ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

金正男暗殺 背景の真相

2017-02-21 15:32:12 | 日記
議論の道筋と問題点を整理しておこう。いま議論の対象にしているの
は、「中国工作員の関与説」である。私がこの珍説を知ったのは、本ブ
ログの読者であり、友人でもあるomg05さんが書くブログ「槐安国伝
」を通してである。なぜこの珍説が私の関心をとらえたのかといえば、
それは、この珍説があまりにも珍妙な論説であり、意外性の点で断トツ
だと思われたからである。この珍説の発信元をググってみたが、そのブ
ログ(長谷川良「ウィーン発コンフィデンシャル」)を読んでみても、
立論の根拠は曖昧で、すごく怪しげな印象を受けた。だがこのいかがわ
しい感じも、なぜだか、却ってこの珍説の魅力を引き立たせるように私
には思えたのである。

さて、金正男の暗殺に中国工作員が関与したとすれば、この指令を出し
た中国の意図はどういうものだったのか。件(くだん)の長谷川氏のブ
ログでは、「中国が金正恩政権との関係修復をねらった」と書かれてい
る。ならば関係修復によって、中国は何を意図したのかという、「その
先」のねらいが知りたくなる。ところがこのブログは、この点について
は全くふれていない。それなら、ということで、私が代わりに「その先
」のねらいについて仮説を立ててみた。「金正恩に核開発を断念させ、
東アジアの大立者としての権威を回復するとともに、トランプ米大統領
に『一つの中国』を認めさせること」がそのねらいではないか、と私は
考えた。

この私の見立てを、私はさっそくomg05さんに示して、感想を伺って
みた。返ってきた返事は、「金正恩に核開発を断念させることは100%
不可能。中国もこのことは承知している」というものだった。

だとすると、中国が金正男を暗殺までして金正恩との関係を修復する理
由が、私にはますます分からなくなる。この疑問をomg05さんにぶつ
けたら、omg05さんの回答は次のようなものだった。金正恩の核兵器
を自分の側に取り込み、アメリカに対する威嚇の手段にするためだとい
う。なるほど、と私は一応納得した。納得せざるを得なかった。たしか
に、北朝鮮の工作員が関与したにしては、この事件は犯人があっさり逮
捕されるなど、あまりにもお粗末だからである。

けれども、これで疑問がすべて払拭され、一件落着となったわけではな
い。「一応納得した」と書いたように、これはあくまでも一応のことで
あり、暫定的なものであって、納得した気持ちが揺らぐ余地はまだある
と私自身は予感している。

中国の関与をなお疑わせる情報はいくつかあるが、その一つは、マカオ
に在住するとされる金正男の家族に関する情報である。金正男の長男が
次のターゲットになると懸念されることから、マカオ警察が「中国の指
示の下で」家族を警護しているとの情報がある。この情報が正しいとす
れば、中国は金正恩の意図に反して、金正男の家族を暗殺から守ろうと
していることになるが、金正恩との関係修復をねらう中国がなぜそんな
ことをするのか、私には理解できない。

もう一つの情報は、中国が数日前、北朝鮮からの石炭の輸入を年末まで
停止すると発表したことである。これは国連安保理の制裁決議に基づい
てなされた措置とされるが、北朝鮮に大きな打撃を与えるこうした措置
をいま中国が取るとすれば、その中国がつい数日前、金正男を暗殺して
まで北朝鮮との関係修復をはかった、と考えることは難しいのではない
か。

そもそもこの珍説はどの程度の信頼性を持つのか、という根本的な問題
がある。この珍説の発信者である長谷川良氏は、最近になって「『正男
暗殺』の次は『正恩暗殺』?」と題するセンセーショナルなブログ記事
を書き(「ウィーン発コンフィデンシャル」所収)、その中で、「マ
レーシア警察の発表から「正男氏暗殺事件」が北朝鮮の対外工作機関「
偵察総局」が主導した犯罪だったことがほぼ確認できた」などとして、
暗殺は北朝鮮の犯行だとする見方を無条件に前提しながら論を進めてい
る。しかも、そこから金正恩の暗殺可能性にまで論及しているのだか
ら、支離滅裂と言うしかない。

いずれにしても、あのシェイクスピアもビックリポンで、暗殺劇の闇は
果てしなく深いと言うべきだろう。
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