TULIP DIARY

届くといいな やさしい風に乗って

倍賞千恵子の現場

2017年12月20日 | 読書日記
倍賞千恵子の現場 倍賞千恵子 著 PHP新書
この本は、さまざまな映画作品に出演され、たくさんの撮影現場で真剣に向き合って来られた女優さんでもあり歌手でもある倍賞千恵子さんが、共演された素敵な俳優さんたちや監督さん、カメラマンさんや編集の方などのスタッフとの出会い、現場での仕事を通して、長い年月をかけて感じられたことやご自身の演じ方、生き方などについて素直に思うまま語られているエッセイです。この本の中では今は亡き渥美清さん、高倉健さん、笠智衆さんのお人柄が紹介されていました。この三人の名優さんたちは立っておられるだけで美しかったということや、それぞれ、プロの俳優さんとしての厳しさを持たれているのですが、人としての優しさも兼ね備えておられて、外見だけでなく内面も素晴らしい方々だったと語られていたのが印象に残りました。また、スタッフのおひとりで山田洋次監督が絶対的な信頼を置いておられた、カメラマンの高羽哲夫さんが捉えた映像について記載されていた内容も印象に残りました。あるシーンでひっそり咲いている草花のシーンに倍賞さんは心を揺り動かされたそうです。「あのちっぽけな花が、こんなふうに絵になって映画を彩るんだ!黄色い花が画面の中で一生懸命に生きている。」と。また、「黄色い小さな草花や青空にぽっかり浮かぶ白い雲、鳥の群れが飛んでいく茜色の夕焼け空、遠くに海を臨む家並みなど自然の景色や街の情景の数秒のカット、山田洋次監督と同じように、大きなものより小さなもの、光の当たる場所よりもその陰になるもののほうに心を向けて、優しく見つめる感性というんでしょうか。高羽さんの捉えた絵には多くの小さなものや目立たないものが映っています。」と紹介されていた箇所が大変心に残りました。このような視点で渾身かけて作られた映画だからこそ長年、人々の心に共鳴する作品が次々とヒット続けていたんだろうなあと想像できました。こういうものの見方を本当にできる方々や表現できる方々は好感が持てます。この本では、こんな映画作りの裏側の話やエピソードなど興味深い内容もあり、倍賞さんご自身が長年女優として歌手として素晴らしい活躍をされて来られた自伝的な本でもありました。最後のところで倍賞さんはこの本を女優として歌手として生きてきた証であり、これから生きていく上での大切な道しるべになるかもしれないと語られていたのも印象に残りました。
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