《本記事のポイント》

  • 中国企業の活力を奪う「混合所有制」「第二文革」
  • 半導体、IT、自動車──各分野で相次ぐ破産
  • 習政権肝煎りの国有企業が相次いでデフォルトという皮肉

 

 

2012年11月に習近平政権が誕生して以来、中国経済は概ね右肩下がりである(下図表1、2参照)。

(図表1)

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(図表2)

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その主な理由は、(1)活きのいい民間企業とゾンビまがいの国有企業を合併させる「混合所有制」を導入した、(2)「改革・開放」の「トウ小平路線」を捨て、「第二文革」(文化小革命)を開始したからではないか。

 

どちらの政策も、国有経済の増強(国有企業の発展)と民有経済の縮小(民間企業の衰退)を意味する「国進民退」を招来した。政府による企業への干渉・介入は、どうしても自由な経済活動を阻害する。

 

おそらくその結果も大きいだろう。近年、中国の国有企業はデフォルトと倒産が相次いでいる。

 

 

半導体大手・清華紫光集団倒産の衝撃

直近では7月9日、国有企業の半導体大手である清華紫光集団が、債権者の徽商(きしょ)銀行から「同集団の破産・再編を進めるよう裁判所(北京市第一中級人民法院、地裁に相当)に申請した」旨の通知を受けたことを明らかにした。

 

この国有企業は清華大学系で1988年に創設された。昨年11月以来、同集団は何度もデフォルトを起こしたが、結局、倒産した形となる。一時、同集団は他国企業の買収を試みたが、ほとんど失敗に終わっている。

 

2019年11月、エルピーダメモリ(現・マイクロンメモリジャパン)社長を歴任した坂本幸雄氏が紫光集団の高級副総裁に就任した。それでも、同集団を救うことができなかった。

 

現代社会では、半導体があらゆる生産の要となっている。その重大な任務を担っていた紫光集団の倒産は、中国共産党にとっては痛手だったのではないか。

 

ちなみに、紫光集団の傘下企業には、長江存儲科技(長江ストレージ、YMTC、武漢市)がある。この会社は、世界をリードするメモリー装置ソリューション企業である。

 

他には、西安紫光国芯半導体(紫光国芯、Unigroup Guoxin)もある。同企業は、2009年に破綻したドイツ半導体大手、キマンダ(ミュンヘン)の西安工場を継承した西安華芯半導体を前身としている。

 

紫光集団の倒産は、これら傘下企業にあまり影響しないとも言われているが、今後の展開次第では、この2企業にもダメージがあるかもしれない。

 

 

IT企業・北大方正集団の破産

昨年2月には、IT企業の北大方正集団も破産している。同集団は、北京大学が100%出資し、その研究成果を産業化するため1986年に設立された国有企業だった。

 

北大方正集団が満期になった債務のデフォルトを起こしたため、「明白に同社には返済能力がない」と判断した北京銀行が、裁判所(北京市第一中級人民法院)に同社の再建手続きを申し立てた。

 

同集団の傘下には、(1)英特克信息技術(武漢)有限公司(インテック武漢)、(2)方正株式(武漢)科技開発公司(2018年1月、同集団がオフショア開発を円滑に推進するため武漢市に子会社として同社を設立)、(3)24ABC株式会社(18年6月、同集団が越境ECプラットフォーム24ABCを展開することを目的として設立)、(4)方正国際軟件(江蘇)有限公司(江蘇省江陰市、08年に設立か)等が存在する。

 

 

自動車メーカー・中国華晨汽車も破産

実は2020年11月、BMWとの合弁企業、中国華晨汽車(遼寧省瀋陽市の国有企業)も破産した。

 

「SankeiBiz」(11月20日付)によれば、「新型コロナウィルスの影響で自主ブランド車の販売が低迷。ドイツ大手BMWとの合弁事業は順調だが、全体の経営悪化をカバーできなかった。中国の破産法に基づき、事業を継続しながら負債を整理し、経営再建を目指す」という。

 

確かに、「新型コロナ」が同社の経営悪化に拍車をかけたことは間違いないが、原因は他にもあるのではないか(例えば、「親方"五星紅旗"」など)。

 

同月、国有資源会社の永城煤電控股集団(河南省)がデフォルトを起こした。この集団も先行きが不透明である。

 

 

習政権肝煎りの国有企業が相次いでデフォルトという皮肉

ところで、以前まで中国では、デフォルト寸前の企業に、どこからとなく「ホワイトナイト」(友好的な買収者)のような存在が現れ、破産寸前の企業を救っていた。

 

けれども、「国有企業改革」を掲げる習近平政権は、ゾンビ化した国有企業を救うことができなくなったのか。あるいは、同政権はゾンビ企業をこのまま残せば、さらに財政赤字が逼迫すると考えて、助けようとしないのだろうか。

 

しかし一般的に、国有企業の労働者は多いので、いったん倒産すると大量の失業者が生まれる。

 

江沢民時代の朱鎔基首相は、「国有企業改革」を推進した。当時は国有企業が倒産しても、失業者は、まだ別の業界で活躍することができた。だが現在、産業が高度化したせいか、失業者が簡単に別の分野で働けなくなった。国有企業の倒産が増えれば、ますます社会不安が増大するだろう。

 

習近平政権肝煎りの国有企業が相次いでデフォルトを起こして倒産している。何たる皮肉だろうか。

 

 

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アジア太平洋交流学会会長

澁谷 司

 

(しぶや・つかさ)1953年、東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学などで非常勤講師を歴任。2004年夏~05年夏にかけて台湾の明道管理学院(現・明道大学)で教鞭をとる。11年4月~14年3月まで拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。20年3月まで、拓殖大学海外事情研究所教授。著書に『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)、『2017年から始まる! 「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)など。

 

 

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