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気ままに生活してるシニアの残日録

映画「他人の顔」を観る(2024/4/17追記)

2024年04月17日 | 映画

(2023/5/1の当初投稿の閲覧がたまにあるので、この映画の主題歌のYouTube動画を埋め込みました)

YouTubeで観られる映画「他人の顔」(1966年、勅使河原宏監督)を観た。この映画はAmazonにもNetflixにもなかった。白黒映画。

安部公房の同名の小説の映画化だ。安部の作品は「砂の女」を読んだことがあるが、映画化されたのでそれも観た。今回は原作は読んでいないが映画の方をYouTubeで偶然見つけたので早速観た。

物語は、会社の実験で不用意な対応で顔面にケロイド状の火傷痕が残り、顔全部を包帯で覆わなければいけなくなった中年男性(仲代達矢)が主人公。妻(京マチ子)に抱きついても拒絶され孤独感に苛まれる。あるとき精神科医で外科医でもある医者(平幹二朗)に他人の顔を盗んで特殊な皮膚で作ったマスクで顔を再生する治療を提案され、別人に生まれ変わる。マスクをつけて他人になりすまし拒絶した妻を誘惑して復讐を果たそうとするが・・・・というストーリー。

「顔のない人間が自由になれるのは闇が世界を支配したときだけだ、だから深海魚はグロテスクな顔になれた」といって「いまから実験をやるから電気を消せ」と妻にいう。そして「顔は心の扉で、顔が閉ざされると一緒に心も閉ざされてしまう、もはや訪れる客もない、心は顔の後ろで朽ちるにまかせ、やがて廃墟になるのを待つだけだ・・・、ぼくは生きながら埋葬されてしまったのか」という言葉を吐くと妻は「扉を勝手に閉めたのはあなたではないの、出てきたって誰もとがめやしないわよ」と言うと、暗闇の部屋の中で突然妻に抱きつく(これが実験か)が拒絶される。実験は失敗で、包帯顔の自分を拒否する妻に対する復讐心が芽生える。

その後、医者に作ってもらった他人の仮面をして妻を誘惑し、情事を済ませた後、突然妻に「恥も外聞もない色きちがいめ」と責める、妻は「私が気づいていないとでも思っていたの」と言うと夫は愕然として「気づいていたのか」と言う、「当然じゃあないの、だって仮面をかぶって何重にもカードして私を誘惑したのは繊細な心遣いだと思ったわ、だから私も素顔の上に何枚張りもの顔を作っていたじゃないの、それなのにあなたは私を非難して、私はあなたを買いかぶっていたわ」と言い返す。その後の会話も妻の鋭い指摘に夫はオロオロするだけだ。

この物語は、結末には救いが無い。それだけに問いかけるものも深い。自分がその立場になったらどうするだろうか考えさせられる。このような悩みを持っている人は意外と多いのかもしれない。京マチ子の妖艶さがなんとも言えず素晴らしいし、この時代(昭和41年)にもかかわらず肌の露出度合いが大胆なのにも驚いた。

ところで、この映画の音楽は武満徹が作曲したものだ。なんとも憂いのある旋律が映画のイメージにピッタリの音楽だ。武満は映画の中にも酒場の客として出てくる。

 



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