20年間の選手生活に、幕を下ろそうとしている
『背番号9』井上一樹選手は、決して派手な選手でありませんでした。
鹿児島生まれの木訥とした性格。
左の外野手として、20年もの長きにわたり、
その存在を維持し続けました。
選手会長として優勝した出来事が、忘れられないと言います。
私は仕事の関係で、名古屋に1985年から3年間、住んでいました。
ドラファンの熱狂度は、虎ファンと同レベルです。
井上一樹選手には玄人好みのファンがいたことでしょう。
阪神ファンも皆、わかっているから、
引退セレモニーが終わるまで、席を立たなかったのだと思います。
「YouTobu」の書き込みにこんなコメントを見つけました。
阪神ファンです。私はこの時レフトスタンドにいましたが、
自然に 阪神ファンからも一樹コールが起こりました。
放送終了後にライト スタンドより井上のテーマソングが流れると
阪神ファンも一緒にやってました。
感動しました!井上選手お疲れ様でした
以下、中日スポーツさんの記事を転写します。
また一人、『記録はないが、記憶に残る選手』がいなくなります。
井上「みんなありがとう」 2009年9月28日 紙面から 写真も含む
カズキが泣いた! ファンも泣けた!
今季限りでの引退を表明していた中日・井上一樹外野手(38)の
引退セレモニーが27日の阪神戦(ナゴヤドーム)終了後に行われた。
6番・右翼でフル出場した試合では、4打数無安打。
それでも最後まで井上らしい全力プレーを貫いた。
阪神の矢野、高橋光も飛び入り参加した胴上げでは5度、宙に舞った背番号9。
20年間、ご苦労さん。
数々の感動をありがとう。そして、目指す目標へ、もう一踏ん張り-。
24秒の静寂に、どんな思いが背番号9の脳裏を駆けめぐったのだろう。
井上のスピーチを待つスタンドからの歓声がやんでからしばらく、
大きく息を吸い込んで感謝の言葉を紡いだ。
「いつも、支えて、助けて、そして励ましてくれたみなさんに感謝します」。
青一色の右翼席だけでなく、黄色い左翼席も誰も帰らない。
井上は目からあふれるものをぬぐわず、
右手で帽子を取って右翼席、左翼席、内野席へ順に深く頭を下げた。
6番・右翼。15日の広島戦(マツダ)以来、
今季11度目のスタメン出場。
右腕にはピンクのリストバンドが光っていた。
メーカーが違い微妙に色は異なるが、
リーグ優勝した1999年ごろから着用していた。
名前の「一」を「ピン」と読むことがあることとの掛け合わせで
「ピンキー」の愛称の語源ともなった井上のトレードマークだった。
2004年以降はその愛称を返上し、
リストバンドの着用もやめていたが「原点だと思うから」と、
この特別な日に再び「ピンキー」としてグラウンドに立った。
「本当は、手袋と一緒に取ってスタンドに投げ入れようかとも考えていたんだけどね。オレ、してなかったよなあ」
スピーチの後、グラウンドを一周する井上への温かい歓声に、
感極まって忘れてしまった。
阪神が大量リードする一方的な展開の中でも、
華麗なプレーで「カズキ・コール」を浴びた。
5回表2死一塁、鳥谷の右翼フェンスを直撃しようかという大飛球を
ジャンピングキャッチ。
阪神のビッグイニングを断ち切った。
その直後、5回先頭の打席では
右翼への大飛球を逆に桜井の好捕ではばまれた。
9回の第4打席も二ゴロに倒れ、この日は4打席無安打。
バットで声援に応えることはできなかったが
「阪神もCSがかかっていて、手抜きなしだったから」と、
節目のゲームで真剣勝負ができたことをむしろ喜んでいた。
セレモニーの花束贈呈は阪神はかつての同僚・矢野、中日は井上同様、
今季で引退を決めている立浪から。
「矢野さんには立ち会えてよかったと言われました。それまでうるうる来ていたのに、
その時点で大洪水。もう顔が見られなかった」。
偉大なる先輩2人から受け取り、必死にこらえていた涙があふれ出た。
福留(カブス)からも大きな花束が届いたという。
セレモニーは終わったが竜戦士・井上にはまだ仕事が残っている。
チームの日本一への道は閉ざされていない。
感傷に浸るグラウンドの奥で、落合監督は「まだ選手だ。この先がある」と話した。
セレモニーの最後には、中日ナインだけでなく、
かつてともにプレーした阪神の矢野、高橋光も加わった胴上げで5度宙に舞った。
赤くした目を落ち着かせてから、こう言った。
「CS、日本シリーズがある。一区切りつけさせてもらっただけ。そこまで現役でいられるようにやるしかない」。ユニホームを脱ぐ日は、まだ先にある。 (若原隆宏)
今シーズンを持ちまして、井上一樹は現役を引退します。
ふるさと、鹿児島からこの名古屋に出て来て20年。
球団に、名古屋に、そしてドラゴンズファンに育ててもらいました。
僕は決して強い人間ではありません。
弱い自分をいつも支えて、助けて、
そして励ましてくれた皆さんに感謝します。
しゃべるのは僕の不得意ではないんですが、
すいません、今日は言葉が出ません。
阪神球団の方、そして阪神ファンの方も、
僕のこのセレモニーに、立ち会ってくれてありがとうございます。
そして今まで一緒にプレーしてくれたみんな、ありがとう!!