映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

あぜ道のダンディ  石井裕也

2012-03-21 06:00:52 | 映画(日本 2011年以降主演男性)
映画「あぜ道のダンディ」は50歳のシングルファーザーの生き様を描いたヒューマン・コメディーだ。
愛情に満ち溢れた映像が妙にしっくりくる。

去年大震災の後、最初に見た映画が「川の底からこんにちは」だった。地震後の喪失感で乱れていた心を和ませてくれた。それを撮った石井裕也監督の最新作は、男手ひとつで育ててきた息子や娘との関係に悪戦苦闘する男を描く。名脇役・光石研が不器用な中年を好演している。


周りには畑も目立つ地方都市が舞台だ。50歳配送業の宮田淳一(光石研)には、大学浪人中の息子と高校3年生の娘の子どもがいる。39歳で妻はガンで先立っていた。子どもたちは父親とは会話はかみ合わない。職場では同僚(藤原竜也)に話しかけられても、めったに返事をしないほど無愛想だ。中学時代からの友人の真田(田口トモロヲ)と居酒屋で酒を酌み交わすことが楽しみだ。
ある日、主人公は胃に不調を覚え、亡き妻と同じく、自分も胃ガンなのだと思い悩む。主人公は親友にしか相談できなかった。そんな中、俊也と桃子が東京の私立大学に合格する。病院に行くと、胃カメラでポリープらしきものが見つかる。あわてる主人公だ。
東京で子供たちは新生活を始めることになった。せめて思い出を残したいと思うのであるが。。。

主人公は怒りっぽい。ちょっとしたことですぐキレる。同僚に対しても、親友に対しても、家族に対しても同様である。中卒で仕事をはじめ、何かに劣等感を持っている。常に自分がバカにされているじゃないかと思っている。でも子どもの前ではつい見栄を張る。
不器用な中年男の泣き笑いや屈折した心情を軽妙に描く。こんな奴割といるんじゃないか。同時に自分もこの男のように怒りっぽくなっているんじゃないかと共感を持った。


この映画は一人称を主人公としているが、時折目線を下げて息子や娘を一人称にする場面が出てくる。安月給の父親にアパート代を出させて大学に行くということに子供たちも悪いなあという気持ちを起こす場面が出てくる。監督はまだ若いだけに息子や娘の視線をもつこともできる。年をとった監督にはこの目線は描けないのではないか。やさしさにあふれているそのシーンをみながら、子供と離れる時が来たときにどう思ってしまうのかを想像してしまった。

前作同様出演者が歌を歌う場面がある。これは前作の方が良かったかな。
でも意外にしっくりくる映画だった。子を持つ親にお勧めかもしれない。


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