遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

トランプ政権のシリア空軍基地攻撃 「進むも地獄、退くも地獄」のプーチン政権

2017-04-19 23:58:58 | ロシア全般
 トランプ政権の、シリア空軍基地攻撃での話題は、核ミサイル開発に暴走する北朝鮮と、北朝鮮に対する制裁を怠る中国へのけん制といった方向での話題に偏重傾向が強まっています。日本のメディアの特徴で、一斉に同じ方向に向いての報道合戦を展開し、落ちこぼれないことが優先される様に感じるのは、遊爺だけでしょうか。
 余談ですが、あれだけ一日中大騒ぎしていたテレビや紙面を割いていた新聞の籠池騒動。国会までもがその下請けで追及騒動で法案審議も滞る状態でしたが、突然プッツリ音沙汰がなくなり、何時までも委員会で質問を続ける民進党が嘲笑を浴びるほどに様変わり。怖いくらいのメディアの同一指向の奔流振りです。
 シリアについては、地域の絡み合う抗争の後ろ盾に、米露や欧州の国々が絡み合う複雑な構造があり、トランプ政権が、シリア空軍基地を攻撃したことに対し、プーチン大統領の対応が注目されてしかるべきですが、日本からは遠い地域でのことなのだからでしょうか、北朝鮮関連報道一色となっていますが、ロシア情報では信頼できる、新潟県立大学の袴田教授と双璧の、北海道大学の木村名誉教授が、プーチン大統領の状況について書いておられる記事がありました。
 

シリア撤退がロシアの本音か 北海道大学名誉教授・木村汎 (4/19 産経 【正論】)

 米国のトランプ政権は、シリアの空軍基地に巡航ミサイルを撃ち込んだ。アサド政権が反体制派に対して化学兵器を用いた嫌疑にもとづく懲罰行為だった。アサド大統領は同兵器使用の事実を否定し、米国の空爆を国際法違反と見なした。ロシアのプーチン政権は、シリア政府の主張を支持する一方、米国のティラーソン国務長官の訪露を受け入れた。首尾一貫しない言動から、一体どのようなクレムリンの意図を読みとるべきなのだろうか


≪トランプ政権のメッセージ≫
 ロシアは、米国によるシリア空爆にどのぐらい激怒しているのか? この問いに答えるためには、まずトランプ政権側の意図を正確に知る必要がある。

 確かに、米軍はシリア政府の空港設備を破壊したが、空爆は限定的な性格のものだった。まず、米軍が攻撃の事前通告を行ったために、ロシア側の人的被害はほとんどゼロにとどまった。また、空爆は1回限りで、アサド政権に対する「象徴的」懲罰の意味をもつ警告にすぎなかった。
 
空爆はむしろ政治的、外交的な機能を狙っていた。まず、米国内に向けて、トランプ政権がオバマ前政権とは異なり、アサド大統領による化学兵器使用に関し、毅然(きぜん)とした措置を取る姿勢の誇示。次いで、核兵器開発をエスカレートさせる一方の金正恩・北朝鮮、それを阻止することに不熱心な習近平・中国に対する牽制
(けんせい)の意味合いで実施された。

 アサド政権は自らが化学兵器を使用した事実それ自体を否定し、米国空爆をシリアの主権を侵す重大な行為と見なした。プーチン大統領はシリア政府側に与(くみ)し、次のような皮肉すら口にした。結局、大量破壊兵器の保有が証明されないままに終わった「2003年のイラクでの出来事を思い起こさざるをえない」。
 
もしプーチン政権がトランプ政権によるシリア攻撃に本気で激怒しているならば、口頭だけでなく行動においても抗議の意図を表す
べきだろう。例えば、米国務長官の訪露のキャンセル。にもかかわらず、プーチン大統領自らがティラーソン長官との会談を行った。

≪「二正面作戦」は望ましくない≫
 このことから、次のように大胆な推測も成り立つだろう。
シリア内戦への関与の是非や方法をめぐって、ロシア指導部には2つの考え方が存在
し、現在そのどちらが優勢とは必ずしも言い切れないのではないか。

 
1つ目は、シリア内戦からそろそろ手を引くべき潮時が到来しているとの見方だ。プーチン大統領は、原油安、ルーブル安、西側制裁といった経済的“三重苦”からロシア国民の目をそらす狙いで、シリア空爆を始めた
。ところが、「勝利を導く小さな戦争」にあまり長くかかずらわっていると、泥沼に陥る危険がある。
 シリアへの軍事介入によって、
ロシアは、1日当たり約100万ドル以上の出費を余儀なくされている。ウクライナ東部とシリアの「二正面作戦」の続行は望ましくない。このような判断に基づき、ロシアは「出口戦略」を模索し始めた
。実際、イランやトルコと協議して「アスタナ和平案」をまとめ、自らも空母「アドミラル・クズネツォフ」などロシア艦隊に撤収を命じた。

 しかし他方、アサド大統領の思惑は異なる。同大統領は、シリア第2の都市アレッポの奪還だけでは満足できず、この機に反体制諸勢力の息の根を止め、己の安泰を完全なものにしたいとの誘惑に駆られているのではないか。この推測が当てはまる場合、
アサド大統領がロシア側から事前の承諾を得ることなく、独断でサリン攻撃を敢行したシナリオすら排除できなくなる。だとするならば、プーチン大統領はアサド大統領によってコケにされたことにも等しく、13年に仲介者役を買って出た面目は丸つぶれ
となろう。

≪突きつけられた深刻なジレンマ≫
 右に述べたような
プーチン指導部の意図を十分承知しているティラーソン長官は、ロシア側に向かいシリアと米国のどちらを選ぶのかと迫った
。ところが、目下のプーチン大統領にとっては、これら両国よりもさらに重要なメッセージの発信相手が存在する。ロシア国民に他ならない。というのも、氏は、来年3月にロシア大統領選を控えているからである。

 確かにその人気と支持率は盤石に見える。とはいえ、現ロシアでは
経済の“三重苦”が解消されるめどがつかない一方、地方でのデモ、地下鉄テロなど不穏な動きも続出している。そのため、プーチン大統領は米国の言いなりになってロシア国民から弱腰との批判を浴びるのを警戒せねばならない

 要するに、
プーチン政権は「進むも地獄、退くも地獄」というシリア問題で深刻なジレンマを突きつけられている。この難問を解く鍵は、アサド政権が果たして化学兵器を使用したか否かの事実解明だろう。おそらくその答えを知っているロシアは、その証拠の提出を他のどの国よりも欲しているにちがいない。(きむら ひろし)

 トランプ政権のシリア空軍基地攻撃は、化学兵器使用への制裁が名目で、トランプ政権が、米国内向けにオバマ大統領との違いを示したかったことと、北朝鮮や中国へのけん制が目的であったこと。ロシアには事前通告がなされ被害が及ばない限定的なものであったことなどから、プーチン大統領は、本気で激怒していないと言うのが、木村名誉教授の見立て。
 本気で怒っていれば、口頭の抗議で終わらせず、行動も起こすはずだが、ティラーソン国務長官の訪露を受入ていると。
 それどころか、シリア内戦への関与の是非や方法をめぐって、ロシア指導部には2つの考え方が拮抗している現状だと。
 資源価格低下などで財政状況の苦しいロシアには、戦費負担が重くのしかかり、戦線縮小を進めていたことは諸兄がご承知の通りです。
 
ロシア:シリア作戦に区切り…空母の撤収開始 - 毎日新聞

 また、アレッポ奪還で増長したアサドが独断でサリンを使用した攻撃をした可能性があり、そうだとすれば、プーチン大統領はアサド大統領によってコケにされたことにも等しく、13年に仲介者役を買って出た面目は丸つぶれになったと。

 一方、経済の“三重苦”を抱え、地方でのデモ、地下鉄テロなど不穏な動きも続出しているなかで、来年 3月に大統領選を控えるプーチン大統領は、国民の支持を維持するためには、ロシア国民から弱腰との批判を浴びるのを警戒せねばならない。
 プーチン政権は「進むも地獄、退くも地獄」というシリア問題で深刻なジレンマを突きつけられているのだと。

 トランプ政権のシリア空軍基地攻撃で、米露関係は悪化したとの報道が多いのですが、その裏では、シリアからの撤退を進めようとしていたプーチン大統領も、ジレンマを突き付けられている。

 トランプ政権のシリア空軍基地攻撃は、北朝鮮やその後ろ盾の中国へのけん制だけではなく、プーチン大統領に対しても大きな影響を及ぼしているのですね。



 # 冒頭の画像は、米駆逐艦から発射されたトマホーク




  ヤブミョウガの果実


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写真素材のピクスタ


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ソ連が満洲に侵攻した夏 (文春文庫)





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