拉致被害者で日本に戻ってこれた蓮池薫さんの兄である蓮池透さんの著書である。以前、家族会の事務局長を就いていたが現在は辞めている。その理由は、拉致問題解決のための「運動のありように疑問をもった」ため、その運動から「少し距離を置くようになった」からのようである(3頁)。
現在、日朝間の交渉が行き詰っていて進んでいないことから、その運動が拉致被害者救出よりも北朝鮮の現体制の打倒を主目的とする人々の影響を受けているとすれば、そのままでは「拉致問題を解決する展望」は生まれないとし、その運動があくまでの拉致被害者の救出を第一とし、左右といったイデオロギーの違いを超えて、「被害者のために連帯」しあえるようになれば、事態が大きく進展するのでないかという期待(8頁)をこめて、著者は本書を記した。
北朝鮮はどうやら新しい指導者での体制へ移行しつつあるようだ。これを機に、何とか事態を打開しようとする行動力と決断力のある政治家はいないのだろうか。