ゆっくり行きましょう

気ままに生活してるシニアの残日録

「團菊祭 五月大歌舞伎 土蜘蛛」を観る

2023年03月21日 | 歌舞伎

先日、紀尾井ホールで「河竹黙阿弥の世界」の公演を観たのを機に、過去の歌舞伎座公演のテレビ録画の中で黙阿弥作品を探したところ、2021年5月の團菊祭での土蜘蛛があったので見直した。河竹黙阿弥は江戸から明治にかけて活躍した歌舞伎作者で生涯360もの作品を残した、江戸と明治という全く違った時代を生きた。

土蜘蛛は音羽屋の新古演劇十種の第1番目の作品、五代目菊五郎が1881年(明治14年)に初演した、六代目菊五郎、二代目松緑、当代菊五郎に受け継がれ、今は、当代松緑が演じている。

「新古典劇十種」とは明治以降に書かれた作品の中から主に能狂言をモチーフにし、古典的味わいのある格調高いものを10個選んだもの。江戸末期から明治にかけての名優だった五代目尾上菊五郎が「尾上家の家の芸」として制定したもので格調高い「松羽目もの」だ。そのほかには先日紀尾井ホールで見た「茨木」や「身代わり座禅」などがある。

あらすじは、平安時代が舞台、源頼光(らいこう)は病で療養中、そこに比叡山の僧「智疇(ちちゅう)」が祈祷をすると言って訪ねてくる、そのしぐさの怪しいのを太刀持ちの音和が気づき、頼光が常にそばに持っている「膝丸(ひざまる)」という名刀で斬り付けたため、蜘蛛は逃げていく。頼光の命令で家臣の平井保昌と四天王が土蜘蛛退治に行き、大立ち回りの末、撃退し、めでたしめでたしとなり幕となる。

土蜘蛛の松緑は実に役柄に合っていた、ぎょろっとした眼、大きな口など土蜘蛛のイメージそのもの、寺嶋眞秀の太刀持ちもよく間違えずにせりふが言えて立派だった。後半の大立ち回りは衣装が華やかで見ていて楽しかった。前半でもあったが土蜘蛛が次々と繰り出す「千筋(ちすじ)の糸」が印象的だ、これは能楽でも秘伝だそうだが一回の失敗もなくやってのけたのは立派だった。もう菊五郎は土蜘蛛はやらないのかな。

1時間半くらいの劇だがさすが黙阿弥、退屈せずに楽しめた。

出演
叡山の僧智籌じつは土蜘の精 尾上松緑
平井保昌          坂東亀蔵(楽善の息子)
渡辺綱(四天王)      中村福之助(芝翫の息子)
坂田公時(同上)      中村鷹之資(富十郎の息子)
碓井貞光(同上)      尾上左近
卜部季武(同上)      市川弘太郎
太刀持音和         寺嶋眞秀
侍女胡蝶          坂東新悟(彌十郎の息子)
源頼光           市川猿之助

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿