三浦俊彦@goo@anthropicworld

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オトイアワセ:
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サイコパス系6

2012-10-25 01:49:00 | モンスター映画
■シンドラーのリスト■ さすがだな、スピルバーグって! じっくりこんなもん作ってくれてたりするから油断できんのだなあもぅ! シンドラーのおっつぁんてば、決して人相よくない我利我利亡者っぷりなのに隠しようのないあの善良さ、泣かせてくれますよ。いやほんと、下手に偽悪的というか、「ユダヤ人労働力は安上がりなんだ! もってかれちゃ迷惑千万!」人道主義なんかじゃなくて利益追求を盾に収容所当局とガンガンやり合うわけだけど、ポロリ「一人でも多くのユダヤ人を助けてえ!」って本音がバレかけたりして、いやあ、こういうキャラクター、たまんないですな。はじめっから優しい人柄だったのか、収容所の惨状を見てだんだん目覚めていったのかが曖昧なところがまたいい。人間もともと曖昧だし。名のない端役の女の子の赤がモノクロの中でくっきり目立ってた表現技巧は鳥肌ものですわ。結局しっかり死んでたし。これは文句なく映画史に残る傑作ですよ。芸術です。あそうだ、観てる最中は実はチョイ白けてる部分もあって、オイオイいくらナチス収容所でもあれはないだろう、ってわけだったんだが、後で調べてみたらあそこの収容所長、ほんとに気まぐれに収容者を撃ち殺してたらしいね。事実はフィクションより奇なりってか。事実どおりに描けば疑われちゃう表現者のジレンマなんかもしみじみ感じちゃうよね、ホロコーストなんてトンデモ現象を相手取るとさ。ま、収容所長がああくるんじゃ、これ、サイコパス系ですよ。しかし正直、泣けた。ラストのベタな自責の念全開シーン、いやぁシンドラーの公式キャラクターが決して慈善家でもなんでもないだけに、泣けましたってばよ悔しいけどあのシーンわぁ!
■ファイト・クラブ■ これはぶっ飛んでた。びっくりだ。ファイトそのものは迫力無さげだったとはいえ、終わってみれば一人であんだけとびまわってたなんて。支部がどんどん作られてたなんて。前半と後半がジャンルが違っちゃってるのも凄い。ポカーン、だね。地下組織前史っぽくじわじわ来てた前半とあれよあれよの後半のズレまくりっぷりったら。観客の呆れ度は主人公自身の呆然度に決して劣らないね。いいよ、これ。ファイトのエスカレートぶりをもっとじっくり見たかったけど、ストーリー展開の方が重要だものな、こうなると。
■ミザリー■ 笑えた。いや、くすぐられなくても笑いがこみ上げてきた。あの種の腐女子のツボにはまっちゃった作家さん、もうちょい創造的な対処はできんかったもんかなあ。って無理だよね。ふつーのサイコものと違って虐待や暴行そのものが目的じゃないだけにこのピュアさが逆に恐ろしい。受け狙いのない執着が可笑しくて恐ろしい。脚力を失った作家さんと太め腐女子の肉弾戦がちょうど互角、いい勝負でこれまた笑えた。しっかし足砕きハンマースイングはプロやったなあ。看護婦さんってああいう人体破壊テクも自然と覚えるもんなのかな? いや、観てる最中は笑う気なかったけど、なんかコワ可笑しいんですわ。リアルSMっぽいからかなあ。太めだけどおばちゃんけっこう美形だし、ああいうシチュエーションかなりうらやましいかも。
■ドライヴ■ 寡黙な主人公、って設定はわかんだけど、うん、この肝の据わり方確かにカッチョいいけど、あんだけ人目に付くとこでドンパチドカンドカンやらかして、あと全然見とがめられずにハイ次のステップ、ってのはさすがに違和感積もり積もってゆくわけよ。普通もう市民生活無理でしょ。それと話進むにしたがい普通のアクション映画になっちゃってったのがちょっと。せっかくなんで主人公の特技はドライブ技術だけって限定しといた方がよくはなかったかな。いや逆か。敵方の方がおおざっぱすぎるのか。どうにも後先考えない犯罪者たちというか。ラストなんか、主人公も敵ボスも警戒感なさすぎじゃんか。もろ斬り合い刺し合いかよ。寡黙なヒーローでやるなら、もうチョイ繊細さがほしかったよねえ。って観てる間はすげー興奮できて私ゃ満足でしたけどね。頭蓋骨バンバン踏み潰しがあるかと思いきやチマチマした腕切り失血殺なんてのがあったり、アンバランスさが却って爽快にエンタメ的でね。
■ヒストリー・オブ・バイオレンス■ こりゃまた強えーわ主人公。『ドライヴ』のにーさんも到底かなわないなこりゃ。しかし話作りのためだけに登場ご苦労さんの初っ端の二人組、いくらなんでもアバウトすぎるでしょ。コーヒー注文すんのに最初っから喧嘩腰つうか、いい年こいたあんなチンケ強盗相手にしたばかりに正体バレちゃったんじゃ、あんさんのせっかくの第二の人生も泣くに泣けないね。しかし『ドライヴ』といいこれといい、どうしてまたバトルのどれもこれもが大味かな。庭先で息子を解放させたあとの殺し合いなんか、おまえら本当に生き残る気あってやってんのかと。兄さんとの再会から対決のあっけなさが却ってあっぱれだったというか。旦那の本性見せられた後の奥さんの反応もちょっとな。基本正当防衛なんだし、昔のことどうのこうのより今を協力しての乗り切らにゃいかんのに。でも奥さんの反応がああじゃなきゃ、旦那のカックい~孤独な戦いも台無しだし、ほら、幼い娘のけなげな……みたいなあのラストの効果が出んってか。まあわかるけど……。
■エスター■ こういう怖さってちょっとこれ、他にないっすよね。設定の無理をはねのけてるもんね。そ、実質怖きゃすべて許されるんだよね、このジャンルは。誘惑されたときのとっつぁんの反応があまりに類型的だったのがあれだけど、うん、いかんともしがたい病気ってことだし、なんとも不気味な設定でしたじゃ。
■ファニーゲーム■ うひゃあ、なんとも苛々させられる映画やな。これほど不快感を掻き立てる映画も珍しいぞ。なんでこんな不愉快にさせられるために時間使わなきゃならんのか。ってなんで嬉しいんだ? そ、不快不快って、ほめてるんだが。ホラーでもないナンセンスでもない、エログロを一切使わずに人をこれほどいやな気持ちにさせられるとはなあ。キッチンでぐちゃぐちゃやって奥さんを徐々に怒らせるあたり、こっちもまるっきり奥さんに連動しまくってるもんなあ。なんつっても3人が3人とも殺される時のあっけなさがいい。最後の奥さんなんか、水没を見てもらえさえしねーでやんの。ボート操縦するついでに片手でぽいっ。なんともやるせないね。途中でいっぺん子ども逃がしてるし、奥さん連れ戻せたのもあんなのたまたまだし、計画犯罪らしからぬいい加減さがすげえ。メイン二人のモチベーションがルサンチマン丸出しじゃない淡々さでそれがまた。連鎖的にどこまでも続く不条理って、ありがちだけどこれ、なんともつくづくいい加減な行き当たりばったりの悪辣ぶりがすごいよ。
■ファニーゲームU.S.A.■ 前作とほぼ同じ展開を再現。二人の悪役が前回とは全然違うタイプなのに同レベルの不快さをまき散らしてくれるのがすげえ。徹底してるよ、巻き戻しシーンまでが同じって。物語の中で起きてることだけじゃなくて、作品としての作りまで、「どうだ、観客の思い通りにゃいかせないぞ」的意地悪の首尾一貫ぶり。子役も前作同様影が薄くて、うん、いいんじゃないかな、何もかも、周到な計画もナシに二人の思い通り。世の中、こんなもんかもな、って投げやりな気持ちにさせてくれる傑作。二作続けて観たら鬱の人は悪化して逆に晴れ晴れして治っちゃうかもな。
■スマイルコレクター■ なんかこの種のヒロインものってちょっとなあ。とくに謎解き的な展開があるわけでなし、途中からチョイチョイ挿入される幼児体験的シーンがヒロインにあてはまるらしいって、だから何なの?
■トライアングル■ またこれですか。やれやれ、あんだけの不思議現象起こされちゃうと、そりゃあ夢か走馬燈しかないわけでね。でもまあ、途中までそれわからんかったので構成がよかったことは認めにゃいかん。あんな光景目撃したってことは普通、タイムスリップものかな?とか。あの超不気味な嵐が時空の裂け目だったかな?とか。それにしちゃ雰囲気はSFじゃないよなあ?とか。前半のこのジャンル的違和感、えれー成功してます。ひっぱられました。後半はヒロインの無茶苦茶な行動になんだこりゃ感噴出だが、「ははぁん、あれ系のオチか……」で許せるような許せないような。でこれ、サイコパス系にしちゃったけど、チョイ違うよね。レザーフェイスしっかり演じてたし、むしろ幼児虐待なんてサイコパスはやらないんじゃないかなと。むしろ境界性人格障害っぽいかな。まあ律儀なジャンル分けが面倒になってきたこともあり(系別にやってると、ある程度数溜まるまでアップできないんでそうこうしてるうちに印象深い映画でも忘れちゃってたりするんよ)、ま、こういう奇怪な映画は早いとこアップしときましょってことで。しかし観終わってみるとむなしい映画だよな。事故の瞬間まで経験してもさらに同じ流れをぐるぐる続けるって死後体験っぽい構造が新しいっちゃ新しいのかもしれないけど。しっかしかあちゃんさぁ、死に臨んで観た走馬燈がこれですかい! あんたやっぱサイコーのサイコーだわ!
■ムカデ人間■ マヂキチですな、あのお医者。いや、普通の意味のマヂキチじゃなくて。つまりマッドサイエンティスにもなってやしないマヂキチぶり。だって科学的に全然意味ないじゃん、粘膜ひっつけただけじゃ。あんなんで嬉々としていかにも画期的っぽい医学的解説ぶちあげてるマヂキチぶり。先頭の被験者の脳に従って後続の全員の脳が働くように神経つなげ直すとか、そんなだったらほんとの画期的ムカデ人間だけど、あれじゃあただ表面つないだだけ、脳も別々、あんなんで何が楽しいんだか。ハイテクなんて一つも使ってない、あの大まじめのショボさはほんとのマヂキチですよ。やれやれ……。ところで冒頭、「あれ?」てくらいの妙な映像美、野グソ中の男を麻酔銃で撃って拉致する、って変態ぶりが端正な映像と融和して、まあ内容のショボサが最後まで気になりませんでした。で、なんなのラストは。関西弁男、喉かきむしっただけで出血して死んじゃったけど。先頭だから処置されたの尻だけじゃなかったっけか? 喉に何されてたんかな? あと真ん中のおねーちゃんが便秘というのが笑えた。自分は食わされても後ろのお友達には絶対食わせまいとがんばったのね。で、あのラストだと死体に前後挟まれて腐敗臭の中で死んでいく、って過酷な運命が真ん中のおねーちゃんを待ってるっぽいわけだけど、残念ながらそういう余韻は希薄だな。だって声聞いてたご近所がいるらしいじゃん。それに警官が二人戻ってこないんだからすぐ警察が来るじゃん。もっと人里離れてのあのラストだったら、いい余韻だったんだけどなあ。
■血を吸うカメラ■ 「私を撮って」「いけない! 君は撮らない!」って、大げさな演技が連発される。1960年か、あのころ映画俳優ってこんな感じだったんだな。なにはともあれ死体の恐怖の形相がすごいらしいから、一瞬でいいから見せてほしかったんだが。二回ばかしアップになる犠牲者の断末魔はそんなにひどい形相じゃなかったんで。撮影所で同僚の女優殺すとこがクライマックスだろうな。後半、盲目のおかんとの対決がそれ以上のクライマックスになるかと期待したけど、案外あっさりで過ぎちゃったな。暗室だから目あきが不利になってどうのこうの、ってなるんかと思った。
■ヒッチャー■ 何か、ウワサほど面白うなかったんよ。何かハチャメチャでさ。もっとシリアスな『激突』みたいのん期待してたんで。なんか犯人が強すぎ。大怪我してるはずの状況でピンピンしてやがるし。どうせ最後にゃ同じパターンで死ぬに決まってるのにねえ。途中まで不死身じゃなきゃ映画になんないよ、ってこうもあからさまにやられちゃあさ……。
■ザ・セルラー■ サイコパス系でいいのかな? わかんなかったんですよ、お話の趣旨が。というか種類が。最初はオッ、怖いかな、さすがスウェーデン映画、ディテールが見慣れない感触でいーぞいーぞ……、と思ってたのだが、だんだんダラケてきて、というか焦点ぼけてきて。いや、最初っから気になる疵はあったんだよ、たとえばBGMがなんや断続的な電子音みたいな感じなんで、いや、アンビエントとしては高評価つけるよ、だけど劇中の音と紛らわしいのよ。とくに「誰かいるっぽい……」って微妙な恐怖で引っ張ってこうとしてる前半は、ああいう不連続音のBGMは不適当なんよ。BGMは抜きで演出するか、せめて連続的な音楽にして劇中の音特別せいや。ほんと考えて作ってくれよもぅ。あと後半だよな。芸術青年が集まって絵やら小説やら彫刻やらやってるって設定なんだから、作品が関わってくるのかと思ったら、絵がちょびっと絡むだけ。しかも捜査官目線に変わってからは焦点が無きに等しくなっちゃって、だいたい写真をああいう見方で、つまり十年も前の写真と背景合わせるって見方で場所突き止めるなんざ、はじめっからオカルト疑ってるよね。どうもスタンスわからんのだわあの捜査官。偶然転がってた現地調達の探照灯を信じきってあんな奥まで行くってのが信じがたい無防備さだし、ま、いずれにしても捜査官パートがあんな中途半端な長さでぶら下がってるんじゃ、せっかくの閉鎖空間ホラー(まあもともと閉鎖空間じゃなかったけど、地下室に限ればちょっとはね)ムードが崩壊じゃないか。「決定的な何かが起きたわけじゃないけどブキミ、逃げよう……」って中盤がなかなかのモノだっただけに、ことさらに意味わからなくした終盤が惜しかったな。意味わからなくするのは時として歓迎だけど、焦点がぼやかされたのは痛かったよな。スウェーデン語だから字幕出して観たのだがそれが裏目に出たな。字幕なしで観てたらシュールな芸術映画っぽく映ったかも。なまじ会話がわかったせいでピンぼけになって、いいムードで始まりながらただの駄作に終わっちゃった。あ、だけど地下室で扉の上に大量の血痕(というか流血跡)、てシーン。あそこだけはホラーとして絶品。あそこ褒めとくのを忘れちゃいかんよな、うん。
■×ゲーム■ なんとも異様なほど平凡な展開やな……。このテーマならこれとこれ、ってルールブック通りやないけ。ってゲームだからそれでいいと。しかしそれだったらせめてディテールちゃんと作ってよ。あんだけ刺されて焼かれていっこうにダメージが蓄積されてないっぽいの、マンガチックにやるならまだしも、リアル路線では勘弁しろよ。でかい音やショックにビビッたりの反応のいちいちがワンテンポずれてるのがいかにも単なる演出ミスだし、オーバーリアクションがまことにコントというか空回りだし、なんか後半は次々と「こいつが黒幕でした~」みたいな種明かしを4つくらいやってたけど、あんなんバタバタ重ねなきゃ不安だったのかなあ制作サイドとして。それだけ一個一個のネタに自信ないってことね。そりゃそうだ、「実はこいつでした」って刑事だの教授だのが次々顔出しされても「だから?」って以外どう反応しろと? ただひとつ、あいつが後任指名された恨みで動いてたんでした、ってオチは、「ふぅぅん、だからヒデアキがいま標的にされてんのか、潔白なんだからどうして?って思ったよ、なるほどなあ……」って感嘆を誘おうって魂胆が見え見えの初歩的な仕掛けだが、でもその通り「なるほどなあ」って思わされたので一応マル。しかもヒデアキがそのことさっぱり忘れてたらしいってのがまた効いてた。前半の先生の通夜のとき「誰?」って思い出せなかったってシーンが伏線としてこれまた効いてた。そう。けっこう工夫が凝らされてはいるんですよ。けど全体を覆うリアリティのなさが、なけなしのポイントをもトホホ化しちゃったかな。もはや使い古された設定なんで、リアリティで勝負せにゃ埋もれるばかりよ。
■処刑教室 ハイスクール・パニック■ 「処刑教室」ってタイトルの映画いくつかあるみたいだけど、これってどのくらいの位置につけてるのかな? 俺的にゃどーしょーもない系だったけど。いろんな殺し方をするってので期待したのが悪かったかな。ハングライダーのやつはただ感電してるシーンが映るだけで何をどうやったんだかわかりゃしないし、テントに岩落とされても人間が潰れるシーンはおろか死体すら見せてくれないんじゃ意味ないしさ。ラストのほぼ自殺に近い爆破中止措置も、あのチャチな爆発じゃ地下からパーティ会場吹き飛ばすのは無理だったなあと苦笑を誘われるってなもん。校内のロッカーなんかちょうどよく爆発させてたのにねえ。あの娘に恋しちゃってその命を救うため、てあたりにしみじみしてもらおうって作意じゃちょっと弱すぎ。そのモチーフなら『血を吸うカメラ』の方がまだしも。無理ありすぎの爆弾だのなんだのより、リアルに肉弾戦でやってほしかったよな。あんだけ人が殺されてんのに普通に続く高校生活、なんてのより、人一人も死ななくていいからリアルな暴力でやってほしかったってことさ。レイプ未遂現場でのあの程度の殴り合いじゃ転校生のパワーがわかりまへんて。