ロールを務める歌手であろうが、今回はトゥーランドット姫のグリゴリアンではなく、カラフ役のヨナス・カウフマンであった、そのイケメンぶりと歌唱力が素晴らしく、他の出演者を圧倒していた
  • タイトル・ロールのグリゴリアンだが、昨年テレビ鑑賞した2023年ザルツブルク音楽祭「マクベス」でマクベス夫人を務めていたあのグリゴリアンだ(その時のブログはこちら)、なかなか美人で歌唱力もあると思ったが、今回も美しい容姿、風貌で、歌唱力もあるところを見せつけてくれた、今回はカツラをかぶっていたのでマクベス夫人の時とはイメージが違っていたので彼女の別の面を観た思いがした、前回よりも若く感じた
  • このオペラに詳しくないので、トゥーランドットがどういう性格の女性なのか分からない、よって、グリゴリアンがトゥーランドットの役柄に合っていたのか判断できないが、見たところ、オペラの中ではトゥーランドットはかなり暗い過去のある女として描かれていたので、グリゴリアンの印象はそれにピッタリであった

  • ピン・ポン・パンのポンは日本人の尼子広志が勤めていて結構出番が多かった。尼子氏は1992年に日本人の父親と、英国人(ウェールズ)の母親の間に生まれ、英国で育った日系英国人テノール歌手、英国のloyal college of musicで学び2018-19シーズンからハンブルク歌劇場のメンバーとなり、現在はウィーン国立歌劇場のメンバーとなっている人だ
  • オペラの中で重要な役割が与えられているリューのクリスティーナ・ムヒタリヤン(Kristina Mkhitaryan、ロシア、ソプラノ)も良い演技をしていたと思うし、歌唱力もあると思った、彼女はタイトル・ロールが務まると思った

楽しめました

 

 



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