わっおもしろい~パチリ!

ocnブログから引越して来ていったいどれほどたったのか?(^-^)  
       

フィオナ・マクファーレン著『夜が来ると』・・・

2015-08-23 14:17:22 | 日記

 訳者 北田絵里子氏による あとがき が 素晴らしいのでそのままUPさせて頂きます

 舞台はオーストラリアのシドニー近郊のリゾート地、サウス・コースト。5年前に夫を亡くし、街から離れた海辺の家でひとり暮らす七十五歳のルースは、ある夜更けに、トラが家の中をうろついている気配を感じて目を覚ます。夢にしては生々しいその感覚にとまどいつつも、ルースはこう考える・・・これはきっと妄想で、今の生活に何か変化が起こる予兆なのかもしれないと。

 その翌朝、フリーダという大柄な女が前触れもなくルースを訪ねてくる。その女は、生活支援対象者となったルースのために自治体から派遣されたヘルパーだという。腰痛を抱え、自活にいくらか困難を感じ始めていたルースは、翌日の午前中だけ掃除や料理などの家事代行をフリーダに頼むことになるが・・・

 奇しくもシンクロしたトラとフリーダの出現とともに、孤独だが平穏だったルースの毎日に、良くも悪くも変化が訪れる。 フリーダは有能なヘルパーだが、少々複雑な性格の持ち主でもあった。髪色や髪型をころころ変える彼女は、気分にもむらがあり、口のきき方がぶっきらぼうで、ルースにたいしてはしばしば威圧的な態度をとるけれど、時折共感や同情を示したり、独特のユーモアでルースを和ませたりもする。二人の間にはある種の心安さが生まれるものの、信頼のバロメーターは常に揺らいでいる。

 人生を振り返ることの多くなったルースは、フリーダにもそれを語り聞かせる―――当時は英国の植民地だったフィジーで、宣教師の娘として過ごした風変わりな少女時代のこと、実らなかった初恋の相手リチャードのこと、亡き夫ハリーとの出会いや結婚生活のこと、いまは海外在住で普段は電話で連絡を取り合うだけの息子二人のこと。

 過去をたぐり寄せるような日々が過ぎていくうち、ルースは日常の記憶があやふやになりだしたことを自覚する。夫を亡くしてからのルースは、記憶と思い出を伴侶のようにして暮らしてきたが、その記憶が混乱し始めたことで、世界はにわかに拠り所なき場所と化す。それが衝動的な行動にもつながっていき、危なげなその姿から読者は目を離せなくなる

 ―ーー印象深く造形された人物、静かなサスペンスをはらんだ展開と並ぶ、本作のもうひとつの持ち味は、繊細に描き出された主人公の感情と心象だろう。 老いに抗えず、生活面で人を頼ることになった主人公の胸中では、自立心と、依存心、感謝の念と反発、焦燥とあきらめが絶えずせめぎ合っている。ルースがフリーダや息子に抱く複雑な思いには,哀感を誘わずにおかない痛切がある。   また主人公は、“夜が来るとトラの気配と密林のざわめきが家を満たす”感覚に付きまとわれ続けるが、そうした異質なものへの強い恐れは、身に迫る危険な何かをルースに直感させる一方で、その判断を曇らせもする。 リアリティーと幻想が美しく混ざり合った不穏な物語の行方を、じっくり見届けていただきたい。―ーー   訳者 あとがき から

  ××× 確か新聞誌上での書評で知った本書・・・図書館で借りたわけだけど・・・なかなか身につまされる事どもだった! たとえ国や人種は違っても人は同じように老いを迎え・・・人間としてのあれこれを少しづつ失って行く・・・哀しいけれど避けられない事です。失うことで救われることもあります。 が、それ故に我が国でも多発している「気をつけましょう!」と折に触れ言われる諸々の詐欺事件などにも繋がっていく・・・・・ やれやれ感慨深い読後感です。  ×××