虚構の世界~昭和42年生まれの男の思い~

昭和42年生まれの男から見た人生の様々な交差点を綴っていきます

黄昏のモノローグ~末路~

2017-11-27 15:25:55 | 小説
*このお話はフィクションです。

 出世し地位が上がると俺様になる人を見かける。

 私の先輩もそうだ。


 役職のついていない一般社員の頃から彼は嫌われていた。特に年下からだ。理由は、横柄な態度と意地悪をするからだ。彼のことをよく言う人に私は今まで一度も出会ったことはない。


 しかし、先輩は出世していった。一時は取締役寸前のところまで行った。


 彼は自分より力のある上司に媚びるのは天才的な才能を持っていた。周りで見ていると滑稽に見えるほど上司にはとことん尽くしていた。

 しかし、その尽くし方に誠実さのかけらはなかった。



 彼は部長になった。しかし、彼はそこで自分は選ばれた人間なんだと勘違いするようになった。


 俺様は偉いんだ・・・というオーラを出して社内を歩いていた。そして、自分より下の立場の人間を徹底的に攻撃し、自分は何をしても許されるという態度で人に接していた。


 ある時、彼の部下が集団で蜂起した。彼の言動をボイスレコーダーに録音し、裁判に訴えると社長に申し出た。


 そして彼の崩壊は始まった。


 今日の人事会議で彼の出向か決定した。彼の悪評は、この周辺には鳴り響いていた。子会社からも強烈な反対にあった。


 彼の定年前の最後となる勤め先は、惨めな配置先だった。



 「俺は社長になる」と宣言していた彼の数年前の姿を思い出していた。


 「実るほど頭を垂れる稲穂かな」


 私の手帳の最後のページには、尊敬する社長から贈られたメッセージカードが貼られている。


 この言葉の意味を噛みしめている。

 

黄昏のモノローグ~11月もあと少し~

2017-11-27 07:20:00 | 小説
*このお話はフィクションです。

 11月もラストの週を迎える。

 部長になったころは11月のスケジュールを見ただけで重い気分になったものだ、

 しかし、時は確実に流れる。


 日曜日も仕事があった。100人ほど集まる席で、いきなり挨拶の依頼があった。


 全く予想していなかったことだ。


 挨拶を頼まれてから、挨拶をする時間まで10分程度しかない。


 私はトイレにこもり、過去の挨拶を思い出し、話すことを二つ決めてトイレを出た。



 生きた心地がしなかった。

 作り笑顔でゆっくりと話すことだけを心掛けた。


 何とかなった。


 「急に挨拶を頼んで申し訳ありませんね。もう社長に慣れる話し方でしたよ。急に挨拶を頼むと内容がグチャグチャになる人がほとんどですが、そうではなかったですよ」


 試されているのだとわかった。



 ただ、今回力になったことは、どんな小さな席の挨拶でもしっかりと挨拶原稿を作り準備していったことが大きかった。

 地道な努力は報われている。


 さあ、今日は人事にかかわる大切な会議がある。

 夜も地域の有力者の方との懇談会がある。


 しっかりと準備をして誠実に臨みたい。


 真剣に生きているいろいろな壁が前に表れる。

 けど、これこそが生きている証なのだと思う。


 11月27日、今日も早朝の誰もいないオフィスで自分と正対することから自分の一日は始まる。