ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

金正男 珍説・暗殺の背景

2017-02-19 14:08:00 | 日記
金正男が数日前に殺害された。金正日の長男で、金正恩の異母兄である
金正男が、マレーシアのクアラルンプール空港で、何者かによって殺害
された。実行犯として二人の女が逮捕され、事件に関与したとして、北
朝鮮国籍の男一人も逮捕されている。この男は大学で薬学を専攻してお
り、毒物の製造にもそれなりの知識があるようだ。

彼らは一体どういう組織に所属するどういう人物なのか。北朝鮮の工作
員である可能性が濃厚だが、それにしては、その道のプロらしからぬ
あっけない幕切れで、このことがいろいろと憶測を呼んでいる。

この事件が起こってからというもの、お昼のワイドショーはこの話題で
持ちきりだ。この種のネタは視聴率が稼げるのだろう。不謹慎のそしり
を承知で言えば、この暗殺劇は、王位継承をめぐるシェイクスピアの愛
憎劇と、ジェームズ・ポンドのスパイ・アクション映画を掛け合わせた
ようで、面白くないわけがない。

さて、話題の中心は、金正男を殺害した実行犯グループの正体である。
最近私は、「中国工作員の関与説」というのがあることを知った。私が
この説に興味を持ったのは、この説が意外性の点で断トツだからであ
る。

ポピュラーな見方からすれば、この事件は、金正恩がこう考えたことか
ら企てられた可能性が大きい。「オレ様を殺害して、由緒ある金一族の
現体制を転覆しようと企てている奴らがいる。糸を引いているのはたぶ
ん中国だが、奴らはオレを殺した後で、政権の受け皿として、あの正男
の奴をかつぎ出し、奴を後釜にすえる腹だろう。とんでもない、そんな
ことをさせてなるものか。この陰謀は何としても阻止しなければ」

このように「親密な中国・金正男 vs. 金正恩」という図式が、もっとも
らしいものとして受け取られ、一般的な見方にもなっている。ところが
件(くだん)の「中国工作員の関与説」は、意外にも「中国が金正男を
切り捨てた」と見るのである。

一体なぜなのか。分からないのは、(北朝鮮の最高指導者の異母兄であ
る)金正男を切り捨てることで、中国は何をねらったのか、そのことで
中国にどんなメリットがあるのかである。金正男を切り捨てることで可
能になるのは、中国が北朝鮮の金正恩政権との関係を修復することだろ
う。世界の鼻つまみ者との関係修復が中国にメリットをもたらすとすれ
ば、それは、中国がこの政権をコントロールし、核兵器の開発を断念さ
せることで、東アジアの大立者としての権威を回復することである。

核兵器の開発中止は、これまでにも中国が何度か要求し、説得を試み
てそのつど失敗に終わったハードルの高い課題である。中国の習政権
は、トランプ米新大統領に「一つの中国」を認めさせる手立てとして、
今、この課題の強行を必要としているのだろうか。

金正恩の抹殺とのバーターで朝鮮半島の非核化を実現し、米の暴言王に
「一つの中国」を承認させるなんて、夢物語のようでにわかには信じに
くいが、朝鮮半島を非核化する捨て石になったのだと思えば、金正男も
すこしは浮かばれるのではないだろうか。
コメント (3)
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