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「空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン」展を観に行く

2024年08月04日 | 美術

東京ステーションギャラリーで開催中の「空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン」展を観に行った、主催は東京ステーションギャラリー、東京新聞、フォロン財団(ベルギー)、入場料は1,500円、平日の午前中に行ったが、それなりに混んでいた、幅広い年齢層の方が来ていた

このステーションギャラリーは、1988年、東京駅丸の内駅舎内に完成、その後、東京駅の保存・復原工事に伴い2006年に一時休館したが2012年秋にリニューアル・オープン。重要文化財の駅舎内に美術館があることを意識し、バラエティに富んだ企画展を年5本ほど開催しているという

美術館内を見て回ると、展示室内や階段に重要文化財の旧駅舎のレンガがむき出しになっているところがある。

ジャン=ミッシェル・フォロン(1934-2005、71才没)は、20世紀後半のベルギーを代表するアーティストのひとり、若いころ絵画世界に惹きつけられ、1955年パリ近郊に移住し、ひたすらドローイングを描く日々を送り、やがてアメリカの『ザ・ニューヨーカー』や『タイム』などの有力誌で注目され、1960年代初頭にはそれらの表紙を飾るようになる。

その後、各国で高く評価され、世界中の美術館で個展が開催されるなど目覚ましい活躍をみせ、来日したこともある。日本では30年ぶりの大回顧展、展覧会タイトルにある「空想旅行案内人」とは、フォロンが実際に使っていた肩書き空想旅行エージェンシーからとったもの

フォロンは全く知らない画家だった、展覧会のホームページを見て彼の絵の色彩感覚のすばらしさに感動して観に行ってみたくなった。


(真ん中の絵が作品254「月世界旅行」、両端が作258「見知らぬ人」を使った展覧会ポスター)

展示は以下の5つのストーリーで展開されている

プロローグ 旅のはじまり
第1章 あっち・こっち・どっち?
第2章 なにが聴こえる?
第3章 なにを話そう?
エピローグ つぎはどこへ行こう?

それぞれの展示を観てで感じたことを書いてみたい

プロローグ 旅のはじまり

  • 無題という作品名で作品番号47から57までに、マスに二つの目と、口があるだけの人間の顔リトル・ハット・マンの絵が印象的であった
  • このリトル・ハット・マンはフォロン作品において重要な位置をしめるモチーフのひとつ

第1章 あっち・こっち・どっち?

  • 作品124「群衆」が印象に残った、ビル群の上に太陽が輝いている(写真が撮れないので詳しいことは思い出せない)
  • このセクションではフォロンの代表的なモチーフのひとつ「矢印」をテーマにした作品も多く展示されていた、「群衆」もそのうちの一つ

第2章 なにが聴こえる?

  • このあたりの作品からフォロンの人類共通の問題に対する抗議が作品の中に現れてくる、例えば作品138「たくさんの森」はスリーマイル島の原爆ドームと思えるものがずらりと並んだ絵、作品150「深い深い問題」は海の中に泳いでいるのはミサイル、地上には虹が描かれている
  • 作品149「波」はあの葛飾北斎「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」とほとんど同じ構図の絵になっているのに驚いた

第3章 なにを話そう?

  • ここでは、見る人が絵と対話することを望んでいたフォロンが、人々に世界の「いま」を語りかける手段として、企業などの依頼で手がけたポスターや、書籍の挿絵などを展示してあったが、どれも素晴らしいものだった
  • その中で1948年の世界人権宣言のための挿絵原画が一番のスペースを取って展示してあった、それ以外でも、作品208は「死刑反対」、作品214「欧州は人種差別に反対する」とか、作品218「グリーンピース深い深い問題」など、今のリベラル全盛時代を先取りしたような主題の作品が目立った
  • 本展覧会の説明には「色彩豊かで詩情あふれるその作品は一見すると美しく爽やかにさえ感じられますが、そこには環境破壊や人権問題など厳しい現実への告発が隠れていると同時に、孤独や不安の感情が通奏低音のように流れています」とある、第2章の作品と合わせて、まさにそんな作品だった

エピローグ つぎはどこへ行こう?

  • ここまで社会の問題点などを絵で訴えてきたが、ここでは鳥になってそれを乗り越えて、地平線、山並みを超えて高く飛び立ちたいという明るい未来への願望のような絵が展示されていた
  • 作品254の「月世界旅行」はこの展覧会の宣伝ポスターに使われている絵、257「自画像」は何か変なポーズ、258「見知らぬ人」、287「大天使」、291「今日」などが良かった


(作品287「大天使」を使った展覧会ポスター)

すべての作品で共通するのは、人間の表情の単純化、色彩感覚の豊かさであった、シンプルな構図であるが色彩豊かで、何か比喩的に訴えるものを持っている画家と感じた。

さて、最後にこの展覧会の運営面について述べたい

  • 展示室内は写真撮影禁止であったのは残念だ、前回佐伯祐三展で来た時も禁止だった、佐伯祐三展に出ていた作品と同じ作品が他の美術館に出品しているときは撮影OKであった、もっと交渉できないものだろうか
  • 作品の脇に表示されている作品説明の小さい白いボードの文字が小さすぎて非常に見づらかった、作品の特定のために作品リストとボードの照合が必須なのに文字が小さくでは不便で仕方なかった

勉強になった展覧会でした

 

 



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