虚構の世界~昭和42年生まれの男の思い~

昭和42年生まれの男から見た人生の様々な交差点を綴っていきます

黄昏のモノローグ~素通り~

2017-11-28 14:12:27 | 小説
*このお話はフィクションです。

 今日は昨日の寒さから何となく雨が降っているので暖かい。

 午前中、ある会社を訪れるためにシッピングモールを歩いていた。


 自分の視界にかつての上司が飛び込んできた。


 年は私より10ぐらい上だったので60歳ぐらいになっているだろうか。


 彼は車に乗り込むところだった。


 しかし、私は声を掛けるのをためらい、そして素通りした。


 私と先輩はどちらかといえば仲がよく、よく一緒に飲みに行ったものだ。


 私が25歳、先輩が35歳ぐらいの頃だ。



 しかし、先輩は途中で会社を辞めて転職した。


 その後の先輩の人生の状況は何となく人づて入ってきていた。


 自分で起業したらしいがうまくいかなかったようだ。


 莫大な借金を背負ったことも聞いた。




 久しぶりに見る先輩は、年老いたというよりも、覇気がなかった。

 いや、私が先輩に声をかけなかった理由は、乗り込もうとしていた車だった。



 25年前と同じ車を乗っていた。

 外見が錆びており、前のバンパーなどは穴があいていた。


 昔の人気車種はあまりに無残な姿をさらしていた。



 それでなくても25年間一度も会っていないのに、そこで25年ぶりに声を掛ける勇気は私は持ち合わせていなかった。



 いろいろな思いが脳裏を横切った。






 生きるということは戦場なんだと思った。

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