桃とかなへび

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出光美術館「茶の湯の床飾り」

2023年05月20日 | 美術館など
出水美術館に行った。随分前にミュージカルを見に帝劇に行った時、隣が美術館なのだと知ったが、今まで行ったことはなかった。
出光美術館はビルの9階にある。有楽町駅から程近く、日比谷駅からはもっと近い。
「茶の湯の床飾り 茶席をかざる書画」こんな展示はいつもはないかもと思い、思い切って出かけた次第。
第一章 床飾りのはじまり 唐絵と墨蹟
中国の明や宋時代の古い掛軸が並ぶ。
叭々鳥(ははちょう)図を見て、中国の縁起の良い鳥だったと知る。以前福助が出張ついでに立ち寄った足立美術館で、横山大観の叭々鳥の色紙を買ってきた。この鳥はなんだ?とは思っていたのだ。
雁が渡る図は重文で色褪せて実に地味で、じっと見るとじんわり風情が感じられる。こんなの茶席にかかってたら、じーっと見てしまう、というかビビるよね重文。
日本のものは藤原定家による小倉色紙「百しきや 古き軒端のしのぶにも」の句。鎌倉時代とご対面。
禾目天目、はじめて見ました。小さいのね。
本当の本当には縁のない天目茶碗を使うお点前はいくつかあって、壮大なるごっこ遊びの奥伝を真面目にお稽古していた。お道具は貴重で大切で、全てのお茶も歴史も最大限に尊重している。しかしただの私に立ち戻る時、小習いだけできればよいのだと気づいたのは、40を過ぎた頃だったか。小習いしかできない人と一緒にお稽古したいというわけではないが。ふと、高校の入学祝いに師匠からいただいた京焼の小ぶりの茶碗が愛しくなる。

第二章 茶の湯の広まり 一行書の登場
ここは一休宗純の書が良かった。摩の字の最後の一画、少しはねるが、すっとのばした筆跡にキュンとした。理由なくいい。
一休宗純「諸悪莫作 衆善奉行」のハガキだけ買った。一休さんは室町時代。



茶の湯と物語 「酒呑童子」の趣向
これは楽しかった。絵巻や屏風は美しく、宗入の茶碗「鬼の首」に道入(ノンコウ)の赤楽茶碗「酒呑童子」、志野菊兜香合。
すべて江戸時代。

第三章 近代数寄者の新たな趣向
ここはもう、あらまー、と見とれるばかり。佐竹本三十六歌仙絵巻「柿本人麻呂」、高野切第一種 紀貫之
小野道風、坂井抱一と有名どころが並ぶ。
和紙が美しく、胡粉入りのものは白さが褪せず驚く。俵屋宗達が蓮の下絵を描いた紙に本阿弥光悦が和歌を描いたものなんて、本当に桃山時代のものかと思うくらい。

第四章 煎茶の掛物
煎茶のお飾りは謎。何度かお席に入ったことがあるものの、何も知らない。文具とか飾ってあるのよね。山水画は、一番わからないジャンルかもしれない。
そんな飾り物や小さいセットの茶器や急須を眺めた。
一番印象に残ったのは松尾芭蕉の短冊を掛軸に仕立てたもの。掛軸の柱と中廻しは大抵牡丹唐草なんかの金蘭が多いけれど、これは紺地に花の刺繍が施された布で、他と全然違っていた。それがとても好きで、退出する前にもう一度見に戻ったくらい。
どうも紙とか布地には簡単に惹かれるらしい。

昔の墨の色が黒々と残っている感動、線の勢いに胸を打たれる日が来るとは思いもよらなかった。年取ったのね、悪くない。

帰りは東京駅まで歩いた。途中に一保堂があり、新茶の貼り紙に誘われる。50グラム千円越えの奮発。試飲で一口いただいた冷たい新茶はまさしく甘露でありました。
上機嫌で帰った。



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