日本のものづくりを強くしているもう一つの文化的個性として、「もったいない」という感じ方があります。たとえば、製造工程で不良品が作られると、廃棄物として捨てられます。これを「もったいない」と感じる感性を日本人は持っています。たかだか月に1万円の損失であっても、なんとかゼロにできないかと、QCサークルで作業者が一生懸命に智慧(ちえ)を出し合います。
しかし日本以外の国々では、そういうアプローチはありません。そんな改善活動やら設備の改良やらに100万円かかるのなら、1万円程度の不良は捨ててしまった方が得だ、という考え方が一般的です。
しかし、ものづくりとは、技術の蓄積です。1万円の不良退治に100万円かかっても、それで品質信頼性が高まれば、市場の評価も高くなって売上が増え、何千万円もの利益増加につながる、ということがよくあるのです。
また、不良退治のノウハウが見つかると、それを他の工程や製品に展開して、工場全体では数百万円の不良品削減につながる、ということもあります。
こうして現場が「もったいない」の気持ちを持って一生懸命、品質とコストの改善に取り組んだ結果、日本の工業製品が世界の消費者の信頼を得て、圧倒的な市場競争力を持つようになったのです。
---owari---
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