虚構の世界~昭和42年生まれの男の思い~

昭和42年生まれの男から見た人生の様々な交差点を綴っていきます

虚構の世界~早期退職~

2017-11-28 17:17:37 | 小説
*このお話はフィクションです。

 私の会社でも早期退職制度がある。退職金を上乗せする。

 早期退職制度は、出世争いに敗れた者たちが選択するコースだと思っていた。

 しかし、今は順調に出世コースを歩んでいる者もこの制度に乗っかるようになった。


 みんな今の閉塞感漂う人生に飽き飽きしているのだ。



 確かに私もそんな思いが脳裏を横切ることもある。


 しかし、私は現実を見ている。50歳を過ぎた人間が独立したり、起業したりして、うまくいった例がないという事実を。

 資格を取って用意周到に準備を進めた者でさえ、食っていけなくなり、悲惨な老後を迎えようとしている。


 50歳を過ぎての安易な転職は絶対にすべきてはない。

 私は仮に出世競争に敗れたとしても、会社にしがみつく覚悟を持っている。

 プライドがないと言われるかもしれないが、その心意気だけはある。

 家族を守るためには、プライドなんか必要がない。


 プライドなんか生きていくうえで表面的に出すものではない。




 今日も一日が終わる。だれだれが早期退職制度に応募したという話題が社内を駆け巡った一日だった。



 会社という後ろ盾があってこそ、私は生きてこられた。

 それが一番の強みだと私は思っている。


 やりがい、プライド・・・。奇麗ごとを並べて生きて行けるか。



黄昏のモノローグ~素通り~

2017-11-28 14:12:27 | 小説
*このお話はフィクションです。

 今日は昨日の寒さから何となく雨が降っているので暖かい。

 午前中、ある会社を訪れるためにシッピングモールを歩いていた。


 自分の視界にかつての上司が飛び込んできた。


 年は私より10ぐらい上だったので60歳ぐらいになっているだろうか。


 彼は車に乗り込むところだった。


 しかし、私は声を掛けるのをためらい、そして素通りした。


 私と先輩はどちらかといえば仲がよく、よく一緒に飲みに行ったものだ。


 私が25歳、先輩が35歳ぐらいの頃だ。



 しかし、先輩は途中で会社を辞めて転職した。


 その後の先輩の人生の状況は何となく人づて入ってきていた。


 自分で起業したらしいがうまくいかなかったようだ。


 莫大な借金を背負ったことも聞いた。




 久しぶりに見る先輩は、年老いたというよりも、覇気がなかった。

 いや、私が先輩に声をかけなかった理由は、乗り込もうとしていた車だった。



 25年前と同じ車を乗っていた。

 外見が錆びており、前のバンパーなどは穴があいていた。


 昔の人気車種はあまりに無残な姿をさらしていた。



 それでなくても25年間一度も会っていないのに、そこで25年ぶりに声を掛ける勇気は私は持ち合わせていなかった。



 いろいろな思いが脳裏を横切った。






 生きるということは戦場なんだと思った。

黄昏のモノローグ~訃報~

2017-11-28 07:16:42 | 小説
*このお話はフィクションです。

 50歳になると人の死に出会うことが確実に増えてくる。

 昨日、私の叔父さんが亡くなった。

 70歳だった。


 叔父さんはスキーの選手だった。私も子供の頃、叔父さんにスキーを習った。


 山を上から華麗なフォームで滑ってくる叔父さんはかっこよかった。


 口数の少ない人だった。


 子供はいなかったが、奥さんをとても大切にしていた。


 だからかもしれないが、私を自分の子供のようにかわいがってくれた。



 子供の頃の記憶が浮かんでくる。




 毎日毎日、日々、緊張しギリギリのところで生きている。


 そんな時に子供の頃お世話になった人のことをふと思い出すことがある。


 自分の人生はたくさんの人に支えられてきたことを改めて実感する。


 叔父さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。


 私は叔父さんから受けた数々の思い出を忘れません。




 久しぶりに晴れた空の釧路の街で自分は今日も生きていく。