「なんだよっ、ハムカツかと思ったら玉葱かよっ!」「なんかカツ丼とか食いたいッスね、卵トロットロの」「バカ、カツ丼って言ったらソースカツ丼だろ? 卵でしたらカツがべちゃべちゃべちゃになんだよっ」「ソースカツ丼なんて食ったこと無いッスよ」土下座の経緯を知らない加持は適当に合わせて流そうとしたがやはり手に負えないと、土下座したままの練を残して弁当と袋を持ってその場から離れて行った。「ソースカツ丼だよな?」まだ火を点けていない煙草を持って聞く佐引。「はい」土下座したまま応える練。「いとう食堂だべ。あとめでたいや」煙草を吸いながら話し出す佐引。
「カレー焼きソバもが? トミーフード」「ありました。よく知ってますね」顔を上げる練。「ロイプラ」「ロイヤルプラザ。はい。野口英世青春館の前」「中合会津はもう無ぇか? 神明通り、飯盛山」「風雅堂、背あぶり山」「酪王カフェオレ」「あっ、ままどおる」見せていた笑みを引っ込める佐引。「そんなに帰りてぇか?」真っ直ぐ見上げてくる練。「帰りてぇかぁ、ずりぃなぁ、お前だげ」視線を落とす練。「勝手にしろ。帰れ帰れ」荷台から降り、煙草を吸いながら佐引は立ち去った。顔を上げて去る佐引を見ていた練はもう一度頭を下げた。
「失礼します」木穂子は上司にお茶を出しに来て、湯飲みを置くと退室しようとしたが「待って」不意に呼び止められた。「呼んだのはお茶じゃない。この企画書、書いたの日向さん?」新任の上司は理由は不明だが数年前に出した木穂子の出した企画書に目を付けていた。「その後は、書いてないの?」上司は問うてきた。「失礼しました」木穂子は退室すると、動揺のあまり回収した湯飲みの茶を一気に煽っていた。どうも仕事が通ったらしかった。
夕方、音は本社の社用車が大量に止めてある専用駐車場に走って来ていた。
8に続く
「カレー焼きソバもが? トミーフード」「ありました。よく知ってますね」顔を上げる練。「ロイプラ」「ロイヤルプラザ。はい。野口英世青春館の前」「中合会津はもう無ぇか? 神明通り、飯盛山」「風雅堂、背あぶり山」「酪王カフェオレ」「あっ、ままどおる」見せていた笑みを引っ込める佐引。「そんなに帰りてぇか?」真っ直ぐ見上げてくる練。「帰りてぇかぁ、ずりぃなぁ、お前だげ」視線を落とす練。「勝手にしろ。帰れ帰れ」荷台から降り、煙草を吸いながら佐引は立ち去った。顔を上げて去る佐引を見ていた練はもう一度頭を下げた。
「失礼します」木穂子は上司にお茶を出しに来て、湯飲みを置くと退室しようとしたが「待って」不意に呼び止められた。「呼んだのはお茶じゃない。この企画書、書いたの日向さん?」新任の上司は理由は不明だが数年前に出した木穂子の出した企画書に目を付けていた。「その後は、書いてないの?」上司は問うてきた。「失礼しました」木穂子は退室すると、動揺のあまり回収した湯飲みの茶を一気に煽っていた。どうも仕事が通ったらしかった。
夕方、音は本社の社用車が大量に止めてある専用駐車場に走って来ていた。
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