羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

アルスラーン戦記 4

2015-09-28 19:18:21 | 日記
アルスラーンはルシタニアの傷病者や当ての無い者等がついてくることを認めていた。エステルは馬に引かれた大型の荷台で、慣れぬ様子で傷病者や妊婦の世話をしていた。「大丈夫だ。私が必ず、皆を故郷に届けてやるからな」励ますが、手元が覚束ないエステル。「不器用なヤツ」「何だとっ?」エラムが手伝いだした。「教えてやる、足手纏いになるなよ」エステルは世話を焼いてきたエラムを見ていた。
行軍は続き、野営地の傍でエステルが水を汲んでいるとファランギースが現れた。「精が出るな」「お主は、進んであいつに仕えておると言ったな?」「玉座にはそれ自信の意思は無い。それは正義の椅子にもなるし、悪逆の席にもなる。人間が政を行う以上、完璧であることも無いが、それに近付こうとする努力を怠れば、王は悪への坂を転げ落ちるであろう。王太子殿下はいつも努力しておられる、そのことが、仕える者の目には明らかなのだ。お主はどうじゃ?」「ふんっ! 私はお前達を見張っているだけだっ」エステルは桶を持って去って行った。
夜、野営地でエステルがルシタニアの者達の食事の世話をしていると、アルスラーンが一人でふらりと現れ、人々を動揺させた。「この教典を返そうと思って」「来い!」「痛てててっ」エステルはアルスラーンの耳を引っ張って人気の無い所へ連れて行った。「不用心だぞ?!」「いつもこんな感じだが?」「何なんだこの軍は?」「大切な物をありがとう」「返す必要は無い。改宗させてやるのだから」「それは無いと思うが」「用事はそれだけか?!」「手伝えることはあるか?」「もっと偉そうにしていろっ!」エステルは怒って去ってしまった。
そんなある朝、ルシタニアの妊婦の子をファランギースが取り上げた。男子で、元気よく泣いた。「エトワール様、抱いてあげて」その母はエステルに布で包まれた我が子を差し出した。
     5に続く

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