桃とかなへび

いらっしゃいませ。

コイコワレ

2023年05月21日 | ブックエンドとスクリーン
螺旋プロジェクト7冊目、乾ルカ「コイコワレ」を読んだ。
昭和初期の大戦末期、東京から疎開した清子と疎開先の寺に暮らす孤児のリツの物語。




出会った時から互いに生理的な嫌悪感を抱き憎しみを持つという、小学高高学年女子としては、きっつい設定。しかも二人とも属するコミュニティでは除け者である。戦時中に目が青い清子、リツは大きく尖った耳で山犬と言われる。
プロジェクトの海と山の対立や争いとか、そろそろ勘弁して欲しいと思い始めてしまう。しかし物語はこれまでになく内省的で、二人の少女はどうしても相容れない相手を憎みながら、戦うのは相手ではなく自分自身なのであった。
この切口は新鮮で、交互に語られる清子とリツの話を飽きず読んだ。プロジェクトの他の話に通じるアイテムも沢山散りばめられている。
ラストはきっとそうだろと思った展開だったが、短い期間で変わっていく少女たちの行末に明るい光をと願わずにいられない。なんだかアニメや映画の原作になりそうな物語だなと思った。
螺旋プロジェクト、残すところあと1冊。
それぞれ面白いのだけど、海と山の争いから早く解放されたいとも思っている。

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