テレビで放送されていたオペラを録画して観劇した、今回はミラノ・スカラ座の昨年12月の公演
演 目:歌劇「運命の力」(プレミエ)
作 曲:ジュゼッペ・ヴェルディ
演 出:レオ・ムスカート
初演は1862年、サンクトペテルブルク、ロシア帝室歌劇場(後のマリインスキー劇場)、改訂版は1869年、ミラノ、スカラ座
出 演:
レオノーラ/アンナ・ネトレプコ
ドン・アルヴァーロ/ブライアン・ジェイド
ドン・カルロ/ルドヴィク・テジエ(Ludovic Tézier、1968、仏、バリトン)
メリトーネ(修道院僧)/マルコ・フィリッポ・ロマーノ(Marco Filippo Romano、バリトン、伊)
プレチオシッラ/ヴァリシーサ・ベルジャンスカヤ(1993、露、Vasilisa Berzhanskaya、メゾソプラノ)
修道院長/アレクサンドル・ヴィノグラードフ(露、バス)
カラトラーヴァ侯爵/ファブリツィオ・ベッジ
合 唱:ミラノ・スカラ座合唱団
管弦楽:ミラノ・スカラ座管弦楽団
指 揮:リッカルド・シャイー(1953、伊)
収録:2024年12月7日 ミラノ・スカラ座(シーズン初日)
+++++
テレビの宣伝文句は「オペラの殿堂、ミラノ・スカラ座の2024/25シーズンの開幕公演の模様を国際共同制作で収録・放送したもの、演目はヴェルディ中期の傑作「運命の力」、美しい旋律で有名な序曲から始まり、過酷な運命に翻弄される主人公たちのドラマが名旋律と共に繰り広げられる、スカラ座の音楽監督 リッカルド・シャイーの指揮、レオ・ムスカートの演出のもと、アンナ・ネトレプコ、ルドヴィク・テジエほか超豪華キャストが勢ぞろいした、世界のオペラ・ファン注目の公演」
このオペラは、ヴェルディ後期の作品へとつながる重要なオペラ、その頃ヴェルディはしばらくオペラの作曲から遠ざかっていたが、『イル・トロヴァトーレ』の成功に沸いていたサンクトペテルブルクのロシア帝室歌劇場から依頼がきて作曲したのがこのオペラ
主役が全員死亡するというようなあまりに陰鬱な終わり方のため6年後にミラノで上演されるときに、ヴェルディ自らの手で改訂を施した、この日の演奏は改訂版
+++++
観劇した感想を述べよう
(指揮、管弦楽について)
- スカラ座芸術監督のシャイーによる演奏は特に問題点はないと思った、ヴェルディらしい演奏を随所に聞かせてくれた、シャイーの姿が何回も映ったが、満足げな表情をしていたのが印象的だった
(演出について)
- 奇をてらったところがないオーソドックスな演出だと思った、特に第3幕第3場はよかった
(歌手について)
- 主役は何といってもネトレプコでしょう、もう「姉御」と呼ぶにふさわしい感じになったが、今回はかつらをかぶったりしてどうにかかわいらしい女になって持ち前の歌唱力を存分に発揮していたと思った
- アルヴァーロ役のブライアン・ジェイドは初めて観た歌手だが、なかなかうまいと思った、声量、歌唱力もあると思った、このアルヴァーロ役は当初ヨナス・カウフマンとなっていたがキャンセルしたため代役で出演したもの、カウフマンンとネトレプコの黄金コンピを期待して高いチケット代を払った人たちはカウフマンを「許せん!」と思ったのではないか
- このオペラで目を見張ったのは主人公のネトレプコとジェイドではなく、実は、脇役とでもいうべき歌手たちだった
- まずはドン・カルロ役のルドヴィク・テジエだ、けっこう出番が多く、その存在感を存分に出していた、彼は2018年ザルツブルク音楽祭でのティーレマン指揮の「トスカ」でスカルピア役をやったあの彼だ、ドスの利いた声でアルヴァーロとのやり取りなど迫力が十分出ていた、昔はやせていてかっこよかったのかも知れないが、今は腹も出てきて悪役がぴったりとはまる歌手になってきたのではないか
- 次に、ジプシー女プレチオシッラ役のヴァリシーサ・ベルジャンスカヤだ、彼女もこのオペラでは大活躍をする、特徴ある髪(かつら?)と目立つコスチュームで現れ、2幕1場で食堂にいる大勢のイタリア人にドイツとの戦争を勧め一攫千金を煽る、そして、カルロが学生と偽って兵営の中で身の上話をするが学生でないことを見破り、第3幕3場では野営地の休息日に兵士への手紙を持って現れ、歌を歌いながら「恋人が浮気をしていないかわかる」と言っては兵士に酒を勧めて騒ぐ、最後の「ラタプラン タタタン・・・」の歌も面白く、このシーンにぴったりとはまっていると思った、彼女の写真をウェブで見るとけっこう美人であり既にかなりの実績があるので今後もどんどん活躍するのではないか
- さらに、修道僧メリトーネ役のマルコ・フィリッポ・ロマーノだ、彼も出番が多かった、ベルジャンスカヤが3幕3場で兵士に酒を勧めて歌を歌って大騒ぎしたところで出てきて、「キリスト教徒が休息日に酒を飲んで騒ぐとはなんたることだ」と兵たちを叱り、「すべてがめちゃめちゃだ」と言い、嘆きのアリアを歌う、そのちょっと小太りでおどけた感じが修道僧らしくもなく、愛嬌がある人物に見えるがはやりキリスト教徒の僧だということをキチンと示すところなどその演技と歌がうまいと思った
- 修道院長のアレクサンドル・ヴィノグラードフもけっこう目立った、修道院長らしい雰囲気で低音のバスを聴かせてくれてよかった
良いオペラだった
+++++
あらすじ(参考)
【第1幕】
(セビリア・カラトラーヴァ伯爵の邸内)
時は18世紀中頃、セヴィリャのカラトラーヴァ侯爵の娘レオノーラはインカの血を引く恋人アルヴァーロと駆け落ちをしようとしたが父に見つかる、アルヴァーロは持っていたピストルを床に投げ出すと、その衝撃で弾が暴発して侯爵に当たって息絶えたため二人は動揺して逃走する
【第2幕】
(1場:オルナチウェロス村宿屋の食堂)
1年半後、アルヴァーロとはぐれたレオノーラは男装し彼のゆくえを追っている、彼女は偶然兄のドン・カルロと居合わせる、彼は学生を装い父の仇である自分とアルヴァーロを追っていた、食堂にいた多くのイタリア人の旅人にカルロは彼の身の上を話すが、プレチオシッラはイタリア人にドイツとの戦争による一攫千金を煽り、カルロが学生でないことを見破り「だまされない」と言う
(2場:オルナチウェロス村郊外、天使の聖母修道院)
アルヴァーロがアメリカに渡ったという兄の嘘を真に受けたレオノーラは、アルヴァーロが自分を捨てて逃げたと思い修道院に救いを求め、崖下の洞穴に入ることが許される
【第3幕】
(1場:ヴェッレトリ付近の野戦場)
イタリアのオーストリア継承戦争の戦場、アルヴァーロは偽名を使って士官となり武名を挙げている、カルロも偽名を使い士官となって戦場に到着した直後に襲われ、アルヴァーロに助けられ二人はお互い正体を知らずに友情を誓う
(2場:ヴェッレトリ付近の兵舎)
アルヴァーロは戦場で重傷を負い、カルロに「自分が死んだらこれを焼き捨ててほしい」と手紙を渡すが、カルロがその手紙と一緒にポケットにあった紙を開けるとレオノーラの肖像画、親友と思っていた彼が捜していた敵だった
(3場:ヴェッレトリ付近の野営地)
二人は対面し、カルロは決闘を申し入れるが、アルヴァーロは侯爵の命を奪ったのは運命であり、レオノーラを誘惑したのも運命なのだと言う、カルロは自分の血を裏切った妹を殺すといい決闘しそうになるが兵士たちに止められアルヴァーロは修道院に隠れる
【第4幕】
(1場:天使の聖母修道院)
5年後の修道院、施しが始まり人々が集まってくる、アルヴァーロは同じ修道院の洞穴にレオノーラがいるのを知らない、居場所を突き止めたカルロが修道院に現れ決闘に
(2場:天使の聖母修道院にあるレオノーラの洞穴)
勝利したのはアルヴァーロ、アルヴァーロは洞窟に入るとそこにいたのはレオノーラ、しかし、二人が再会を喜んだのも束の間、最後の力を振り絞ったカルロがレオノーラを剣で刺しレオノーラは神父に見守られながら静かに息を引き取る