茨木さんが選んだ、明治以降の4人の詩人の生涯を綴っています。4人の詩人とは、与謝野晶子、高村光太郎、山之口獏及び金子光晴である。後2名の詩人のことは全く知らなかった。
金子光晴さんは、戦争中に子どもを徴兵で取られそうになると、いろいろな方法でぜんそく発作を起こさせて、子どもを徴兵から守ったという話があり、茨木さんは「こうした行為を、エゴイズム、ひきょうと思う人もあるかもしれません。けれど金子光晴は、はっきりした自分の信念をもち、自分の愛するむすこを悪虐無道の兵士として、外地へ送り、うらみもない異国の人々を殺されたくない、殺されもしたくないという、一貫した思想からでてきた、とうぜんの行為を、徹底させたにすぎ」ないという(277頁)。それは、「個人の自立性は、たとえ国家権力によってもうばわれない」(291頁)ということになるのだろう。そんな自立性をもつ個人が多くなれば、もっと個人が自由になり、現在のように国家権力がやたらとはばをきかせるような社会でなくなるのだろう。
詩の凄さを垣間見れたような気がします。