遊爺雑記帳

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日米印豪を4本柱とした安全保障体制に、英仏を加えた「4+2」構想で中国の野望を封じ込め

2018-07-03 23:58:58 | 中国 全般
 「中華の夢」を富国強兵で追及、覇権拡大を推進する中国。
 米国がその野望を牽制する政策に転じていることは、諸兄がご承知のことで、遊爺も何度も触れさせていただいています。
 トランプ大統領が日本や中国他のアジア諸国歴訪時に、安倍首相が提唱していた「自由で開かれたインド太平洋構想」に賛同し、歴訪先で説いて回ったのでしたが、更に、フランスと英国を加えた、「4+2」構想を提唱するのは、元・陸上自衛隊幹部学校長の樋口譲次氏。
 
中国の野望を封じ込めるインド洋「4+2」構想 太平洋とインド洋を結ぶ基地ネットワーク・システムの構築を急げ! | JBpress(日本ビジネスプレス) 2018.7.3(火) 樋口 譲次

<前略>
■「太平洋軍」を「インド太平洋軍」へと改称した米国
 ジェームズ・マティス米国防長官は2018年5月30日、ハワイの真珠湾で行われた米太平洋軍の司令官交代式に出席し、
太平洋軍(PACOM)の名称を同日付で「インド太平洋軍」(INDOPACOM)に変更したと発表した。

 米太平洋軍は、1947年に創設され、米軍が有する9つの統合軍(うち6つの地域別統合軍を含む)の中でも最も古い地域別統合軍で、ハワイ州・オアフ島の海兵隊キャンプ・H・M・スミスに司令部を置いている。
 太平洋軍は、当初、アフリカ最南端の喜望峰から米本土の西沿岸までを担任区域としていた。
 その後、1983年に中央軍(CENTCOM)、1995年にアラビア海を中心に中東を担当する第5艦隊(5F)、そして2008年にアフリカ軍(AFRICOM)が、それぞれ創設・編成されたことに伴い、関係地域別統合軍との間で担任範囲が調整された。
 現在は、インドとパキスタンの国境から真南に引いた線以東から米本土の西沿岸までを担任区域とし、ほぼインド洋から太平洋全域の北東アジア(5+1地域)、東南アジア(11)、オセアニア(14)、南アジア(6)の36カ国1地域をカバーしている。

 このように、
太平洋軍は、創設当初から、インド洋を含めて管轄しており、かねてインド太平洋軍への改称が取り沙汰されていた。

 マティス長官が演説で、「インド太平洋軍は米西岸からインドまでの広大な地域と密接なかかわりを持つ主要な戦闘部隊である」と述べたように、
今回の改称はまず、太平洋軍の担任地域をより正確に反映する狙いがある。
 
さらに、マティス長官は、「インド洋と太平洋の連結性が増していることに鑑み、今日、米太平洋軍をインド太平洋軍に改名する」とも述べた。

 
米国は、中国が東シナ海、特に尖閣諸島周辺での不法行動を活発化させ、南シナ海を軍事拠点化し、インド洋に向けてシルクロード経済圏構想「一帯一路」を強力に進めているのに対抗するため、日本やインド、オーストラリアなどとともに「自由で開かれたインド太平洋構想」を推進する考えを打ち出している
 つまり、
インド太平洋地域では、今後、中国の覇権的拡大の動きが強まって対立の危険性が増大するとの認識のもと、それに対し地域の連結性をもって対処する必要性が高まったことを受けた措置である。

 もともと、アジア太平洋諸国がインド洋から太平洋に至る地域を相互に結びつけて概念化する「インド太平洋」という用語は、2007年にインド国家海洋財団(NMF)会長で海洋戦略家のGurpreet S. Khurana氏が提示したのが初めてとされる。
 オーストラリアも、2016年の「国防白書」で「Indo-Pacific region」という用語を使い、自国がインド洋と南太平洋の間に位置し両海洋に跨る「インド太平洋」国家であるとの認識を示し、直近のシーレーンと両海洋へのアクセスが国益に直結することを明示している。

 また、
中国の海洋覇権の野望を念頭に、安倍晋三首相が発表した「自由で開かれたインド太平洋戦略」は、そのようなインド太平洋を維持することにより、地域全体の安定と繁栄を促進することを目標とした戦略指針である。
 
日本、米国、インドおよびオーストラリアを戦略構築の4本柱(Quadrilateral)として、中国の東シナ海・南シナ海~インド太平洋への侵出抑止に主眼を置いている。

 マティス長官は「太平洋とインド洋にわたる同盟国や友好国との関係は、同地域の安定を維持する上で極めて重要だ」と強調した。
 その言葉の通り、米国はかねて、上述の考えを持つ日本やインド、オーストラリアなどと防衛協力などの分野で連携を強化してきた。
 このたびの改称は、そうした方針に沿ったものと見ることができ、これからのインド太平洋地域における安全保障取組みのあり方を裏付ける出来事と言っても過言ではないのである。

■伝統的な大陸志向を修正し「海洋国家」を目指すインド
 前掲書『海の地政学/Sea Power』が、インド洋を「未来の海洋」と表現したことには歴史的意味が込められている。
 インド洋は、前述のとおり、紀元前3000年以来の長い交易や交流の歴史があり、その間に略奪や襲撃があったのも事実であるが、概して平和な「交易の海」であった。
 欧州とインドとの交易が本格化したのは、いわゆる15~16世紀にかけた大航海時代に、ポルトガルの国王マヌエル1世(幸運王) の命でバスコ・ダ・ガマが喜望峰を回り、アラビア人の水先案内人に導かれて 1498年5月インド西岸のカリカットに達し、インド航路が開かれて以来である。
 インドが政治的実体としての国の形を成したのは、16世紀の「ムガル帝国」以降とされているが、安全保障上の脅威は、中央アジアのステップ地帯や現在のイランとアフガニスタンの高原地帯からもたらされた。
 その脅威が、伝統的にインドを大陸に釘づけにしてきたのである。
 今日に至っても、カシミール問題を巡るパキスタンおよび中国との領土紛争や、マクマホンライン(インド東北の辺境地区)を巡る中国との国境紛争が続いている。
 そのように、
インドは、近年まで外洋に囲まれ陸地に縛られた国であった。しかし、中国が経済力を高め、大規模な艦隊を建設し、インド洋へ侵出するに及んで、インド洋周辺の事情は様変わりした。

 中国は、単にインド洋沿岸の友好国に最新式の港湾を作って自国の海上交通路を保護しようとしていると主張するかもしれないが、
インドは「真珠の首飾り」によって包囲されたように感じている。
 
中印国境紛争などによる脅迫観念と台頭する中国への対抗意識などがその感覚を一層鋭くさせている。

 そればかりか、
中印は、共に核兵器保有国であり、重複するミサイル射程圏という新しい地政戦略的環境、強いて言えば、「恐怖の均衡」の中に投げ込まれているのである。

 
インドは、2004(および2009)年に「海洋ドクトリン」(2015年改訂)、2007年に「海洋軍事戦略」、そして2015年に「海洋安全保障戦略」を立て続けに発表した。
 その中で、
中国(海軍)は「インド洋地域に戦略的足掛かりを獲得」し、インド洋への進出と域内におけるプレゼンスを拡大しているとの脅威認識を示している
 そしてインドは、伝統的な大陸志向を修正しつつ、
自らを「歴史的に海洋国家」と規定し、インドの安全と繁栄のために「インド洋が死活的に重要である」との立場を明確に打ち出した

 インドは、海洋安全保障への取り組みの出遅れを取り戻そうと懸命に努力している。
 また、2014年に発足した
モディ政権は、南アジア諸国との近隣諸国優先政策を維持しつつ、 「アクト・イースト」政策に基づき関係強化の焦点をアジア太平洋地域へと拡大し、ベトナムや日米との協力関係を強化している。

 インド洋は、西は湾岸諸国からアフリカ東岸、中央はインド亜大陸、東は島嶼部東南アジアからオーストラリアを含む地域で世界の海の5分の1を占める。
 中東には石油の主要供給元があり、ペルシャ湾~アラビア海~インド洋を経て世界へ供給される。
 また、インド洋は世界貿易の東西航路(大きな通商路)となっており、世界のコンテナ輸送の半分、世界の石油関連製品の70%が運ばれている。
 さらに海上交通路(シーレーン)を制するマラッカ海峡、ホルムズ海峡、バブエル・マンデブ(マンダブ)海峡、喜望峰などのチョークポイントがあり、まさに世界を動かし、左右する「未来の海洋」と呼ぶに相応しいのである。

 
今後、ユーラシアやインド太平洋地域の経済の最も強力な牽引役となるのは、台頭著しい中国とインドであろう。
 なおそのうえ、
中国とインドの経済圏や勢力圏は、次第に重なり始めている。さらに、富の創造と戦争技術の向上には密接な関係があり、また、軍事ハードウェアとソフトウェアの技術進歩によって地政学的距離が接近する。
 そのため、両国の「恐怖」意識はいやが上にも高まり、今後、特に
インド洋を舞台にした摩擦や対立の危険性は増大することはあっても、減少することはないと見ておかなければならない。

■「4+2」構想を支える「基地ネットワーク・システム」の構築を急げ!
 いま、
東シナ海、南シナ海そしてインド洋の帰趨が、インド太平洋地域における安全保障確保の上で最大の課題となっている。

 
米国は、2010年の「4年ごとの国防計画の見直し」(QDR)において、インドに「安全保障提供者」(net provider of security)としての役割を期待し、インドもこれを引き受けた
 安全保障提供者には、国際的規範と法を遵守し、海軍力に裏打ちされた強い協力関係を維持して「航行の自由」の確保と海洋における国際法レジームの強化が求められている。
 その具体的な行動は、プレゼンスと即応、関与、能力構築支援、海洋状況把握(MDA)、海上安全保障行動、排他的経済水域(EEZ)哨戒、共同パトロール、 海賊対処、人道支援・災害救助活動(HA/DR)、 非戦闘員退避活動(NEO)、海上阻止、平和作戦、捜索・救難などである。
 
インド洋で、インドがその役割を果たすのであれば、東シナ海は日本、南シナ海はオーストラリアと米国が同じ役割を果たさなければならない
 そして、世界の海を守る意思と能力のある米国のプレゼンスをもってインド太平洋全域をカバーするのである。

 南シナ海にオーストラリアとともに米国を加えたのは、「力の空白」地帯である南シナ海に空母機動打撃群を中心とする大きな戦力を展開できるのは米国だけであるからだ。
 この際、米国は、南シナ海で軍事同盟を結ぶ台湾とフィリピンとの関係を再調整し、また相互基地アクセス協定を締結して、台湾(高雄)、フィリピン(スービック湾)、ベトナム(カムラン湾)そしてシンガポール(チャンギ海軍基地)に基地を確保し、各基地のネットワークを構築すれば、自由に活動できる。
 同じように、基地ネットワーク・システムをインド太平洋地域の同盟国・友好国間にも拡大する必要がある。

 それもって
日米印豪を4本柱とした安全保障体制にインド太平洋地域に重大な利害関係を有する英仏を加えた「4+2」構想の活動を支えれば、この地域における安全保障確保のための課題を解決する有力な応えとなり得るのである。

 (なお、「4+2」構想の詳細については、筆者拙論「中国の海洋侵出を抑え込む「4+2構想」」(JBPRESS、2018.6.25)を参照のこと)

 トランプ大統領は、2017年12月に発表した「国家安全保障戦略」で、中国を米国主導の国際秩序への最大の挑戦者として特徴づけていましたが、マティス米国防長官は、今年5月、太平洋軍(PACOM)の名称を「インド太平洋軍」(INDOPACOM)に変更したと発表しました。
 太平洋軍の担任地域をより正確に反映する狙いと、インド洋と太平洋の連結性が増していることに鑑みたものなのだそうですね。
 
 中国がインド洋での覇権拡大政策で「真珠の首飾り」戦略を展開したことは衆知のことですが、インドは自らを「歴史的に海洋国家」と規定、「インド洋が死活的に重要である」との立場を明確にして、モディ政権は「アクト・イースト」政策に基づき関係強化の焦点をアジア太平洋地域へと拡大し、ベトナムや日米との協力関係を強化しているのですね。

 人口が世界のトップ2のインドと中国。経済成長のけん引役を担うこととなりますが、そのぶん経済圏や勢力圏は、次第に重なり始めているのだそうです。
 両国の軋轢は増し、特にインド洋を舞台にした摩擦や対立の危険性は増大し続けると樋口氏。

 米国は、インドに「安全保障提供者」(net provider of security)としての役割を期待し、インドもこれを引き受けているのだそうです。
 インド洋でその役割を担っているインドに対し、東シナ海は日本、南シナ海はオーストラリアと米国が同じ役割を果たさなければならないと、樋口氏。
 
 「自由で開かれたインド太平洋構想」の柱の、日米豪印に、英国とフランスを加えた「4 + 2」構想で、インド洋から太平洋までの地域の安全保証体制構築を急げとも提唱されています。
 経済では、「CPTPP(TPP11)」への英国他ASEAN有志国の加入を促進させ、「RSEP」も併合し、主導を視野にいれた活動を強めていく道も開けています。

 日本に期待され、果たすべき役割は大きいのですね。安倍政権が期待に応えていただけることを願っています。



 #冒頭の画像は、米ハワイ・パールハーバーで開かれた太平洋軍司令官の交代式典に出席した(左から)ハリー・ハリス司令官、ジョゼフ・ダンフォード統合参謀本部議長、ジェームズ・マティス国防長官




  この花の名前は、カエンキセワタ


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