『黒幕と言われた男』の著者の戯言

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アウシュビッツ鎮魂コンサート

2015-10-19 15:04:29 | 日記
 戦後70年の企画として日本における戦争やその後の歴史を省みるものがいろいろあるが、

珍しくナチスの強制収容所で命を落とした人たちへの鎮魂をテーマにしている。

 出演者 演奏される作曲家ともにアウシュビッツに何らかの関わりある人たちである。

クラシックに詳しくない私には知らない名前ばかりで、曲も難解といえば難解である。

しかしやや高音のメロデイはやさしくまた激しく、とにかく美しい。交感神経の昂ぶりがちな

日常から離れ副交感神経を呼び覚ましてくれるのであろう。ゆったりと心がほぐれ眠たくさえ

なる。瞬時睡魔に襲われた後目を覚まして気づくと隣席の男性もお眠りの様子。

 ピアノ:ギリアード・ミショリ 1960年エルサレム生

     曲目の「逃亡ーA.マイケルズの小説を読んで」の主人公はポーランドの村に生ま

     れ育ったユダヤ系少年。ナチスにより家族全員を失いながら森や沼を逃げ、大戦の

     間ギリシャの島に身を隠して生き延び、なくなった姉の奏でた音楽に思いを馳せる
     
     
     ミショリはこの小説の豊かで音楽的に波打つような文体に触発されてピアノ曲を

     書き、2005年第2次世界大戦終結60周年を記念した南西ドイツ放送の特別演奏会

     で初演した。

      彼は優勝なピアニストの中でもすぐれたテクニシャンだと思う。ピアノが壊れ

     るかと驚くような左手の低音の力強さ、右手のかそかな高音。別の曲では生き残る

     ために必死で挑戦する”狂気”を表現するのに、グランドピアノの中に腕を入れ

     て弦を引っ張るなど、見せ場も作る。
 
 ヴァイオリン:ギオルギ・バブアゼ 1961年グルジア国トビリシ生

      曲目 ロボダ:無伴奏ヴァイオリンのための「モノローグ・レクエイム」

      ロボダはグルジア国の首都トリビシアで、ユダヤ系の一家に生まれる。この曲は      
      亡父のために書かれた悲しみに満ちた葬送行進曲であり日本初演である。

      管弦楽団の芸術監督や主席指揮者、交響楽団のコンサートマスターなどを歴任。

      風貌も体格も貫禄があるが、演奏は重厚さと軽みが交錯している感じ。

 フルート:福島 和夫 1930年生

      15歳で終戦を迎えた彼は兄や年長の友人たち身近な人々が戦士し、戦争が終わっ

      たとき7人の家族が4人になっていた。本人も空襲の中を逃げ惑いかろうじて

      生き延びた体験から、音楽が戦火に亡くなった家族や友人・同胞への追悼・鎮魂

      の手段となった。

      古来日本には弔笛(しのび笛)という習慣があり、笛の音はあの世に届き、死者

      の魂に触れることができるという。先の大戦で犠牲になったすべての魂に捧げる

  ピアノ:田隅 靖子

      国内外でさまざまなテーマに基づく演奏会を開催。ソロとアンサンブルで活動

      2004年京都芸術大学教授を退職(名誉教授)「アウシュビッツ鎮魂」をリリース

      2009年6月より京都コンサートホール館長

      生年は記載されてないが経歴から察してそこそこのお歳であるが、派手なドレス

      のよく似合うピアニストとして腕も華もある。館長職とピアニストとしての

      活動はどちらかがどちらかの足を引っ張らないのか。難しいこともあろう。

      館長は行政職としてどこまでの責任を負わされているのだろう。余分なことを

      心配している自分に苦笑している。

  とにかく、いいコンサートだった。演奏者や曲目につられるのでなく音楽を楽しんだ。