ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

トランプよ 公平さとは何か?

2017-02-01 16:29:57 | 日記
ハンディキャップという言葉がある。日本語では適当な訳語が見当たら
ないが、ネット上の百科事典「ウィキペディア」では、こう説明されて
いる。「スポーツやゲーム等において、競技者間の実力差が大きい場合
に、その差を調整するために事前に設けられる設定のこと。」
説明のための例として、競馬、オートレース、競艇、ゴルフ、ボウリン
グ、ボクシング、プロレス、将棋、囲碁、などの競技が挙げられてい
る。この中では、競馬の例が分かりやすいだろう。
「競馬においては、強い馬は負担重量を重くし、弱い馬は負担重量を軽
くすることで、全ての馬が同タイムで走るように調整を行うハンデ
キャップ競走を行う場合がある」とある。
もっと身近で分かりやすい例をあげよう。私が具志堅用高とボクシング
の試合をする場合を考えてみる。具志堅用高といえば、ライトフライ級
の元チャンピオンであり、「100年に一人の逸材」と言われた男であ
る。還暦を過ぎたとはいえ、腐っても鯛である。私が100グラムのグ
ローブを、具志堅が100キロのグローブをつけることにすれば、何とか
対等に渡り合えることになるだろう(か?)

これはスポーツ競技の話であるが、「ハンデをつける」のは、なにも
ゲームやスポーツの世界に限った話ではない。現実の日常世界でも、同
様のことはしばしば行われている。アメリカで行われている「アファー
マティブ・アクション」がその例である。日本語では「積極的格差是正
措置」と訳されるが、例えばアメリカでは、黒人などのマイノリティは
貧乏な家庭に生まれ、恵まれない教育環境で育つことが多い。彼らは才
能があってもそれを充分に育めず、テストで優劣を競えば、良い点数を
とれずに後れを取ることが多いから、どうしても入学試験では不利にな
る。だから入学試験を行う場合には、黒人にあらかじめ下駄を履かせる
ことが「公平な競争」を行わせる必要条件だということになり、実際に
教育現場では、こういう措置が取られている。これに対しては「そうい
うやり方は白人に対する逆差別ではないか!」という異議申し立てもあ
り、アファーマティブ・アクションにも問題がなくはないが、競争の
「公平さ」を保とうとすれば、こういう措置も考えられなくはないとい
うことである。

さて、アメリカのトランプは、日本との自動車貿易を「公平ではない」
と批判してやり玉にあげたという。米国新大統領のこの批判に、日本側
には戸惑いが広がっている。というのも、日本からの対米自動車輸出に
は2・5%の関税が課せられるのに対して、米国からの対日輸出の関税
はゼロで、「公平でない」と批判される筋合いはないからである。

だが、トランプが要求している「公平」とは、そういうことなのだろう
か? 彼が日本側に要求しているのは、「関税比率を日米で同率にする
」といったことではなく、日米の自動車貿易に、「アファーマティブ・
アクションと同じ発想に立った是正措置をとること」ではないだろう
か。
アメ車は日本車に比べて、いろんな点で、著しく劣っている。サスペン
ションしかり、最小回転半径しかり、燃費しかり、耐用年数しかり・・・。
日本で300万円で売られている日本車と同等の性能のアメ車は、日本で
は600万円で売られている。日本で300万円で売られているアメ車は、
日本で150万円で売られている日本車と同等の性能である。こういう状
況にあるなら、300万円の予算で自動車を買おうとする人は日本人、ア
メリカ人に関係なく、だれもが300万円の日本車を買おうとするだろう。
無駄遣いを見せびらかそうと思う人でもなければ、300万円のアメ車を
買おうとする人はいないだろう。アメ車が売れないのは当然である。

だったら、とトランプは言うだろう。日本で自動車を売る場合は、日本
車に300万円のハンデをつけて、600万円で売ることにせよ。そうすれ
ば、初めて日本車とアメ車の間で販売競争の「公平さ」が保たれるの
だ、と。

う〜ん、そんな馬鹿な! この商売人上がりは、大統領になって権力を
手にした途端に、舞い上がって、商売の基本もそのモラルも忘れてし
まったのだろうか?そんな無茶をゴリ押ししたら、アメリカの自動車産
業はますます駄目になってしまいますぜ!
コメント
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