ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

マスク着用をどうする

2023-03-27 16:36:04 | 日記
ここ数日、テレビでは、「マスクを着用するかどうか」の話題が取りあげられることが多くなった。去る3月13日から、マスクが解禁になったからだという。それまでは「屋外でのマスク着用は原則不要。屋内ではマスク着用を原則推奨」だったが、3月13日以降は、「屋外、屋内を問わず、マスクを着けるかどうかは個人の判断が基本」になったというのである。

新型コロナの感染法上の分類が「5類」になったことに伴う移行措置であるようだが、さて、それでは我々は、これからどういうスタンスでこのマスク問題に臨めば良いのだろうか。

「そういうお前はどうなのだ?」と訊く人がいるかもしれない。私の場合は、ひどい花粉症なので、スギ花粉が多く飛ぶこの時期はマスクの着用が欠かせない。私の場合、春のスギ花粉は、秋のセイタカアワダチソウと同様、新型コロナウイルス以上に身近な脅威なのである。特に今年は、10年に1度の飛散量の多さとかで、マスクを着用しているにもかかわらず、連日、私は鼻炎による鼻グジュグジュに悩まされている。

では、もし花粉症でなかったらどうなのだ、と、さらに問う人がいるかもしれない。花粉症でなかったとしても、私は今現在の環境であれば、やはりマスクの着用を続けるだろう。私が外出して、他人(ひと)様と接触する機会は唯一デイサービスへの「出勤」時に限られているが、最近私が通いはじめたこの施設では、スタッフを含めた全員が、いまだにマスクを着用し続けている。デイサービスは、一旦妖怪コロナに感染すれば重症化を免れない高齢者が多いから、「原則としてマスク着用」はやむを得ない措置と言えるが、この施設のそうした暗黙の取り決めを、あえて破るほどの強い理由を、私は持たないのである。

たしかに、「マスク美人」が多いこの施設の女性スタッフの、その素顔を覗きたいと思う衝動に駆られることもないわけではない。マスクなしの素顔で表樹がはっきり分かったほうが、意思疎通の上で安心できる、という声も少なくない。

だが、あえて私は言いたい。素顔の表情のほうが本人の心情を正確に伝える、という我々の思いなしは、果たしてどの程度ホントだろうか。それが根拠のない迷信であることを、我々はむしろしばしば経験しているのではないか。

キャバクラのお姉さんたちの謎めいた微笑が、客にもっと多く酒を飲ませるための商売上の媚態だったり、バレンタインデーに初老の教授へチョコレートを差し出す女子学生のあどけない笑顔が、単位をおねだりするための作り笑いだったり、といったことは、よく聞く(笑えない)笑い話である。逆に、若いホストの優しげな言葉に誘われ、このホストに入れあげて、ホストクラブに大枚をつぎ込む中年オバサンの話も後を絶たない。

表情はしばしば嘘をつく。嘘をつくための道具として表情が使われることもある。そうだとしたら、表情を覆うこれまでのマスク越しの顔のほうが、よほど正直だということになるのではないか。

「正確なコミュニケーションのためには、素顔が一番」というのは、低俗な神話に過ぎない。むしろ仮面もどきのマスク顔のほうが、その人の性格を正確に表す。その意味では、屋内でのマスク着用を推奨するこれまでの慣例のほうが、むしろ健全な社会を形作る礎(いしずえ)になるかもしれないのである。

以上、素顔に自信のない私は、やや強引に「マスク不要論」への反論を試みた。私は、昨夜舞い込んだ次のような情報が、世間を席巻しなければ良いが、と考えている。《マスクに感染予防効果はない? 世界的機関「コクラン」が論文公開》と題されたこの記事は、以下のように述べている。

質の高い医療情報の発信で世界的に定評のある『コクラン』という非営利団体が、ウイルス感染症に対するマスクの有効性を検討した研究論文を2023年1月30日付で公開しました。
この研究では、これまでに報告されているマスクの感染予防効果を検討した研究9件分のデータが統合解析されています。新型コロナウイルス感染症のみならず、インフルエンザ感染症など呼吸器(喉や鼻、気管支など)に感染するウイルスが検討対象となりました。
解析の結果、ウイルス感染症の症状は、マスクを着用していた場合で1000人あたり152人、マスクを着用していない場合で1000人あたり160人と、マスクを着用していた場合で5%の低下傾向を認めましたが、統計学的に有意な差は示されませんでした。

(日刊ゲンダイヘルスケア3月26日配信)

マスクの着用に新型コロナ感染の予防効果はない、ということになれば、(花粉症でない)若者たちは、今後、大手を振ってマスクを脱ぎ捨てるだろう。他方、新型コロナに感染すれば重症化を免れず、必要以上に用心深くなっている高齢者は、そうなれば、自室に引きこもり、マスクを着用したまま、戦々恐々と暮らさざるを得なくなる。そんな社会が来ることを、私は望まない。
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