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自分の自分による自分のためのブログ。
だったけど、もはや自分の備忘録としての映画やドラマの感想しかないです。

極限状態における人質と犯人の交流を描いた『ストックホルム・ケース』

2020年11月29日 23時06分37秒 | 映画


【基本情報】
 原題:Stockholm
製作年:2018年
製作国:カナダ、スウェーデン合作
 配給:トランスフォーマー

【個人的順位】
鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:141/182
 ストーリー:★★★☆☆
キャラクター:★★★☆☆
    映像:★★★☆☆
    音楽:★★★☆☆

【あらすじ】
何をやっても上手くいかない悪党のラース(イーサン・ホーク)は、
自由の国アメリカに逃れるために、
アメリカ人風を装いストックホルムの銀行強盗を実行する。

彼は幼い娘を持つビアンカ(ノオミ・ラパス)を含む3人を人質に取った上に、
犯罪仲間であるグンナー(マーク・ストロング)を刑務所から釈放させることを求め、
警察もそれを許可する。

続いてラースは人質と交換に金と逃走車を要求し、
グンナーと共に逃走する計画だったが、
警察は彼らを銀行の中に封じ込める作戦に打って出る。
現場には報道陣が押し寄せ、事件は長期戦となっていく。

すると、犯人と人質の関係だったラースとビアンカたちの間に、
不思議な共感が芽生え始める。

【感想】
「ストックホルム症候群」という言葉を知っているだろうか。
ウィキペディアによると「誘拐事件や監禁事件などの犯罪被害者についての臨床において、
被害者が生存戦略として犯人との間に心理的なつながりを築くこと」をいう。
簡単に言ってしまえば、
極限状態において被害者と犯人が仲良くなってしまうことを指すのだが、
この言葉が生まれた「ノルマルム広場強盗事件」をベースに作られたのが本作である。

シリアスな話かと思いきや、
ちょっとコメディチックなところもある映画で、
内容としても非常に興味深いのだけれど、
とにかく主人公が優しいのが面白いポイント。

発砲はするものの、ケガ人はなく、人質はほとんど解放し、
残された人に対しても気遣いができる、
いいおじさんとして描かれている。

そんな彼だからこそ、
残された人質たちもだんだん彼を恐れることも憎むこともしなくなり、
どちらかと言えば対応の遅い政府や警察に不満を募らせているのが滑稽だ。
さらに、ビアンカに関して言えば、夫と子供がいる身でありながらも、
ラースと深い仲になってしまうことに驚く。

そうなってしまう理由は、心理学を勉強したこともない身なので、正直わからない。
ラースが特別カッコいいわけでもなければ、
優しいと言っても彼女自身が何かに困っていてそれを助けたわけでもない。
むしろ、この緊迫状況を作り出したのはラース本人であり、
気が張っている中で、実は彼は悪い人ではないっていうのがわかってきたことで、
何か心に隙が生まれたのではないかと思う。

普段の生活でも、怖いと思っていた人がちょっと優しかったりすると、
メチャクチャいい人に見えることがあるけど、
それに似たような感覚があるのだろうか。

もちろん、生存戦略の一環で犯人に迎合することで生存確率を上げる
という心理状態も当初はあったとは思うけど、
それをベースとして上記のようなことがあると、
通常時では想像もつかない心理変化があるのかもしれない。

吊り橋効果じゃないけど、
犯罪に巻き込まれているドキドキ感を恋愛感情のドキドキと勘違いしてしまう
っていうのもあるのかなとも思うけど。

ただ、「結局、ラースは何のためにここまでやるんだっけ?」
っていう疑問が出てきてしまうのがちょっと気になるところ。
友人であるグンナーを解放する目的もあったのかもしれないけど、
途中からそんな感じも薄れて来るし、動機の部分がわかりづらかったなー。

ちなみに、ストックホルム症候群に似たものでリマ症候群というものがあるけど、
前者は被害者が犯人に好意を抱き、
リマ症候群は犯人が被害者に行為を抱くことを言うようです。

映画「ストックホルム・ケース」公式サイト|11月6日ロードショー

「ストックホルム症候群」の語源となった、スウェーデンの歴史的強盗事件を描くクライム・エンタテインメント! 映画「ストックホルム・ケース」公式...

映画「ストックホルム・ケース」公式サイト

 

学年にひとりはいた"アイツ"の話『佐々木、イン、マイマイン』

2020年11月29日 22時06分02秒 | 映画


【基本情報】
製作年:2020年
製作国:日本
 配給:パルコ

【個人的順位】
鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:96/181
 ストーリー:★★★☆☆
キャラクター:★★★★☆
    映像:★★★☆☆
    音楽:★★★☆☆

【あらすじ】
石井悠二(藤原季節)は、俳優になるために上京したものの、
鳴かず飛ばずの日々を送っていた。
別れた彼女のユキ(萩原みのり)とは同棲生活がいまだに続き、
彼女との終わりも受け入れられない。

そんなある日、高校の同級生・多田(遊屋慎太郎)と再会した悠二は、
高校時代に絶対的な存在だった"佐々木"との日々を思い起こす。

常に周りを巻き込みながら、爆発的な生命力で周囲を魅了していく佐々木。
だが、佐々木の身に降りかかる"ある出来事"をきっかけに、
保たれていた友情がしだいに崩れていく。

そして現在。
後輩に誘われ、ある舞台に出演することになった悠二だったが、
稽古が進むにつれ、舞台の内容が過去と現在とにリンクし始め、加速していく。

そんな矢先、数年ぶりに佐々木から着信が入る。
悠二の脳内に鳴り響いたのは、「佐々木コール」だった。

【感想】
「若いなー」って思ったのが第一印象で、
そのあと「すごいなー」って思った映画。

佐々木はとにかく勢いだけが取り柄の人物だ。
まわりに乗せられるとすぐ服を脱ぎ、全裸になる。
男子校かと思いきや、共学でだ。

でも、別に不良というわけでもないし、
いじめられているわけでもない。
そういうキャラなのだ。
常に明るく、バカをやってまわりを笑わせる。
学年にひとりはいるようなやつである。

幸か不幸か、僕の学生時代は特殊な環境もあってか、
さすがに全裸になるやつはいなかったけど、
「ポジション的にアイツかな?」みたいな人はいた。
だから、程度の差こそあれ、誰でも思い当たる人はいるという点で、
佐々木はある意味最大公約数的なキャラと言えるのかもしれない。

そして、そこがこの映画のすごいと思ったところ。
この佐々木という人物は実在するらしい。
実際もああいう人なのかはわからないけれど、
下手したら内輪ネタで終わってしまう恐れもある。

それを、佐々木をまったく知らない自分が観ても、
「こういうやついるなー」という共感から始まり、
彼の有り余るエネルギーに圧倒される。

そうやって彼のキャラクターが定着するとしめたもので、
佐々木の見せるちょっと真面目な顔や、彼に降りかかる事件が、
それだけでギャップに映り、より佐々木というキャラを魅力的にさせる。

多分、もっと詰め込みたいエピソードはいっぱいあったんだろうなって感じる。
あそこまでエネルギッシュなキャラなら、他にもやんちゃしているだろう。

そんな彼と対照的に描かれている悠二。
彼はどちらかと言えばクールで、あまり自分の感情を表に出さないタイプ。
なのに、感情を表に出す仕事である役者をやっているというのもまた面白いんだけど。

普段の友達付き合いは、大体似たタイプの人とつるむことが多いけど、
こういう映画とかになると対照的なキャラがいっしょにいることが多いよね。

今回もそのパターンではあるのだけど、
佐々木という強烈なキャラを描きつつ、
彼の存在によって自分の人生を見つめ直す悠二の姿は、
多くの人に共感されやすいんじゃないかなと思った。

ただの青春映画で終わらず、過去に比重が置かれつつも、
未来につなげようとしたストーリー展開はよかったな。

あと、藤原季節って若い頃の安藤政信をちょっと彷彿とさせる。

映画『佐々木、イン、マイマイン』公式サイト

映画『佐々木、イン、マイマイン』公式サイト。2020年11月27日(金)より全国公開