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自分の自分による自分のためのブログ。
だったけど、もはや自分の備忘録としての映画やドラマの感想しかないです。

極限状態における人質と犯人の交流を描いた『ストックホルム・ケース』

2020年11月29日 23時06分37秒 | 映画


【基本情報】
 原題:Stockholm
製作年:2018年
製作国:カナダ、スウェーデン合作
 配給:トランスフォーマー

【個人的順位】
鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:141/182
 ストーリー:★★★☆☆
キャラクター:★★★☆☆
    映像:★★★☆☆
    音楽:★★★☆☆

【あらすじ】
何をやっても上手くいかない悪党のラース(イーサン・ホーク)は、
自由の国アメリカに逃れるために、
アメリカ人風を装いストックホルムの銀行強盗を実行する。

彼は幼い娘を持つビアンカ(ノオミ・ラパス)を含む3人を人質に取った上に、
犯罪仲間であるグンナー(マーク・ストロング)を刑務所から釈放させることを求め、
警察もそれを許可する。

続いてラースは人質と交換に金と逃走車を要求し、
グンナーと共に逃走する計画だったが、
警察は彼らを銀行の中に封じ込める作戦に打って出る。
現場には報道陣が押し寄せ、事件は長期戦となっていく。

すると、犯人と人質の関係だったラースとビアンカたちの間に、
不思議な共感が芽生え始める。

【感想】
「ストックホルム症候群」という言葉を知っているだろうか。
ウィキペディアによると「誘拐事件や監禁事件などの犯罪被害者についての臨床において、
被害者が生存戦略として犯人との間に心理的なつながりを築くこと」をいう。
簡単に言ってしまえば、
極限状態において被害者と犯人が仲良くなってしまうことを指すのだが、
この言葉が生まれた「ノルマルム広場強盗事件」をベースに作られたのが本作である。

シリアスな話かと思いきや、
ちょっとコメディチックなところもある映画で、
内容としても非常に興味深いのだけれど、
とにかく主人公が優しいのが面白いポイント。

発砲はするものの、ケガ人はなく、人質はほとんど解放し、
残された人に対しても気遣いができる、
いいおじさんとして描かれている。

そんな彼だからこそ、
残された人質たちもだんだん彼を恐れることも憎むこともしなくなり、
どちらかと言えば対応の遅い政府や警察に不満を募らせているのが滑稽だ。
さらに、ビアンカに関して言えば、夫と子供がいる身でありながらも、
ラースと深い仲になってしまうことに驚く。

そうなってしまう理由は、心理学を勉強したこともない身なので、正直わからない。
ラースが特別カッコいいわけでもなければ、
優しいと言っても彼女自身が何かに困っていてそれを助けたわけでもない。
むしろ、この緊迫状況を作り出したのはラース本人であり、
気が張っている中で、実は彼は悪い人ではないっていうのがわかってきたことで、
何か心に隙が生まれたのではないかと思う。

普段の生活でも、怖いと思っていた人がちょっと優しかったりすると、
メチャクチャいい人に見えることがあるけど、
それに似たような感覚があるのだろうか。

もちろん、生存戦略の一環で犯人に迎合することで生存確率を上げる
という心理状態も当初はあったとは思うけど、
それをベースとして上記のようなことがあると、
通常時では想像もつかない心理変化があるのかもしれない。

吊り橋効果じゃないけど、
犯罪に巻き込まれているドキドキ感を恋愛感情のドキドキと勘違いしてしまう
っていうのもあるのかなとも思うけど。

ただ、「結局、ラースは何のためにここまでやるんだっけ?」
っていう疑問が出てきてしまうのがちょっと気になるところ。
友人であるグンナーを解放する目的もあったのかもしれないけど、
途中からそんな感じも薄れて来るし、動機の部分がわかりづらかったなー。

ちなみに、ストックホルム症候群に似たものでリマ症候群というものがあるけど、
前者は被害者が犯人に好意を抱き、
リマ症候群は犯人が被害者に行為を抱くことを言うようです。

映画「ストックホルム・ケース」公式サイト|11月6日ロードショー

「ストックホルム症候群」の語源となった、スウェーデンの歴史的強盗事件を描くクライム・エンタテインメント! 映画「ストックホルム・ケース」公式...

映画「ストックホルム・ケース」公式サイト

 

学年にひとりはいた"アイツ"の話『佐々木、イン、マイマイン』

2020年11月29日 22時06分02秒 | 映画


【基本情報】
製作年:2020年
製作国:日本
 配給:パルコ

【個人的順位】
鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:96/181
 ストーリー:★★★☆☆
キャラクター:★★★★☆
    映像:★★★☆☆
    音楽:★★★☆☆

【あらすじ】
石井悠二(藤原季節)は、俳優になるために上京したものの、
鳴かず飛ばずの日々を送っていた。
別れた彼女のユキ(萩原みのり)とは同棲生活がいまだに続き、
彼女との終わりも受け入れられない。

そんなある日、高校の同級生・多田(遊屋慎太郎)と再会した悠二は、
高校時代に絶対的な存在だった"佐々木"との日々を思い起こす。

常に周りを巻き込みながら、爆発的な生命力で周囲を魅了していく佐々木。
だが、佐々木の身に降りかかる"ある出来事"をきっかけに、
保たれていた友情がしだいに崩れていく。

そして現在。
後輩に誘われ、ある舞台に出演することになった悠二だったが、
稽古が進むにつれ、舞台の内容が過去と現在とにリンクし始め、加速していく。

そんな矢先、数年ぶりに佐々木から着信が入る。
悠二の脳内に鳴り響いたのは、「佐々木コール」だった。

【感想】
「若いなー」って思ったのが第一印象で、
そのあと「すごいなー」って思った映画。

佐々木はとにかく勢いだけが取り柄の人物だ。
まわりに乗せられるとすぐ服を脱ぎ、全裸になる。
男子校かと思いきや、共学でだ。

でも、別に不良というわけでもないし、
いじめられているわけでもない。
そういうキャラなのだ。
常に明るく、バカをやってまわりを笑わせる。
学年にひとりはいるようなやつである。

幸か不幸か、僕の学生時代は特殊な環境もあってか、
さすがに全裸になるやつはいなかったけど、
「ポジション的にアイツかな?」みたいな人はいた。
だから、程度の差こそあれ、誰でも思い当たる人はいるという点で、
佐々木はある意味最大公約数的なキャラと言えるのかもしれない。

そして、そこがこの映画のすごいと思ったところ。
この佐々木という人物は実在するらしい。
実際もああいう人なのかはわからないけれど、
下手したら内輪ネタで終わってしまう恐れもある。

それを、佐々木をまったく知らない自分が観ても、
「こういうやついるなー」という共感から始まり、
彼の有り余るエネルギーに圧倒される。

そうやって彼のキャラクターが定着するとしめたもので、
佐々木の見せるちょっと真面目な顔や、彼に降りかかる事件が、
それだけでギャップに映り、より佐々木というキャラを魅力的にさせる。

多分、もっと詰め込みたいエピソードはいっぱいあったんだろうなって感じる。
あそこまでエネルギッシュなキャラなら、他にもやんちゃしているだろう。

そんな彼と対照的に描かれている悠二。
彼はどちらかと言えばクールで、あまり自分の感情を表に出さないタイプ。
なのに、感情を表に出す仕事である役者をやっているというのもまた面白いんだけど。

普段の友達付き合いは、大体似たタイプの人とつるむことが多いけど、
こういう映画とかになると対照的なキャラがいっしょにいることが多いよね。

今回もそのパターンではあるのだけど、
佐々木という強烈なキャラを描きつつ、
彼の存在によって自分の人生を見つめ直す悠二の姿は、
多くの人に共感されやすいんじゃないかなと思った。

ただの青春映画で終わらず、過去に比重が置かれつつも、
未来につなげようとしたストーリー展開はよかったな。

あと、藤原季節って若い頃の安藤政信をちょっと彷彿とさせる。

映画『佐々木、イン、マイマイン』公式サイト

映画『佐々木、イン、マイマイン』公式サイト。2020年11月27日(金)より全国公開

 

ただの"世にも奇妙な物語"になってしまっていた『ばるぼら』

2020年11月27日 21時50分50秒 | 映画


【基本情報】
製作年:2020年
製作国:日本
 配給:松竹

【個人的順位】
鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:140/180
 ストーリー:★★★☆☆
キャラクター:★★★☆☆
    映像:★★★☆☆
    音楽:★★★☆☆

【あらすじ】
ある日、作家の美倉洋介(稲垣吾郎)は
新宿駅の片隅でホームレスのような酔払った少女
ばるぼら(二階堂ふみ)に出会い、思わず家に連れて帰る。

大酒飲みでだらしないばるぼらに、
美倉はなぜか奇妙な魅力を感じて追い出すことができない。
彼女を手元に置いておくと不思議と美倉の手は動きだし、
新たな小説を創造する意欲がわき起こるのだ。
彼女はあたかも、芸術家を守るミューズのようだった。

その一方で、異常性欲に悩まされる美倉は、
あらゆる場面で幻想に惑わされていた。
ばるぼらは、そんな幻想から美倉を救い出す。
魔法にかかったように混乱する美倉。
その美倉を翻弄するばるぼら。
いつしか美倉はばるぼらなくては生きていけないようになっていた。

ばるぼらは現実の女なのか、美倉の幻なのか。
狂気が生み出す迷宮のような世界に美倉は堕ちてゆくのだった。

【感想】
手塚治虫先生の漫画が原作。
2巻しかなかったから漫画を読んでからこの映画を観たのだけど、、、
うーん。。。

キャラクターはかなりハマってたんだよね。
二階堂ふみはばるぼらにピッタリだったし、
渡辺えりのムシューモシュネーとかまんまだった。
美倉は稲垣吾郎よりも合ってる人いそうな気はしたけど(笑)
てか、日本人が黒いサングラスかけると、
大体X JAPANのToshIか佐村河内にしか見えないっていうwww

問題は物語の方。
もともとは、あらすじにも書いた通り、
ばるぼらという不思議な少女を側に置いておくことで、
創作意欲がわいて、やがて彼女なしでは生きられなくなる美倉の転落ストーリーを、
いくつかのエピソードを通じて彼の心理変化を楽しむものだった。

ところが、映画にすると2時間という短い枠に収めるから、
どうしても省かれてしまう部分が出てきちゃうんだよね。
それは仕方ないことなのだけど、
原作の持つばるぼら自身の現実なのか幻想なのかあやふやな存在感や、
それに翻弄されてボロボロになっていく美倉の心理描写が失われているように感じた。

原作2巻分をうまくまとめきれたのは見事だと思うけど、
映画だとただの"世にも奇妙な物語"にしかなっていなくて、
うまく世界観が伝わって来なかったなー。

原作では、ばるぼらは魔女なんじゃないかっていう疑惑の下、
魔女に関する歴史や考察がきちんと書かれてあって、
彼女に対する畏怖みたいなのものを感じ取れたんだけど、
映画だとそういうのはなく、
「結局彼女は何だったんだ?」で終わってしまったのが残念。
まあ、魔女のくだりを入れたら2時間じゃ終わらないけど(笑)

なので、これは漫画読まないとよくわからない映画だけど、
個人的にはその漫画の方を強く推したい。
ちょっとテキスト多めの内容だけど、時事性のない物語で、
今読んでも楽しめる。
むしろ、この歳になったからこそ楽しめるかもしれない。

と、同時に手塚治虫のすごさを痛感するんだよ。

僕は手塚治虫の世代ではなかったので、
父親が持っていた漫画をつまみ読みしたぐらいで、
実は最初から最後まで全部読んだ作品はない。

しかし、いくつか読んできた上でこの漫画を読むと、
もう"漫画の神様"ここに極まれりだなと感じる。

『ばるぼら』は作家の人生を描いているから、
文学作品から引用したセリフも多く、
これを作る上ではその知識も必要となるだろう。
でも、手塚治虫の描いた漫画を思い返してみるとさ、
扱うジャンルの広さに驚くよね。

『鉄腕アトム』でSFを描き、『ブラック・ジャック』で医療モノ、
『ジャングル大帝』で動物モノ、『三つ目がとおる』で冒険モノ、
『ルードウィヒ・B』で音楽モノを描いているのだから。

ひとりでこんなにたくさんの作品を描いて、
名作として後世に残せるってすごすぎやしないかい?
今の漫画家でそんな人いるのだろうか。。。

彼は亡くなる直前まで、昏睡と覚醒を繰り返しながら鉛筆を持って、
「頼むから仕事をさせてくれ」と、
漫画を描き続けていたというエピソードを知ったとき、
もう神様どころじゃない、漫画という概念そのものなんじゃないかと思った。

手塚治虫作品は今後時間をかけてすべて制覇したい。

映画『ばるぼら』公式サイト

稲垣吾郎×二階堂ふみ 監督:手塚眞 原作:手塚治虫 撮影監督:クリストファー・ドイル。数々の海外映画祭で好評、ついに日本に凱旋!!狂気の果て...

映画『ばるぼら』公式サイト

 

映画館で焼肉が食べられる『フード・ラック!食運』

2020年11月27日 11時22分33秒 | 映画


【基本情報】
製作年:2020年
製作国:日本
 配給:松竹

【個人的順位】
鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:37/179
 ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★☆☆
    映像:★★★★★★★★★★
    音楽:★★★☆☆

【あらすじ】
下町に店を構える人気焼肉店「根岸苑」を切り盛りする安江(りょう)。
ひとり息子の良人は、母の手料理を食べることが毎日の楽しみだったが、
ある事件がきっかけで根岸苑は閉店し、成長した良人も家を飛び出してしまう。

18年後、うだつがあがらないフリーライターとして働く良人(EXILE NAOTO)は、
ある日、編集者の竹中静香(土屋太鳳)と共に"本物の焼肉店"だけを集めた
新しいグルメ情報サイトの立ち上げを任されることに。

しかし、そんな良人のもとに、家を飛び出して以来、
疎遠になっていた母が倒れたとの報せが入る。

病床の安江に会う覚悟が出来ないまま、
取材で訪れた名店の先々で懐かしい「根岸苑」の味と出逢い、
"食"を堪能し、"人"との繋がりの中で母の想いを知り、
良人の中で変化が起きていく。

"食運"に導かれた良人が最後に起こした奇跡とは。

【感想】
まさか映画館で焼肉が食べられるとは思わなかった。
そう、これはもはや映画ではない。
焼肉なんだ。

大スクリーンに映し出される
上質なタン、ハラミ、ミスジ、サーロイン、ホルモンの数々。
さすが寺門ジモンが監督だけあって、
焼肉をおいしく美しく見せる手腕が神がかっていた。
鮮やかな赤身と白く輝くサシのバランスが整ったお肉たちが、
ロースターの上で焼かれてジューシーさを増していく過程を観ていると、
ここが映画館であることを忘れるね(笑)

それをキャストがお口に放り込むじゃない。
こっちにも食感が伝わってくるんだよ。
あの厚切りのタンはきっとこういう柔らかさだろうとか、
あの薄切りサーロインはこうやって舌の上でとろけるのだろうとか。
もうね、僕も食べてたわ。いっしょに。

しかも、EXILE NAOTOがまたうまそうに食べるから
余計に食欲がそそられるんだけどさ、
土屋太鳳の焼肉食べてるときの顔が悶絶するぐらいかわいくて、
今まで観た中で一番のかわいさだった。

もう画だけで見れば、焼肉が主役で、
焼肉によって人間が生かされていることに疑いの余地はないのだけど、
別にこれ食べ歩き映画じゃないからねw
ストーリーとしては、とある家族の絆を描いた感動系で、普通に泣けるから。。。
まあ、変なところで字幕が入るのは謎だったけどw

世の中、映画が超絶好きな人はたくさんいるだろう。
焼肉が超絶好きな人もたくさんいるだろう。
でも、その2つを同じぐらい超絶好きな人となると意外と減るんじゃなかろうか。
まさに、映画と焼肉の両方が超絶好きな僕のために作られたような、
こんなドンピシャ映画はそうそうない気がする。
逆に、こういうのもアリなんだなっていう気づきにもなった。

なお、焼肉が好きな人ならロケ地がすぐにわかる。
スタミナ苑、焼肉ジャンボ(白金店)、D-29、静龍苑などなど。

とにかく腹が減りまくる最高の焼肉エンターテインメントだった。

フード・ラック!食運 - 公式サイト|2020年11月20日(金)-松竹

食通の最高峰、寺門ジモンが初監督!「本当の焼肉映画を描きたい!」。実生活でも肉好きを公言するEXILE NAOTOと土屋太鳳が初共演!食べる...

フード・ラック!食運 - 公式サイト|2020年11月20日(金)-松竹

 

ジブリが織り成すジャンプ漫画のような『羅小黒戦記~ぼくが選ぶ未来~』

2020年11月26日 00時26分54秒 | 映画


【基本情報】
 原題:罗小黑战记 The Legend of Hei
製作年:2019年
製作国:中国
 配給:アニプレックス、チームジョイ

【個人的順位】
鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:19/178
 ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★★☆
    映像:★★★★☆
    音楽:★★★☆☆

【あらすじ】
人間たちの自然破壊により、
多くの妖精たちが居場所を失っていた。
黒ネコの妖精シャオヘイもそのひとり。
そこに手を差し伸べたのが、同じ妖精のフーシーだった。

フーシーはシャオヘイを仲間に加え、
住処である人里離れた島へと案内する。
その島に、人間でありながら妖精とも互角に戦える
最強の執行人ムゲンが現れる。

戦いの中、シャオヘイはムゲンに捕まってしまうが、
なんとか逃れたフーシーたちはシャオヘイの奪還を誓うと共に、
「ある計画」を始める。

そして、ムゲンはシャオヘイを人間と妖精が共存する
"会館"と呼ばれるところに連れて行こうとする。

シャオヘイは新たな居場所を見つけることができるのか。
また、人間と妖精の未来はどうなっていくのか。

【感想】
いやー、まさかこんなにハマるとは思わなかった。
本当にね、こうやって期待していなかった映画がメチャクチャ面白かったりするから、
映画ってやめられないんだよなー。

厳密には、この映画は2019年9月20日に日本でも公開されていたのだけど、
ごく一部の映画館だったらしくて、僕は知らなかった。。。
今回、改めて吹替版として全国公開されたので、
2020年公開映画として僕は扱うことにする。

さて、この作品、絵が好きじゃなかったから最初は観るつもりなかったんだけど、
妹に薦められて観たらすごくよくできてて。

妖精のために人間を切ろうとするフーシー。
人間と妖精の共生を願うムゲン。
お互いの正義の対立の下、
それに巻き込まれるシャオヘイの冒険ストーリーは、
オーソドックスでありながらも、
結末がどうなるかを期待させる面白さがある。

テンポのいい進行も観やすいポイントだけど、
やっぱりバトルシーンがすごくかっこいいからどんどん引き込まれるんだわ。
今年観た映画の中で一番スピード感があったよ。
『fate/stay night』を超えるよ、あのスピードは。

あと、今まで中国のアニメを観たことがないから何とも言えないけど、
この作品に関してはものすごく日本のアニメの影響を受けていると思う。

森のシーンなんかは『もののけ姫』を彷彿とさせるし、
全体的にジブリっぽいタッチの印象。
で、獣人のキャラクターは『バケモノの子』を思わせるし、
バトルで使われる術は『NARUTO』っぽい。
Filmarksで「ジブリのドラゴンボール」って書いてあるの観たけど、
「うん、わかるwww」と。
だから、日本人には親しみやすいと思う。

ただ、Flashで作られているからかわからないけど、
絵自体は日本のアニメの方が細かくてリアルかなって感じた。
バトルもすごいハイスピードなんだけど、
砕け散るコンクリートや建造物などの重厚感があまり感じられなかったように思う。
なんか、軽そうに見えたwww

でも、普通に面白かったし、
映画単体で観たら『鬼滅の刃』よりもハマる人いそう。
しかも、声優も豪華でね。
鬼滅の人多いんだよ。
甘露寺さんに、冨岡さんに、悲鳴嶼さんに、鱗滝さんに、伊之助。
その人たちの声を聞くのも楽しみのひとつかな。

映画 『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来』 公式サイト

「ロシャオヘイセンキ」日本語吹替版制作決定 11月7日(土)より全国公開

 

シンプルなメッセージなのにとてもわかりづらかった『ホモ・サピエンスの涙』

2020年11月23日 21時35分52秒 | 映画


【基本情報】
 原題:Om det oändliga
 英題:About Endlessness
製作年:2019年
製作国:スウェーデン、ドイツ、ノルウェー合作
 配給:ビターズ・エンド

【個人的順位】
鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:176/177
 ストーリー:★☆☆☆☆
キャラクター:★☆☆☆☆
    映像:★★☆☆☆
    音楽:★★☆☆☆

【あらすじ】
時代も年齢も異なる人々が織りなす悲喜劇。
構図・色彩・美術と細部まで計算し尽くし、
全33シーンすべてワンカットで撮影された。

この世に絶望し、信じるものを失った牧師。
戦禍に見舞われた街を上空から眺めるカップル。
悲しみは永遠のように感じられるが、長くは続かない。

これから愛に出会う青年。
陽気な音楽にあわせて踊るティーンエイジャー。
幸せはほんの一瞬でも、永遠に心に残り続ける。

人類には愛がある、希望がある。
だから、悲劇に負けずに生きていける。

【感想】
ポスターにつられて観たのだけれど、こんなものでも映画になるのか、、、
と思った映画(いやだって、ポスターだけだとアクション感あるしさw)。
シュールといえばシュールなんだろうけど、
それ以前に僕はそもそも何が面白いのか判断できなかった。

ストーリーはない。
全部で33シーンあるものの、各シーンのつながりは基本皆無
(たまに前のシーンの続きみたいなものもあるけど)。
信仰心を失った牧師、考え事をして客に注いでいたワインをこぼすウェイター、
音楽に合わせて踊りだす3人の女性、これから処刑される男性、
それぞれの人たちを1分~5分ぐらい流すのみ。

字幕はこうだ。
「ある男がいた。彼は信仰心を失った牧師だ」
で、その牧師が信仰心を失ったことを医師に相談しているという。
そんな起承転結も何もない状況がひたすら繰り返される。

それも定点カメラで。
ワンシーンワンカット。

言ってしまえば、世の中にはいろんな人がいる。
辛い現実を過ごしている人もいれば、幸せそうな人もいる。
悲劇は長く続かないし、喜劇ばかりの世界でもない。
ある意味、シンプルなメッセージとも受け取れる。

邦題はだいぶ変わってしまっているけど、原題を直訳すれば『無限について』。
(邦題考えた人、逆にすごいわw)

監督は、はるか昔から人類に影響を与えていた絵画に着目し、
それが「人間は年齢や時代を超えて皆似ている存在なのだということを教えてくれます」と説く。
タイトルにある"無限"とは、
人間の存在についての"果てしなさ"を示しているのだという。

うーん、なるほど?
ちょっとよくわからないな?

かなり思想的な映画なので、僕は幸い平気だったけど、
人によっては確実に寝ると思う(笑)

映画「ホモ・サピエンスの涙」オフィシャルサイト

映画「ホモ・サピエンスの涙」オフィシャルサイト

 

フュージョン料理でみんなを幸せにしようとした12歳の少年の健気さが光る『エイブのキッチンストーリー』

2020年11月22日 15時48分01秒 | 映画


【基本情報】
 原題:Abe
製作年:2019年
製作国:アメリカ、ブラジル合作
 配給:ポニーキャニオン

【個人的順位】
鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:36/176
 ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★★☆
    映像:★★★☆☆
    音楽:★★★☆☆

【あらすじ】
ブルックリン生まれのエイブ(ノア・シュナップ)は、
イスラエル系の母とパレスチナ系の父を持つ。
文化や宗教の違いから対立する家族に悩まされる中、
料理を作ることが唯一の心の拠りどころだった。

ある日、世界各地の味を掛け合わせて「フュージョン料理」を作る
ブラジル人シェフのチコ(セウ・ジョルジ)と出会う。
フュージョン料理を自身の複雑な背景と重ね合わせたエイブは、
自分にしか作れない料理で家族を一つにしようと決意する。

果たしてエイブは、家族の絆を取り戻すことができるのか。

【感想】
これすごく面白かった!
料理をテーマにした映画ってけっこうポピュラーだと思うけど、
この映画は家族背景が複雑なのがミソ。
だって、母がイスラエル系で、父がパレスチナ系という
歴史的に見ても対立し合う二つがひとつの家族になってるからね。

単にケンカの仲裁を料理を通じて行うのではなく、
それぞれの文化や故郷に配慮した料理をミックスさせて、
みんなが幸せになればいいと願う12歳の少年の健気さが感動的なんだよ。

料理も多国籍だから見た目も華やかですごくおいしそうだったし、
これは日本からは生まれない映画だろうなーって思った。

しかも、料理の様子をSNSにアップするっていう現代っぽさも取り入れながら、
テンポよく進んでいくからすごく観やすい。
空腹時に観るとある意味辛いおいしそうな料理の数々と、
家族の感動物語がうまくミックスされたとてもいい映画だった。

あと、これは海外ならではなのかなって思ったのがエイブの扱い。
12歳のエイブが大人たちに交じって料理の修行をするシーンがあるんだけど、
ほとんどアルバイトみたいな感じなんだよ。
つまり、子供が大人といっしょに働いてるってこと。
この映画だと別に違和感なく観れるんだけど、
果たして日本で同じようなシーンあるかなって。

日本だと子役って本当に子供みたいな役が多いイメージけど、
この映画を観る限りでは、
向こうではもはや子供は「小さな大人」と認識されているような気がした。

もちろん、エイブに料理の素質が備わっていることが前提ではあったけど、
あんまり日本の映画やドラマでは観ないかなーって。
(とはいえ、ノア・シュナップ自身は実年齢16歳だから、そんなに子供にも見えないんだけどw)

映画『エイブのキッチンストーリー』公式サイト

映画『エイブのキッチンストーリー』公式サイト

 

"好き"より前に出てきてしまう感情に人間らしさを感じる『詩人の恋』

2020年11月22日 15時33分24秒 | 映画


【基本情報】
 原題:시인의 사랑
 英題:The Poet and the Boy
製作年:2017年
製作国:韓国
 配給:エスパース・サロウ

【個人的順位】
鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:127/175
 ストーリー:★★★☆☆
キャラクター:★★★☆☆
    映像:★★★☆☆
    音楽:★★★☆☆

【あらすじ】
自然豊かな済州島で生まれ育った詩人のテッキ(ヤン・イクチュン)は、
ここ数年スランプだ。
稼げない彼を支える妻ガンスン(チョン・ヘジン)が妊活を始めたことから、
テッキの人生に波が立ち始める。

乏精子症と診断され、
詩も浮かばず思い悩む彼を救ったのは、
港に開店したドーナツ屋で働く美青年セユン(チョン・ガラム)だった。

もっと彼を知りたい。
30代後半にして初めて芽生えた“守ってあげたい”という感情を隠しながら、
テッキは孤独を抱えるセユンと心を通わせ、
彼の人生は思わぬ方向へと進んでいく。

【感想】
今年多いな、ボーイズラブ。
この作品もおっさんと美少年のボーイズラブ
と言ってしまえばそれまでだけど、
純粋な恋愛映画というよりは、
恋愛よりも先に別の感情が出てきてしまうという、
なかなかに複雑な想いが交錯する内容だった。

テッキは初めての恋愛らしい恋愛の相手が
男だということに戸惑いを隠せず、
しかも最初は美少年がゆえの一目惚れみたいなものだから、
本当に好きなのかどうかってのがわからない状態だったんだよね。

歳も大きく離れているし、
好きというより守ってあげたいという
親心みたいなものも混じっていたんじゃないかと思う。

一方、セユンは父の介護もありお金に困っていたから、
テッキがいろいろ支援してくれることに甘えていた部分がある。
途中から、テッキの気持ちには気づいていたけど、
彼が結婚しているからこそ、一歩踏み出せず、
一定の距離感を保っていた。

ここがこの映画の印象的なところで、
二人が恋愛的なニュアンスで身体的に触れ合うところは
多分なかったんじゃないかなー。
それは、テッキが既婚者だったってのもあるけど、
やっぱり「好き」という感情の中に、
テッキは親心みたいなものが、
セユンは甘えみたいなものがあったからだと感じた。

とはいえ、お互いの気持ちはだんだん大きくなっていくから、
抑えきれない想いが爆発してしまうシーンもあるのだけど、
ロマンチックでドラマチックな二人だけの恋愛というよりも、
ポエム寄りの人間愛に近い印象の映画だったかな。
なので、観る人によっては少し物足りないと感じるかも(僕もそうだけどw)。

ちなみに、冒頭は『朝が来る』と似ていて、
子供を作ろうとしたら、
夫の精子に異常があることが発覚するという始まり。
ただ、同じ流れなのに、
妻のキャラクターやBGMの使い方によって、
ややコメディ感がある。
作り方で印象を180度変えることができるいい例だと思った。

映画『詩人の恋』公式サイト

映画『詩人の恋』公式サイト|11月13日(金)、新宿武蔵野館ほか全国順次公開|『息もできない』のヤン・イクチュン主演!売れない詩人が初めて知...

映画『詩人の恋』公式サイト

 

人生の選び方を教えてくれる『水上のフライト』

2020年11月21日 17時51分10秒 | 映画


【基本情報】
製作年:2020年
製作国:日本
 配給:KADOKAWA

【個人的順位】
鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:89/174
 ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★☆☆
    映像:★★★☆☆
    音楽:★★★☆☆

【あらすじ】
自分の実力に絶対の自信を持つ高慢な藤堂遥(中条あやみ)は、
走り高跳びで世界を目指し、
将来有望なスポーツ選手として活躍していた。

しかしある日、不慮の事故に遭い、
一命はとりとめたものの脊髄を損傷し、
二度と歩くことができなくなってしまう。
将来の夢を絶たれた遥は、
心を閉ざして自暴自棄になるが、
周囲の人々に支えられ、
パラカヌーという新たな夢を見つける。

きらめく水面を背景に、
母の愛、淡い恋心、恩師との約束、
そして、大切な人の想いを乗せて、
どん底から道を切り開いていく。

【感想】
邦画でこういうのどうかなーって思っていたんだけど、
想像以上によかった。
話自体はフィクションだけど、
脚本家の土橋章宏さんが、
実在するパラカヌー日本代表選手との交流を通じて作り上げたものだ。

物語冒頭で事故に遭ってどん底に陥るというスタートから、
パラカヌーの道でがんばろうとする過程は、
単なる青春モノやスポ根モノとは違い、
人生において道はひとつじゃないということを示してくれる。
行きたかったところには行けないかもしれないけど、
行くべきところにはたどり着けるっていう。

もともと走り高跳びで世界を目指せるレベルだったがゆえに高慢だった遥が、
事故に遭ったことでいろんな人の支えを得てパラカヌーに道を見出せたことで、
まわりに感謝するようになるっていう性格の変化も印象的だ。

内容的にはオーソドックスではあるけれど、
変に恋愛を前面に出さず、スポーツをメインにした話になっているのが、
主人公の気持ちや環境の変化が目に見えてわかりやすいし、
自分も個人競技をやっているからか親近感を感じた。

ホント、思ったよりよかったです、これ。

映画「水上のフライト」オフィシャルサイト

映画「水上のフライト」オフィシャルサイト

 

雰囲気系の映画だけど、物語の軸はポピュラーだった『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』

2020年11月15日 22時00分31秒 | 映画


【基本情報】
 原題:The Last Black Man in San Francisco
製作年:2019年
製作国:アメリカ
 配給:ファントム・フィルム

【個人的順位】
鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:161/173
 ストーリー:★★☆☆☆
キャラクター:★★★☆☆
    映像:★★★☆☆
    音楽:★★★☆☆

【あらすじ】
サンフランシスコで生まれ育ったジミー(ジミー・フェイルズ)は、
祖父が建て、かつて家族と暮らした思い出の宿る
ヴィクトリアン様式の美しい家を愛していた。

変わりゆく街の中にあって、
地区の景観とともに観光名所になっていたその家は、
ある日現在の家主が手放すことになり売りに出される。

再びこの家を手に入れたいと願い奔走するジミーは、
叔母に預けていた家具を取り戻し、
今はあまり良い関係にあるとは言えない父を訪ねて思いを語る。

そんなジミーの切実な思いを、
友人モント(ジョナサン・メジャース)は、いつも静かに支えていた。

いまや都市開発・産業発展によって、
"最もお金のかかる街"となったサンフランシスコで、
ジミーは自分の心の拠り所であるこの家を取り戻すことができるのだろうか。

【感想】
感想が難しい(笑)
いや、話はわかるのだけど、完全に"雰囲気寄り"の映画で、
空気感は伝わってくるものの、
個人的には面白いかどうかの判断ができないジャンル。
これを好きな人がいるのはわかるし、面白いと言える気もするけど、
でもなんかちょっとわからないなーっていう(笑)

これ、PLAN B(ブラピの映画会社ね)とA24が作った映画で、
過去には『ムーンライト』があるんだけど、それも同じ印象だったんだよなー。
まあ、もともと真面目なLGBT系の映画は、
僕は面白いかどうかの判断ができないんだけど。
『リリーのすべて』然り、『キャロル』然り。

で、今作は、ジェントリフィケーションによって変わっていく
サンフランシスコの街並みの中で、自分が愛する家を守る、、、
というより固執する話。

とにかく、主人公であるジミーの家に対する愛がすごすぎる。
「いや、それ不法侵入だろ」って勢いで、かつての家に居座っちゃうから。

そんなジミーに付き合って、彼を支え、
時には彼の間違いをきちんと指摘する親友モント。
こういうただノリが合うだけじゃない、
メリハリのある友人関係ってのはいいよね。

この映画を観ている時点では、内容に集中してるから、
あんまり他のこと考えられなかったけど、
ちょっと落ち着いて思い返してみると、
時代が移り変わっていく中で"変わらないもの"に固執する話
っていうのは意外とポピュラーなんじゃね?って思った。

例えば、まわりが大人になっていく中で、
相変わらず子供のままでいたいと願う話とか。
土地の再開発で老舗がどんどん立ち退いていく中で、
先祖代々のお店を守る話とか。
そう考えると、ものすごい雰囲気系映画ではあるけど、
内容自体はシンプルとも言える。

だから、本当はもっと誰が観てもわかりやすい形にできると思うけど、
かなりアートっぽくなっちゃってるかな(笑)
あと、サンフランシスコに行ったことないから
土地勘がない分思い入れもないってのもあるけど。
多分、アメリカ人やサンフランシスコにゆかりのある人なら、
もっと共感できるんだと思う。
これが日本の街並みだったら、僕ももう少しわかったかもしれない(笑)

しかし、時代は現代のはずなのに、
街並みがレトロで哀愁漂う感じに見えるのは、
この映画の魅力のひとつかなと思う。
てっきり、監督はけっこう年上の人なのかなと思いきや、
まだ29歳という若さ!
感性が素晴らしい。

ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ/The Last Black Man in San Francisco

映画『 ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ 』|2020年10月9日(金)全国ロードショー

ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ/The Last Black Man in San Francisco

 

異例な映画化の早さ『THE CAVE ザ・ケイブ サッカー少年救出までの18日間』

2020年11月15日 19時34分06秒 | 映画


【基本情報】
 原題:Nang Non
 英題:The Cave
製作年:2019年
製作国:タイ、アイルランド合作
 配給:コムストック・グループ、WOWOW

【個人的順位】
鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:90/172
 ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★☆☆
    映像:★★★☆☆
    音楽:★★★☆☆

【あらすじ】
2018年6月23日、練習を終えたサッカーチームの少年たちは
チームメイトの誕生日を祝うため、
チェンライのタムルアン洞窟に入る。
しかし、豪雨で洞窟内の水位が急激に上昇し、
身動きがとれなくなってしまう。

タイ国内外から集まった軍や経験豊富なダイバーたちが捜索にあたるが、
洞窟入口から4キロも離れた地点で少年たちを発見したのは、
遭難から9日も経ってのことだった。
彼らは洞窟の天井から滴る水を飲んで空腹をしのいでいたのだ。

一刻を争う救助が求められたが、洞窟内の経路は複雑かつ、
数か所は水没したままで、それは困難を極めていた。
次に雨が降る前に救出しなければ、少年の命は助からない瀬戸際で、
ダイバーたちによる決死の救出劇が始まった。

【感想】
実話ベースの映画としては、今年観た中だと、
一番直近の出来事を扱っているのではなかろうか。
日本でもニュースでやっていたから覚えている人もいるかもしれないけど、
2018年にタイで起きたタムルアン洞窟の遭難事故である。

1年(本国公開は2019年)で映画化してしまうのは異例の早さだと思うけど、
ドキュメンタリーに近い映画だった。
しかも、出演者の何人かは実際に救助活動に当たった人たちなので、
演技で言えば素人。
ただ、ちょっと不謹慎かもしれないけど、
緊急を要する救助活動ということもあってか、
緊迫感が強くて集中して観れるのと、
事故の全容を知る上では貴重な映画かなって。

正直、地元でも危険で有名だった洞窟に入ってしまったのは
不注意なのかなとしか言えないけれど、
全員無事に生還できたのは本当によかった。
運び出す際、途中でパニックが起こらないよう、
あらかじめ薬品を注射して眠らせていたっていうのは
ちょっとびっくりだったけど。

この映画を観て思ったのが、普通のダイビングと洞窟のダイビングは、
事情がかなり違うのかなということ。
洞窟ダイビングの専門家を海外から呼んでいたし、
酸素ボンベも2つ持っていくことが定石らしいけど、
それほどまでに活動量が多いのかなって。
現に、救助隊の一人は酸素の残量がなくなって亡くなってしまったからね。。。

あと、子供たちを助けたい一心で強力な排水ポンプを持ってきた民間人が、
許可がなくて現場に入れないっていうのはもどかしかった。
一刻を争う状況においてもそうなってしまうのは、
まあ仕方ないことではあるけど、
日本じゃなくてもそういうのは厳しいんだなと思った。

そして、タイの信仰心の強さ。
ただ「どうか無事に帰ってきますように」と個人が祈るレベルではなく、
僧侶がやってきて、お供え物をして、洞窟の女神に祈るってのは、
実際の救助活動において有益だったかは甚だ疑問だけれど、
そういう文化なんだろう。

ちなみに、ネトフリでも映像化の話が出ているらしい。

映画『THE CAVE(ザ・ケイブ) サッカー少年救出までの18日間』オフィシャルサイト

映画『THE CAVE(ザ・ケイブ) サッカー少年救出までの18日間』オフィシャルサイト

 

ありふれた家族の立ち回りをここまでうまく描くという見事な脚本だった『さくら』

2020年11月14日 16時51分07秒 | 映画


【基本情報】
製作年:2020年
製作国:日本
 配給:松竹

【個人的順位】
鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:106/171
 ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★☆☆
    映像:★★★☆☆
    音楽:★★★☆☆

【あらすじ】
音信不通だった父が2年ぶりに家に帰ってくる。
その知らせを受けた長谷川家の次男・薫(北村匠海)は、
その年の暮れに実家へ向かった。

母のつぼみ(寺島しのぶ)、父の昭夫(永瀬正敏)、妹の美貴(小松菜奈)、
愛犬のサクラとひさびさに再会する。
しかし、兄の一(ハジメ)(吉沢亮)の姿はない。

薫にとって幼い頃から憧れの存在だったハジメは、
2年前のあの日、亡くなった。
そして、ハジメの死をきっかけに家族はバラバラになった。

薫は幼い頃の記憶を回想する。
妹の誕生、サクラとの出会い、引っ越し、初めての恋と失恋。
長谷川家の5人とサクラが過ごしたかけがえのない日々。

やがて、壊れかけた家族をもう一度つなぐ奇跡のような出来事が、
大晦日に訪れようとしていた。

【感想】
次男の視点で描かれる本作は、
何やら彼の日記のような、小説のような、
そんな雰囲気の映画だった。

何か目的があるわけではない。
長谷川家に起こった日常を淡々と描いているだけの内容だ。

ぶっ飛んだ設定もなければ、コミカルなキャラクターもおらず、
ドラマチックな展開とは程遠い。
なのに、意外と面白い。
自分が日本人だから、こういう日本のファミリー映画に
親しみがあるっていうのもあるだろう。

でも、それ以上に、結末がどうなるのかわからないことに対する好奇心と、
この家族とそれを取り巻くまわりの関係性から生まれる
大なり小なりの事件の描き方がうまいなと思った。

ハジメとその彼女の出会いや別れ、彼の身に起きる悲劇。
美貴のハジメに対する想いと同性のクラスメイトとの関係。
薫の淡い恋愛事情。
そのどれもが邦画においてはめずらしくないものではあるんだけど、
そらへんにいる普通の家庭の中でもこういうことが起きるんだっていう、
ちょっとした意外性みたいなのが物語に程よい緩急をつけているように感じられた。

こういうありふれた家族をテーマにした"家族モノ"って、
いざ自分で書こうと思ってもすごく難しいんだよ。
ドラマ性がなくてつまらなかったり、変に長くなって間延びしたりして。

しかも、今回は愛犬もいるんだけど、別に犬を軸にしているわけでもないのに、
家族の中にうまく入れ込ませているのも絶妙な脚本力だと思う。

人によっては退屈に感じるかもしれない(いびきかいて寝てる人いたからな。。。)けど、
役者がベテラン勢ばかりでみんな演技がうまいのもあってか、
僕はけっこう楽しめたなー。

特に、小松菜奈が後半からちょっと狂気じみた感じになっていくんだけど、
その闇落ちした雰囲気を出すのがうまいんだよね。
吉沢亮もだんだん演技がうまくなっていってる気がするし。

とある家族のなんてことない日々と、その家族に降りかかる悲劇と、
そこからの立ち直りを綺麗に描けているのは見事だと思える作品だった。

あと、無性に餃子が食べたくなる(笑)

映画『さくら』オフィシャルサイト|11月13日(金)全国公開

映画『さくら』オフィシャルサイト|11月13日(金)全国公開

 

男女関係よりも主人公の哀愁が大きい『ホテルローヤル』

2020年11月14日 16時25分30秒 | 映画


【基本情報】
製作年:2020年
製作国:日本
 配給:ファントム・フィルム

【個人的順位】
鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:166/170
 ストーリー:★★☆☆☆
キャラクター:★★☆☆☆
    映像:★★★☆☆
    音楽:★★★☆☆

【あらすじ】
北海道、釧路湿原を望む高台のラブホテル。
雅代(波瑠)は美大受験に失敗し、
家業であるホテルを手伝うことに。

アダルトグッズ会社の営業、
宮川(松山ケンイチ)への恋心を秘めつつ黙々と仕事をこなす日々。
甲斐性のない父、大吉(安田顕)に代わって半ばあきらめるように継いだホテルには、
「非日常」を求めて様々な人が訪れる。

投稿ヌード写真の撮影をするカップル、
子育てと親の介護に追われる夫婦、
行き場を失った女子高生と妻に裏切られた高校教師。

そんな中、一室で心中事件が起こり、ホテルはマスコミの標的に。
さらに大吉が病に倒れ、雅代はホテルと、
そして「自分の人生」に初めて向き合っていく。

【感想】
個人的にはいまいちパッとしない映画だった(笑)
舞台はラブホテルだけど、エロさは一切ない。

コメディならお客のぶっ飛んだ性癖を垣間見れたり、
お客同士が変に絡みあったりで、爆笑できる気もするけど、
これヒューマンドラマなんだよね。

それぞれ事情がある客が訪れるも、エピソード自体は浅くて、
内容は理解できるけど感情移入するポイントはない。
そして、ラブホテルという場所にも関わらず、男女の情事も少ない。

まあ、それはいいんだけど、
映画の設定からセックスを通じて男女の在り方や愛について考える内容かと思いきや、
たまたま実家がラブホテルを営んでいた雅代の
成り行きの人生を淡々と描いた感じで、けっこう地味(笑)

最後の最後でようやく自分の人生は何だったのかってことに気づくんだけど、
それもラブホテルや男女関係、セックスにほとんどリンクしてないから、
なんか舞台負けしてる印象だったかなー(笑)

アダルトグッズの営業マンである宮川の言った
「男と女は時に体を使って遊ばないといけないと思ってます。僕はそのお手伝いをしています」
ってセリフはいいなと思った(笑)

『ホテルローヤル』公式サイト|2020年11月13日(金)公開

『ホテルローヤル』公式サイト。桜木紫乃の直木賞受賞作が、武正晴監督で待望の映画化。2020年11月13日(金)公開。

 

サスペンスというより人の死について考えさせられる『ドクター・デスの遺産ーBLACK FILEー』

2020年11月13日 22時31分27秒 | 映画


【基本情報】
製作年:2020年
製作国:日本
 配給:ワーナー・ブラザース映画

【個人的順位】
鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:166/169
 ストーリー:★★☆☆☆
キャラクター:★★☆☆☆
    映像:★★★☆☆
    音楽:★★★☆☆

【あらすじ】
「苦しむことなく殺してさしあげます」。
ある闇サイトで依頼を受け、
人を安楽死させる連続殺人犯ドクター・デス。
その人物の存在が明らかになったのは、
「お父さんが殺された」という少年からの通報がきっかけだった。

警視庁捜査一課のNo.1コンビである犬養(綾野剛)と
高千穂(北川景子)は、さっそく捜査を開始。
すると似たような事件が次々と浮上する。

捜査チームのリーダー麻生(石黒賢)をはじめ、
新米刑事の沢田(岡田健史)、室岡(前野朋哉)、青木(青山美郷)
と共に事件の解明を急ぐが、
被害者遺族たちの証言は、どれも犯人を擁護するものばかり。

ドクター・デスは本当に殺人犯といえるのか?
それとも救いの神なのか?
そして、驚愕の事実と更なる悲劇が犬養と高千穂に降りかかる。

【感想】
んー、なんだろう、これは(笑)
サスペンス、、、だったのか、、、?

こういう映画だと、犯人が誰かわからず、
いろんな憶測を立てながら観ていくのが楽しかったりするんだけど、
そういう系ではなかった。

あんまり犯人を隠そうとしていないというか、
それすぐにわかってしまうのでは、、、?っていうw
で、犯人がわかった後の展開も、
ちょっと都合がいいというか釈然としないというか。。。
なんで、犯人は犬飼の娘の居場所がわかったのかっていう謎。

それと、面白いサスペンスだと話に波があって、情報を小出しにして、
パズルのピースが埋まっていく過程が興味をひいて、
最後まで集中できたりするんだけど、
今作はほとんどその波がないんだよね。

けっこう淡々と進んでいって、
犬飼と高千穂が怒号を上げているだけっていう。。。
てか、予告でもあったけど、犬飼が高千穂に腹パンするシーン、、、
女性にあんな腹パンするかな、、、(笑)

だから、サスペンス映画としてはだいぶ微妙な感じだけど、
犯人の"死こそ救済"っていう、
まるで『ファイナルファンタジー』のラスボスがよく口にするような思想について、
どう考えるかっていうのは興味深いところ。

正直、僕は生きる権利もあれば死ぬ権利もあると思っているから、
安楽死そのものについて否定はしない。
回復の見込みがないのに苦しみの中で延命措置を取るぐらいなら、
楽にしてしまった方が患者も家族も救われるっていうのはあるだろう
(その場合、患者がもう自分の意志表示ができない可能性があるから、
 元気なうちに家族で話し合っておくことは大事だと思うけど)。

とはいえ、安楽死を合法化したら、
それに見せかけた殺人や短絡的な考えでの死が横行して問題になるから、
日本ではそうならなそう。
世界的に見ればいくつかの国で合法化されているみたいだけど。

なので、なんか死について考えるきっかけにはなるものの、、、
この映画の持つサスペンスな雰囲気から得られる期待を踏まえると、
個人的には正直微妙でした。

映画じゃなくてスペシャルドラマとかでよかったんじゃないかなー。

あと、小説と差別化するためか、
映画になると変な副題付くこと多いよね(笑)
「BLACK FILE」の意味がわからない。。。

映画『ドクター・デスの遺産―BLACK FILE―』公式サイト。大ヒット上映中!

大ヒット上映中!『ドクター・デスの遺産―BLACK FILE―』公式サイト。綾野剛×北川景子共演!警視庁No.1コンビが【安楽死】を手口にす...

映画『ドクター・デスの遺産―BLACK FILE―』公式サイト。大ヒット上映中!

 

養子を迎えた夫婦と産みの母親それぞれの想いが交錯する『朝が来る』

2020年11月13日 00時00分30秒 | 映画


【基本情報】
製作年:2020年
製作国:日本
 配給:キノフィルムズ

【個人的順位】
鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:39/168
 ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★★☆
    映像:★★★☆☆
    音楽:★★★☆☆

【あらすじ】
一度は子どもを持つことをあきらめた栗原清和(井浦新)と佐都子(永作博美)の夫婦は、
「特別養子縁組」という制度を知り、男の子を迎え入れる。

それから6年、夫婦は朝斗と名付けた息子の成長を見守る幸せな日々を送っていた。
ところが突然、朝斗の産みの母親である片倉ひかり(蒔田彩珠)を名乗る女性から、
「子どもを返してほしいんです。それが駄目ならお金をください」
という電話がかかってくる。

生まれたばかりの朝斗を引き取るときに、
当時14歳だったひかりとは一度だけ会ったが、
生まれた子どもへの手紙を佐都子に託す、心優しい少女だった。
しかし、訪ねて来た若い女には、あの日のひかりの面影は微塵もなかった。

いったい彼女は何者なのか、何が目的なのか。

【感想】
重めのテーマの映画だった。。。
不妊治療を扱った作品は見かけるけど、
今回はその先、すでに自分の子供を持つことが難しくなり、
養子を迎え入れる段階。
しかも、産みの母親から「返して」と言われるっていう。。。

子供を持つことが難しいと判明した夫婦の悲しみと、
血のつながりはなくても自分たちの元に
新しく子供がやってきたときの幸せの両方を描きつつ、
産みの母親の登場によって不安と疑惑の渦に突き落とす
対照的な展開が面白い。

そして、今作は産みの母親であるひかりが
子供を手放す経緯もしっかり描かれていて、
彼女の抱える不安や苛立ち、葛藤などもわかるから、
夫妻とひかりの両方の立場を見比べることができるのも
見ごたえがあるポイントかと。
まあ、ひかりについては、
そのまんま『14才の母』かなとも思ったけど。

観ている人の立場によっては、
かなりセンシティブで感情移入してしまう内容だけれど、
普通に映画としても濃厚なストーリーで楽しめた。
特に、蒔田彩珠の演技が素晴らしい。

しかし、身のまわりで養子を取っている人がいないのでわからないけど、
今回の斡旋業者への登録条件として
「夫婦の片方は仕事を辞める」っていうのがあって、
なかなか厳しいなと感じたけど、そんなものなのだろうか。

映画『朝が来る』公式サイト | 絶賛公開中!

辻村深月 [原作] × 河瀨直美 [監督] 感動ミステリー映画化。キャスト、永作博美、井浦新、蒔田彩珠、浅田美代子。絶賛公開中!

映画『朝が来る』公式サイト | 絶賛公開中!