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山椒(さんしょう)は日本が世界に誇る香辛料・調味料

2016年06月29日 | 日本

一昨日、NHK昼番組“ひるブラ”を見ていると日光市の二荒山神社中宮祠が中継されていた。

神社の背後には男体山が聳え立ち、拝殿を取り囲むように山椒が群生してるこの神社では、山椒を漬け込んだ酒をお神酒としてふるまっているという。また、山椒は実をたくさんつけることから子宝に恵まれるという言い伝えがあり、古くから薬として使われてきた歴史があるという。

 

数年前に、NHK“ためしてガッテン”で「山椒」を特集していたのを思い出した。確か、山椒は日本が世界に誇る食材、香辛料・調味料だと言っていたはず。それで、少し調べてみた。

 

番組では、ヨーロッパの三ツ星レストランやモナコの宮廷で、この日本の調味料・山椒が大人気だという。でも、多くの日本人にとって、山椒といえば「うなぎ」にかける薬味、というくらいのイメージで、それ以外の使い方はあまり思い浮かばない。

 

しかし、実は山椒に含まれる刺激物質は人間の味覚を鋭敏にし、他の食材の味を強めるため、いわば万能調味料として使うことができるというのです。

 

山椒に含まれる刺激物質には、サンショオールという名前がついていますが、1920年代に日本人が発見したものです。近年、健康効果が注目されるようになり、詳しく研究されるようになりました。その結果、人間に対して、しびれるような感覚をもたらす以外にも、さまざまな作用をもたらす不思議な物質であることが分かってきました。

 

山椒は「大建中湯(だいけんちゅうとう)」という漢方薬に使われていますが、研究が進めば新たな治療薬の開発につながる可能性もあるそうです。

 

近年、ヨーロッパの一流レストランでは、日本産の山椒に大きな注目が集まっており、ヨーロッパ各国のシェフが大絶賛しているというのです。

独特の香りと刺激があり、肉料理以外にもドレッシングやお菓子などに使うことができるユニークな調味料として、シェフやパティシエが好んで使っているのです。

 

「山椒は小粒でもぴりりと辛い」という有名なことわざがあります。実際、山椒はどれくらい辛いのでしょうか?

近年、研究が進み、新しい事実が明らかになってきました。それによると、山椒の辛みは、とうがらしに含まれる代表的な辛み成分・カプサイシンの200分の1しかなかったのです。

 

ところが、山椒の刺激が脳をどれくらい覚醒させるのか脳波を用いて測定したところ、なんととうがらしよりも強く脳を覚醒させていました。

しかも、食べた直後より、食後20分たってからのほうが覚醒が高まっているという意外な結果に。

 

実は山椒の刺激の正体は「しびれ」です。舌を長時間にわたりしびれさせる山椒の刺激のことを中国では「麻味」と呼び、とうがらしの辛さとは区別しています。

「麻痺」の「麻」には『ピリピリとしびれる』という意味があります。

そして、舌をびりびりとしびれさせる山椒の刺激には、他の香辛料にはない、驚きの作用があることが分かってきたのです。

 

番組では山椒の刺激がもたらす驚きの作用を体感する実験を行いました。

何もつけていない冷やっことまぐろの刺身。そのまま食べたのでは、やはり、どこかもの足りない味です。

 

ところが次に、あらかじめ山椒の実を食べて舌をしびれさせてから、冷やっこやまぐろの刺身を食べてみると、なぜか、豆腐の味が濃く感じられたり、刺身に塩味やコクがあるように感じられました。もちろん、しょうゆなどの調味料は一切使っていません。なぜ、こんな変化が起こったのでしょうか?

 

この不思議な現象を解明するヒントとなる論文が、カリフォルニア大学の研究グループによって2008年に発表されています。研究によると、山椒に含まれる刺激物質は舌の触覚神経を興奮させ、まるで、舌に電気を流し続けているような状態を起こしているというのです。

 

舌の触覚神経は、味を判断する大脳皮質味覚野につながっています。このため、山椒によって舌がしびれている間は味覚がふだんより鋭敏になり、甘味・うま味・塩味などの味覚を濃く感じるのではないかと考えられるのです。

 

あらゆる味覚を鋭敏にしてくれる山椒。

試しにさまざまな食べ物に山椒をかけてみると、不思議なことに塩をかけていない焼き魚やステーキが、たちまち塩味の効いたおいしい味に大変身したのです。

 

料理の味つけをあらかじめ薄味にしておいて、山椒をかければ、かんたんに減塩ヘルシー効果が得られるというのです。

さらに、牛乳に入れれば牧場のミルクの味に早変わり。チーズやウエハースにかければ高級感あふれるデザートが完成。他にも、みそ汁、パスタ、ゆで卵、トースト、ポテトチップ、アイスクリーム・・・相性ぴったりの食べ物が次々と見つかったのです。

減塩効果まである山椒の「味覚マジック」です。

 

和食に洋食に、工夫しだいでさまざまな料理に使うことのできる山椒ですが、ひとつ注意すべき点があります。それは、含まれる成分がとても不安定だということです。

収穫したばかりの実をすりつぶした新鮮な山椒の粉はあざやかな緑色をしていますが、空気にさらしておくとわずか一日で茶色に変色してしまいます。

 

山椒の粉は、開封後はなるべく空気に触れさせないようにして冷暗所で保管するのが、刺激成分を長持ちさせるためには一番です。

また、乾燥した山椒の実を購入して冷蔵庫などで保存しておき、必要な時にペッパー・ミルでひいて使う方法もお勧めとのことでした。

 

世界で人気の日本産山椒ですが、その7割は和歌山県で生産されています。和歌山県が多いということは、山椒がミカン科の植物ということなのでしょうか。

今では和歌山県の山椒生産量は年500トンを超えています。また、海外への出荷量は、この10年で3倍以上に跳ね上がっているそうです。

 

日本代表する香辛料である山椒は、有史以前より現在にいたるまで、私達の食卓を美味しく豊に、暮らしを健やかに彩り続けてきました。「山椒は小粒でもぴりりと辛い」というように、山椒は人々の生活文化に深くかかわってきました。山椒は日本人の特質、らしさの象徴ともいえます。英名は「Japanese Pepper」、ずばり"日本の胡椒"です。

 

これからも日本の素晴らしい調味料として、食材として、活用されることを願っています。

 

---owari---

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