ヒゲジイのアル中よもやま話

断酒を始めて早7年目。このブログは回復プロセスの記録と脳のリハビリを兼ねて綴っています。やはり、まだチョット変ですかネ?

夢中夢

2016-10-21 17:02:45 | 病状
 めったに夢など見ないのですが、つい最近、久々に夢を見ました。夢の中で夢を見ていたという一風変わった夢でした。まともな夢など今まで見たことがないので、内容的には普通の夢なのかもしれません。出だしはこんな場面でした。

「あっ、飲んでしまった。どうしよう?!」どうやら酒を飲んでしまったらしいのです。
どんな酒なのか、どんな場所にいて、どんな人物が他にいたのか、辺りの情況は全く分かりません。
「しまった! あとほんの少しでやっと断酒丸3年を迎えられたのに、・・・バカなことをした~!」と、飲んだ本人はただゝゞ悔やんでいました。すると、
「バッカめー、せっかくここまでやって来れたのにー。全部パーだ」と言う声がしました。飲んだ本人の声なのか、別の人の声なのか分からなかったのですが、半ば嘲るような口調でした。

「もうこうなったからには・・・、黙ってさえいりゃ誰にもバレやしないさ!」と飲んだ本人の声がしました。すると再び、
「そうかなぁ? そんなのすぐバレルに決まっている。さぁどうする?」と言う声が聞えました。が、もう飲んだ本人は開き直ってしまい、酒をやけ飲みし始めていました。すると再び、
「オッカシイなぁー、こんなハズはないのに・・・。あっ、これは夢かも?・・・」と言う声がし、そしてすぐに目が覚めました。

 夢の中で夢を見ていたのです。珍しいことに午前7時20分といつもより遅い起床時刻でした。最近は6時前後に起きることが多く、その日は夜中の3時過ぎに一回小用に起きた記憶があります。まだ早すぎると二度寝したのですが、その時の夢とは思えません。きっと目覚める直前に見た夢なのだろうと思います。

 お分かりのように、夢は再飲酒に絡んだ心の葛藤劇でした。最後の台詞は明らかに私自身が発した声だったような気がします。ですから登場した三人は、酒を飲んでしまった人物も、もう一人いた別の人物も、すべて私自身の分身だったのだと思います。やっと疎遠になれたと無邪気に喜んでいたのですが、久々ながら再び夢の中で再飲酒問題とまともに向き合ってしまいました。

 夢の中で夢を見ることを夢中夢というそうです。ネットで検索してみると、肉体や精神が疲れて消耗しているか、非常に緊張しているか、そんな危ない状態のときに見る夢なのだといいます。それで、最近再飲酒絡みで何か引っ掛かる出来事があったのか、心当たりを呼び起こしてみました。すると、自助会Alcoholics Anonymous(AA)で聞いた二つのエピソードに思い当たったのです。

 ひとつは、しばらく前に本人から聞いた告白です。再飲酒してから半年もの間、告白できずに苦しみ続けたという体験談でした。気づいたら何気なしに飲んでいて、そのままズルズル続いてしまったのだそうです。話の端々から察するに、家族のことで知らずしらず溜まっていたストレスが再飲酒の誘因らしいと思えました。

 その間一貫して、AAでの “居場所” を失いたくない一心だったといいます。告白する機会は何度もあったのだそうです。会わす顔がなくなることを恐れ、最初のうちは参加しても黙っていることにしていたそうです。誰にもバレていないと思い始めてからは、黙ってさえいれば誰にも分かりゃしないと言う一方の自分と、やはり自分に正直でいなければと言うもう一方の自分との間で葛藤劇が始まったといいます。心を鎮めようと酒を飲んでも、悶々とした日々が続くだけだったと涙ながらに語ってくれました。

「自分に正直でいることが、心底大切なことが分かった」と語った言葉が心に沁みました。“居場所” を失いたくない一心で、AAの仲間ばかりか自分自身も欺いて、再飲酒を隠し立てしていたのです。半年も続いた辛い日々がよほど応えたのだと思います。息苦しいやり切れなさが十分に読み取れました。アルコールというよりも依存症気質そのものが、このように “居場所” の虜にしたのかもしれません。

 もう一つは最近AAのメンバーが語った話で、原因不明の自死をした仲間の話です。SNSで知り合った同病の人物で、SNSの中だけの付き合いだったそうです。しっかり就業し、自助会の世話人を務め、全国大会にも出席していたそうで、活発な頑張り屋さんの印象だったと話していました。実際に会ったことはなくても、自死するなど考えられない人物というのは道理です。

 この話を聞いて私は、原因は再飲酒ではないかと想像してしまいました。頑張り屋さんでもあり自助会の世話人を張っていた人ですから、仲間の前で告白さえすれば簡単に肩の荷が降りると分っていたはずで、こう考えるのが普通です。ところが本人の心情はむしろ逆だったと考えることもできるのです。

 亡くなった人にとっても、自助会は彼が必死で掴んだ大切な “居場所” だったはずで、その世話人であることに大いにプライドを持っていたと思います。本人にとって、自助会とその世話人としてのプライドは想像以上に敏感な局所だったろうと思います。その局所につけこみ脅したり擽(くすぐ)ったりしながら、葛藤で告白を躊躇わせたのは、巧妙な魔力を持つ他ならぬアルコールのだったのではないか? だからこそ、理屈では分っていても話せなかったのだろうと想像したのです。

 多分、その場にいた全員が同じ考えであったと思います。「“今日一日”、その日一日だけのことと区切りをつけてさえいれば、違った結末となったはずなのに残念です」と話を締めくくった言葉が印象的でした。

 以上が心当たりとして浮かんできたエピソードです。どちらのケースも “居場所” を失いたくない一心が葛藤で苦しんだ原因と思われ、なんとも切ない話でした。断酒中のアルコール依存症者の多くは普段自分がアル中とは明かさずに日々暮らしています。健常な人々との付き合いでは、普段でも酒の話題が付きものです。そんな話題に話を合わせようものなら、拷問に近い辛さに耐えなければなりません。余計な気を使うのは面倒と、もっぱら自助会の仲間とだけ付き合っている人は結構多いのです。自助会とはそんな人々の “居場所” です。

 私としては、気を使わなくて済む自助会が “居場所” として不可欠と考える人もいれば、よく効く精神安定薬並みに重宝する人がいてもよいと考えています。自助会への思い入れも大事ですが、ほどほどに距離を置く方がいい塩梅だと思うのですが・・・。

 私自身、AAは回復のための言語化実践道場と位置付けていますが、“居場所” というほど深刻には考えていません。幸い、心身ともに疲れて消耗するほどの問題を抱えているわけでもありません。ただ単に初めて見た夢中夢でしたので、さっそく専門クリニックの主治医に相談してみることにしました。医者がどんな見立てをするのか聞いてみたかったのです。

 主治医には上述の二つのエピソードに加え、ネットで見つけた夢中夢と精神状態の解説のことも絡めて話しました。話してすぐに、夢中夢の解説の話は医者の仕事に余計な口出しとなったのでは、と悔やんだのですが、・・・なけなしの知識でもつい口に出してしまう所が前職からの因縁です。

「結論から先に言いますと、仰るように再飲酒のエピソードが立て続けに二つ重なったので、無意識の内に動揺されたのでしょうね。近々断酒丸3年ですからねぇ。まぁ、再飲酒(の危険)からは誰も逃れられないとご自身が再認識したという話で、心配ないと思いますよ。」
「で、夢中夢というのはどういうわけでしょう?」
「まぁ、歳をとると夢中夢をよく見るといいますよ。夢の意味も、自分で夢の中で分析しているといいますし、何回か見ている内に夢を操作できるようになるとも聞いています。」
「ほ~ぉ、夢の中で自分自身を分析し、夢を操作できる・・・?! 夢中夢について書いてあったのは夢の吉凶占いのサイトでしたが・・・、見た人自身が夢の中で夢を解釈しているという夢、ですか?! ・・・どうにでも解釈できる占い向きの夢ということですね。今度夢を見る時は操作してみることにします。」

 私の懸念は杞憂に終わりました。軽い気持ちで医師に相談してみただけのことですが、このお蔭で近々継続断酒丸3年を迎えることに少し浮足立っていることに気づけました。

 時々意識が飛んでは次にやるべきことをコロッと忘れ、無意識の内に別のことを始めている場合がよくあります。起床1時間以内の血圧測定を毎朝の日課としていますが、ついこの間も何かに急かされているような気分に襲われ、見事に飛ばしていまいました。こんなときは、変化の兆しを・・・
 “自覚できると結末が変わる”
こう心して置けば、正夢になることはないと思います。



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