”Scott Walkerに恋して”MadamSwallowのTeaSalon

スコット・ウォーカーをこよなく愛するSwallowとお茶をご一緒しましょう
自作のアップロードをお茶うけに・・・

Bridgeさんの翻訳特集第2弾 Brady Corbet監督が語るScott

2019-05-29 12:14:35 | We Love Scott Walker

 他人のナントカで相撲を取るという非常にせこいタチのSwallow。

今回もBridgeさんが「こんな素敵なモノ、独り占めしちゃいけない」って感動をみんなに分けてあげようと忙しい中提供してくださったあの

 Childhood of a Leaderの監督Brady Corbet氏が語るScott Walkerへの師弟愛とも聞けるインタビュー。

Bridgeさんの翻訳文と動画を同時にご覧になれるようにしました。

On working with Scott Walker 
Brady Corbet   (うう、このタイトルだけで泣いちゃう)

15:20 〜
僕が映画を作る理由の一つがScottなのです。彼の作品はまだ若い僕にとって、とてつもなく大きなインスピレーションでした。
Scottの音楽に出会ったのは人格がほぼ形成される12~3歳位の、それこそ成長期の真っ只中でしたが、それ以来彼の音楽は聴き手としての僕の生涯の至るところに存在(omnipresent)し続けて、後には彼のスコアが僕のデビュー映画、Childhood of a Leaderの輪郭を決定(定義)づけることにまでなったのです。
7年前、もう8年になるのか、Childhood of a Leader のキャスティングが未だ決まる前の段階で彼に働きかけ映画音楽を作ってくれるように頼んだら、大変驚いたことに彼はイエスと言ったんです。

画像に含まれている可能性があるもの:1人、座ってる、画面、室内

16:32 その後彼とは親友になり、今までそれこそ大事にして来たコラボレーター達と同じ様に、彼は僕の大切な協力者となりました。
だから彼の死は僕にとって物凄いショックだった。全く寝耳に水だった。
今回、何年ぶりかで妻と一緒にロンドンに来るまで、こちらに住んでいたScottとは何年も会っていなかったから、この旅行では彼の不在をひとしお強く感じてしまいます。
17:12 僕は彼と一緒に二つの映画を作ることが出来たのは信じられない程名誉なことだったと思う一方で、これからはもう彼に頼ることは出来ないのだという思いに打ちのめされてもいます。
でも、彼は僕の中に大きな「創造的勇気」を植え付けてくれました。
このような映画を作るのは、色んな理由で本当に難しい。
要するに映画作りにはものすごくお金が入るのです。
絵を描くことなどとは違って、これには大勢の人を動かす資金が必要です。
特に私が作るような(商業的ではない)野心的な映画製作を効果的に成し遂げるには、多大な人力と演出効果を必要とします。
18:20 ゆえに私と映画の経済面との間には、常に葛藤が続きます。
Scottも同じことで一生涯苦労しました。彼はいつも大オーケストラを使った大規模なスケールの仕事をしていましたから。彼はアルバムを作るのに、作曲には何ヶ月も費やし、執拗に計画を立て、40分の音楽のためのオーケストラを6時間で録音するようなことをしていました。
彼と彼のチームが仕事をするあの効率的なやり方を見た時にはそれこそ仰天しましたね。効率的という事は、同時にプロジェクトが経済的でもあること言うことですから。
19:06 僕が映画を作るこの困難で長い道のりの果てに終着駅にたどりついた時、最後にそこで待っていくれたのはScottでした。作り始めた時と同じ勇気を持って終わらせることが出来るように僕を励ます為に。
これは言うのだけなら簡単です。何故なら、「意見なんかXXの穴のようなもので、誰もが一つは持っている」という発言ほど真実に近いものはありません。皆んながそれぞれ意見を持っていて、人を完全に消耗させる長蛇の列になって毎日のようにやって来て、「お前のやっている事は気に要らない」と言うのです。
19:58 ところがその列の最後にはScottがいて、「よくやった、君はもう自分自身を信じられないかも知れないけど、私はまだ君を信じてるよ。」と言ってくれました。あれで確証を得たのです。
これから先のプロジェクトにも、彼を抱え続けて行かなければなりません。
でも、Scottが逝ってしまって、もう僕の映画の音楽を作らなくなったこれからは、音楽は変わるでしょう。音楽との関係自体を変えなければなりません。
次の映画ではソロピアノだけ使うことを 考えています。 Scottがやっていたことと対極のものとしては、僕にはそれしか思いつきません。
この喪失を悼むのには、個人的にも、そして創作的にも長い時間がかかると思います。


Corbet監督のScottへの想いがとてもよく伝わってきますね。

Scottが45歳ものギャップを越えて若い才能を見出し、共感し、自分の想像世界をフルに発揮して作ったこのサントラは素晴らしい作品であることは勿論のこと、彼にとっても楽しい作業だったのではと私は勝手に考えています。

Corbet氏は「もうScottが居ないという現実を乗り越えて成長していきたい」と言っていますが、ほんと応援していきたいですね。

ねScott・・・


BridgeさんのBBC翻訳特集

2019-05-25 16:26:13 | We Love Scott Walker

 

4月21日からUKのBBC放送でStuart Maconie氏のScott追悼番組がありました。それをかの翻訳大魔王Bridgeさんがヒアリングで翻訳してくださいました。


音源を何とかダウンロードせねばと思いつつ、上手くいかず、腕の痛みや身体の不調に負けてしまい、大事な資料を残せませなんだ(涙)

なのでBridgeさんの翻訳文だけでもファイルしておきます。

                        

 

Stuart Maconie は嘗てScottの「声」についてこう言ったことがあります。
「そう、この世には、Scott Walkerが好きじゃないという人間だって居るのだ。
でも一体そいつらは、どんな心をしているのだろう?
あの「声」は、神秘、苦悩、傷心、郷愁、憧れ、そして喜びの声だ。」

4月21日に、BBC RADIO 6、「Stuart Maconie’s Freak Zone」という番組で、数多いBBCの音楽番組のプレゼンターの中でも飛び抜けてScottの音楽に見識が深いMaconieが作った追悼番組が放送されました。
これはScottの音楽史を踏まえた上で、大ファンである彼が選び抜いた9曲と、彼自身が1995年(TILT)と、2013年(Soused)に直接行ったインタビューからの抜粋、そして的を射た彼のコメントで構成されています。
Maconieとはウマが合い、信頼しているらしいScottは、リラックスしてジョークを頻繁に飛ばし、又、深く掘り下げる質問者の誠意と熱情につられてか、誠実に自然体で応答しています。
Maconieが選んだ曲を再訪しながらこの番組を聴いて行くと、(Scott関係のコンテンツがあちこちに散らばっていて、通して聞けないのがのが誠に残念ではありますが)、音楽ジャーナリストで作家、評論家、そして長年の熱心なファンであるMaconieが見た、もう一人のScott Walkerに出会うことが出来ます。

–Stuart Maconie が選んだ九曲–
The Old Man’s Back Again (Dedicated to the Neo-Stalinist Regime)
Tilt 
Such A Small Love
Phrasing
Pilgrim
Track Seven
Bull
Nite Flights
Light
&
Bish Bocsh Interview 抜粋 
Soused Interview 抜粋

Stuart Maconie’s Tribute to Scott Walker: Part 1

The Old Man's Back Again (Dedicated to the Neo-Stalinist Regime)

3:50
SM:あー素晴らしいサウンド、素晴らしい歌、そして偉大なるWally Stottの見事なアレンジメント。Scott 4からThe Old Man's Back Againでした。
(ネオ・スターリニスト政権に捧げる)と言う副題が付いたのこの曲は、プラハの春のソビエト政権によるの容赦ない制圧をScottが作品の題材にしたものです。
この番組はメランコリーになってしまうのは仕方ないとしても, 願わくばScott Walkerへのの輝かしい音楽トリビュートになることを願います。

(プラハの春: 1968年に起こったチェコスロバキアの変革運動
ソ連による軍事介入と市民の無差別殺害に加担する声が上がり、その後の(社民党を含む)党勢の衰退に拍車をかけた。『世界史の窓』より)

👩🏻‍💻 Maconieさんは今でもロシアかぶれ?
「I’m a Marxist – we are misunderstood on both the left and right.
In these days of identity politics, the ideology remains refreshingly bracing in its view of the world. 」 2017-Stuart Maconie-
私はマルクス主義者だ。 私達は右翼からも左翼からも誤解されている。 今日のアイデンティティーポリティックスの時代に、かのイデオロギーがもつ世界観は、
今でもすがすがしいまでに私を活気付けてくれる。
2017年、-Stuart Maconieのエッセイから-

15:25 
SM: 今夜私達は、Scott Walkerが残した最高の音楽に敬意を表しています。
彼が所属していたレコード会社である4ADは死因はガンであったと発表しましたが、彼を知っていた私達の中ですら、彼の病について知っていた人は誰もいませんでした。
この番組の常連リスナーの方達は、私達がいかに彼の音楽の熱心なファンであるかを、そしてこれからもずっとそうあり続けるだろうことをよくご存知だと思います。

今夜の番組のあちこちに散らばっているのは、彼の音楽と、これまで長年にかけて私が行って来た彼との数多いインタビューの中からの抜粋です。
まず始めに、私が最初に彼に会った1995年、BBC Radio 4の当時のKaleidoscopeというアートショーのプログラムで 、Climate of Hunterのリリース後、(Tiltが出るまで)何故11年ものブランクがあったのかを彼に聞いてみました。

SW: 色んなことが重なり合ってそうなってしまった。
実利的な理由で始めた事だったのが、その内もうこれ以上妥協出来ないという状況にまでなってしまい、同じことを続けるのはもう嫌だったので、とにかく休みを取るのが必要ということで…(👩🏻‍💻それで11年も休んだんっすか?)
SM: 11年間も歌わずにいた後でのレコーディングに恐怖は感じませんでしたか?
SW: もう死ぬほど怖かった。(笑い)
(👩🏻‍💻なぜここでゲラゲラ笑っているかを日本的感覚では伝えにくいのですが、本来なら I was scared shitless 「漏らしてしまう程おっかなかった」と言う下品な表現を、Scottが放送禁止用語であるshitという部分を、自分で予めピーっ(bleep)という消去音に言い変えて “I was scared bleepless.”とジョークで言っているからです。 こういうのは実際に音声で聞かないとちっとも面白くないですよね。)
だって参照になるものが何もなかったんだもの。私は仕事に使う機材は出来るだけ少なくしているので、家にあるのはアンプと、古いテレキャスターと、 5オクターブのただの普通のピアノのキーボードだけで、マイクもないし、あと持ってるのは雑記用の小さなポータブルテープレコーダーだけ。
だから実際にスタートしてみないと、どのようなサウンドになるかわからないのでそれが本当に心配だったわけ。家で数ヶ月間ウォームアップはしたよ。なにせ長年歌わなかったからね。自分で納得できるようになるまでに2~3カ月位はかかったと思う。かなり自信がついたところで歌い始めたら、Pete(Peter Walsh)が大丈夫だと言ってくれて、彼がそう言うなら私は彼を信じるからね。


Such A Small Love 32:07~36:48

36:50
SM: Angela Moreleyによる、もう一つの信じられないほど素晴らしいこの曲のアレンジメントは、発売された1960年当時は、Wally Stottの名前でクレジットされていました。
そしてこの曲は、 Julian Cope編集のアルバム、Fire Escape in the Sky: The Godlike Genius of Scott Walkerの最初の曲でしたが、一人のアーティストが他のアーティストのアルバムをキュレイトし作成するというのは実に興味深いコンセプトで、当時遥か先を行っていたJulianは、Scott WalkerはただのMORのバラード歌手、もしくは落ちぶれた60年代のポップスターなどではないということをこのアルバムで世に認めさせたといえます。
Such A Small Love はZoo Recordから出たこのアルバムの最初の曲でしたが
これを聴いた当時の私は、「これはすごい!」と思ったことを覚えていますが、他の多くの人達もあの時から彼の音楽に心酔し始めたのだと思います。

👩🏻‍💻「当時16歳だった私は昼は学校に行き、夜は彼の道案内でPlastic Palace PeopleのBillyのように旅に出て、この今まで見たことも聞いたこともないようなScottの音楽世界の中にエスケープしていた。」

全く私の分身が書いたとしか思えない上の文章は、80年代にJulian CopeのFire Escape in the Sky: The Godlike Genius of Scott Walkerを聴いて初めてScottを知った、当時ロンドンのティーンエイジャーだった英国人男性が書いたものなのです。
片や60年代に東京の、空想力に満ち溢れたティーンエイジャーだった私も、昼間は学校に行き、夜は あの優しい声をした素敵な道案内(先生)に連れられてヨーロッパを旅し、彼が描いて見せてくれた短編映画の様な歌に出て来た主人公達を通して、彼の繊細で美しく悲しい心の世界にエスケープしていたのを憶えています。
みんな同じですね。

37:30 
SM: Tilt(1995)の次に彼に会ったのは、2013年にBish Boschがリリースされた頃で、その日はたまたま彼の70回目の誕生日でした。
Bish Boschは、Tilt、The Driftに続く三部作のフィナーレと見なされています。
Scottは映画30世紀の男の中でこう言っています。
「私には悪夢的な想像力がある。一生悪夢に悩まされた。全てがとてつもなく大きくて、釣り合いを失っているんだ。」
37:52 <Phrasing>
PAIN IS NOT ALONE
(👩🏻‍💻この凄まじいテンションの歌を念頭において次の対話を読まないと、対話の中のジョークが通じないと思います。Maconieは、Scottのブラックなユーモア感覚を披露したくて、あえてこの部分を抜粋したのでしょう。)

SM: Scott、人々はあなたのレコードを、どう言う風に聴いていると想像しますか? どういう風に聞いてほしいと思いますか?
映画を見るように一つの作品として聴いていると思いますか?
人々はあなたの音楽をどういう風に体験しているとイメージされますか?

SW: 肝心なのは、こういうものは気にかけ過ぎないようにすることだ。
(あがかずに)ただ従うように聴けば良い。それから、こういうものを四六時中聴いてるのもよくないね~。😁😁
まさかそんな人、いないだろうけどね~。😄
だんだんと慣れるようにすることだね。そしてうまくいくように願うことかな。😄
SM: でもこれは、友達を呼んで食事したりする時のバックグラウンドにするわけにはいかないような音楽体験ですよねえ。
SW: ちょっちょっちょっと待ってよ、そりゃどんなパティーかにもよるだろうけど、😂🤣😄(Bish Boschのようなレコードをかけるのは)多分やめたほうがいいよ。

40:08
SM: あなたには聞こえるのでしょうか? 曲を組み立てている最中にはどんなふうに聞こえるんでしょうか?デモテープはお作りになるんですか?
それが可能だとはちょっと想像出来ないんですけど…。
SW: デモは作らない。ギターやピアノで弾いたりとか、そんな風にデモンストレート出来るものじゃないんだ。とにかく始めなければならない。先ず最も難しい部分である歌詞が完成したら全ての位置づけを始めて、そこから本当の作業、つまりアレンジメントを始める。今日日アレンジというのは、いい意味で使われている言葉じゃないんだ。何故かと言うとアレンジと聞くと人は、たくさんのストリングスを使ったりすることと思いがちだからね。私の場合のアレンジとは、ただ音をレイアウトして目指すところに行き着くのに必要なスケッチをすることで、始める方法はそれしかないんだよ。多くの場合下には捕まるものが何もないので、急落下しかねないんだ。
40:55
SM: あなたははっきりと、歌詞こそがまさに作品の核であるとおっしゃってました。作品はサウンドの体験ではあっても、そのサウンド自体を全て特徴づけるのは歌詞であるということでしょうか?
SW: その通り。私が歌詞に一番時間をかけるのは、妙なことに、歌詞が私に何をどういふう風に使えばいいかを教えてくれるからなんだ。歌詞が曲作りをしている間中ずっと私を導いてくれる。要するに私は歌詞に(それに合う音の)服を着せているようなものなんだよ。

41:22
言うまでもなく、あなたは映画の大ファンでらっしゃるわけですが、あなたの曲作りと映画製作には共通点があると思います。
あなたのやり方は、映画用語で言うMise-en-scèneと言えるのではないでしょうか?つまり、映画で全てをフレーム内に配置するような方法で、音響的要素を配置するのではないかと…。
SW:そうかも知れないね。そのことについて考えたことが度々あったよ。
映画にはよく行くし夢中だから、もしかしたら何か関係があるかも知れない。
音楽を映像のように見ているからね。

(👩🏻‍💻 Mise-en-scène)
ミザンセーヌ(仏:Mise-en-scène [mizɑ̃sɛn])は、演劇界および映画界において用いられる表現であり、おおまかに「作品の筋、登場人物を作り出すこと」を表す語である。「演出」の訳語があてられる。もとは演劇から発生した言葉であり、字義通り訳せば「舞台に置くこと putting on stage」の意である。Wikiより)

Pilgrim 41:50

44:10
SM: かつて他の誰によっても、これ程までに多種多様なジャンルにまたがったレコードが作られたことはありませんでした。
つい先頃、Manchester Classical Ensembleによる、Peter Maxwell Davisの 『Eight Songs for a Mad King 』を見た時に、Scott Walkerのソロアルバムを思い出しました。ここにはもう、いわばポップミュージックを思い起こさせるようなものは何も残っていませんね。
Bish Bosch から"Pilgrim"、そして、Scottの70回目の誕生日である1月13日(?)に放送された彼とのインタビューでした。

"Pilgrim"
👩🏻‍💻この何ともグロテスクなイメージを呼び起こす言葉達を、その言葉一つ一つにぴったりの、これまでに聞いたことのないような、嫌らしいしゃがれ声で歌っています。( 歌っていると言うより独演に近いかな?)
何故 Pilgrim(巡礼者)と言う題を付けたのかは謎なので、勝手に推測するしかないのですが、これはいつも彼が言っていた、「unsayable」の領域、謂わば言葉にするのは許されない様な禁断の領域を、歌詞と音で表現しているのでしょう。
ミニマリズムの極致のようなこの歌(?)は、彼がいつも強調していた、言葉と声と音の関係を感覚的に理解するのにとても役立つ歌だと思います。
Maconieさんもそういう理由であえてこの曲を選んだのだと思うのですが、彼のファンであっても、こんな薄気味悪いものは理解したくない、理解する必要もないと敬遠する人は多いでしょうし無理もないとは思います。でも彼のアートの真髄に触れようとするなら、こういう部分を避けて通れないのも確かです。Scottは音楽で、ただ美しく心地よいエンターテインメントを提供しようなどと言う理由で、苦労して全身全霊を捧げて努力して来たのではありませんから。でもこれが彼お得意の残忍ブラックユーモアだとしたら、ちょっとやり過ぎというか……ブラックユーモア大好きな私ですら最初これにはちょっと引きました。でももう慣れたのか、今では結構面白おかしいと思えるようになりました。
 
SM: 後期Walker Brothers が自然消滅した後、Scottは1980年の初期にどこからともなく出て来たと言う感じでVirginからレコードを出しました。
これが何とも寒々しくて奇妙なレコードで、ある意味とても80年代的なのです。
又ここで確かにわかるのは、David Bowieに無礼を犯すつもりはないのですが、これを聴くとBowieの晩年のキャリアのほとんど全てがScott Walkerを試みた(真似をした)ようなもので、特にClimate of Hunterとの類似は明白です。 "Black Star"に至ってはそれこそレコード中に(Scott Walkerが)聴こえます。
このアルバムの数曲にはタイトルさえ付けられておらず、今お聴きになった曲もその中の一つで、Climate of Hunterから "Track Seven"でした。

1:11:57 
Scott Walkerの話しに戻りましょう。本当に驚いたことに、Bish Boschから1年しか経っていない時点で、Scott的な年月感覚ではとてもあり得ないほど大したギャップもなしに、彼は新しいアルバムをリリースしたのです。その上これは、この番組でも愛されているシアトルのドローン・バンド、Sunn O)))とのコラボでした。
そこで当然私達はインタビューを申し込み、彼はその要望に応えてくれました。この時の彼は、これまでの私とのインタビューの中で最もリラックスした気楽な感じで話をしてくれました。

Soused Interview
1:12:00-1:21:15

1:12:20 
コントロールルームらしいところから聞こえて来る若い女性の声: サウンド、オッケーです。
SW: 彼女もう----に入っちゃったちゃったよ。(👩🏻‍💻相変わらずジョーク飛ばしてるようなのですが、ここんとこはよく聞き取れませんでした。)
女性: これでご満足ですか?
SW: そうでもないよ。満足なんかしたことないよ。(皆でゲラゲラ笑う)
冗談だよ、冗談だってば。🤣😄😆
SM: 出来るだけ痛くないように、素早くインタビューを終えますからね。
(👩🏻‍💻注射などを打つときに使うpainless and briefという表現で、インタビュー嫌いのScottをからかっている。)
さて、これは素晴らしいレコードですね、Scott。
あなたとしてはこんなこと書かれても面白くもないかも知れませんが、ある批評家によると、このレコードは親しみやすく、オープンで、メロディックだそうですよ~!
こんな反応、予想していましたか?
SW: 随分と言うことが変わって来たもんだね~。(👩🏻‍💻 昔、酷評ばかりされていたことを皮肉っている)😄
ある意味ではそうとも言えるけど、それよりも殆どの曲が、verse-chorus、ヴァースとコーラスの構造だからなんじゃないかな?
SM: これこれ!私にはこれが大いに受けたんですけど、このレコードに十点満点を付けたVice Magazineによると、これは聴く人にとって「生涯最高の体験」だそうですよ‼︎ 
全く、最高の賞賛ですね!
SW: 全ての人々にとってのね!😄😆😆
イイね~そういうことを言ってくれるのはうれしいよ~。
SM: 知らない方達の為に経緯を話して下さい。数年前にSunn O)))が、彼らのレコードであなたに歌ってくれるように頼んで来たということでしたか?
SW:そう、あれは2009年のことで、あの時何をやってたのかどうしても思い出せないんだけど、とにかく何か他の事でとても忙しくて、やりたくなかったんじゃなくて、やろうにも出来なかったわけ。
話を続けると、この前のレコードの後に生じたレコードとレコードの間のギャップは もう悪夢だったので、ピート(Peter Walsh)と私は、今度はもうちょっと製作が簡単なレコードを作りたいと思っていたんだ。大げさなストリングスとかなしにもっと簡素化したものをね。そこでドローンを思いついたんだけど、そもそもドローンは全ての始まりみたいなものだから。
そこで突然彼らのことを思い出したわけ。私にとって彼らはドローンの帝王みたいな存在だから。
SM: いつも思っていたことがあって、こういうことを聞いてあなたにご迷惑をかけるつもりは全くないんですが、これまであなたが常に模索し続けて来た一つのテーマがあるとしたら、それは人間の尊厳性についてだと私は思うのですが、いかがでしょうか?
SW: ある意味ではそうとも言える。
SM: そして、尊厳性の欠如について…
SW: 最上のものを求めて努力することと、それを達成出来ないフラストレーションについて、とも言えるかな……。
SM: そして人間の脆さや、はかなさについてでしょうか?
SW: 全くその通りだよ。そもそも私自身が最も弱くて、皆んなと同じように、自分自身を見失ったことがあるからね。
SM: 実際的なレベルでは、このプロジェクトに関わった人全員が集まったところで、この連中の時間を無駄にしたくはないと言うのも動機になったのではないでしょうか?
SW: そうそう、彼らと仕事が出来た期間は1週間しかなくて、その後彼らは帰っちゃったからね。事前に全てのプランを立てなければならなかったけど、彼らとのコラボは本当に楽しかった。本当にみんないい連中でね。ここに来てからもう40年以上アメリカ人と仕事をしたことは一度もなかったから、どうなることやら全くわからなかったんだ。
それまで彼らとは会ったこともなかったのだけど、スタジオで会って、もしうまくいかなくてひどいことになったらそこでやめてしまう、そしてそれぞれ各自の道を行けば良いと決めて始めたことが、ファンタスティックな結果となったんだ。
皆んな仲良くなって、彼らは私のチームの連中ともよく気が合って、本当に夢のようなレコードが出来上がったんだ!

Bull 1:15:43~1:21:14

1:21:00
Sunn O)))とのコラボレーションによる 「Soused」。
Tiltで戻って来た後作ったソロアルバムで彼が達成したかったことの満足度は(アルバムを出すたび毎に)徐々に高まって行ったそうですが、その点、「Soused」は、「ほぼ完璧」だと言っていました。
お聞きになった曲のタイトルは "Bull"。

Nite Flights
1:36:00
SM: ここでも又Bowieに与えた影響が、余りにも顕著ではありませんか?
Walker Brothersの最後のアルバムNite Flights、その中でも特に"The Electrician"は、実はWalker Brothersの名前で出したScott Walkerのソロアルバムみたいなものでした。


Light
1:56:26
SM: 先程私は、Sousedのインタビューの頃に見たのが、最もリラックスしたScottだったと言いましたが、それは間違いでした。
一番リラックスした彼を見たのは、Scott Walkerプロムの直後に楽屋を訪ねた時のこと。
そこに娘さんとパートナーの Beverlyさんと一緒にいた彼は、それこそ最高に素晴らしいご機嫌でした。
あの時見た姿を、私は彼の最後の思い出として、取っておきたいと思います。

映画「Pola X」から、彼の美しいサウンドトラック、"LIGHT"。
Scott Walker と Light の世界に皆さんをおいて、ここでお別れします。
いいインタビューでしたね。スチュワート氏の暖かい編集に胸がいっぱいになります。
Bridgeさん本当に有難うございました。
うさぎさん、この時の写真じゃないかしら?
ちょっと大きすぎ
 




風は流れる

2019-05-23 16:40:14 | We Love Scott Walker

嵐の後、夏に向けてゆっくりと季節が動き出したようです。

まるで私たちの心のようですね。散々泣いた後に見上げる空のまぶしさ。涙にぬれたほほを撫でる風の心地良さ。もっと浸っていたいけれどさっとひるがえるように去って行ってしまう。

 

先日UPRINKでお会いした白取さんから頂いた写真、なかなか上手にできませんでしたが、何枚かはっきり見られるようにしてみました。
なにせテレビの録画をブラウン管に向けて多分当時の一般的なカメラで撮影なさったんでしょうから、これだけ撮れれば素晴らしいじゃないですか。サロンでご紹介する前にファンクラブに投稿したところ、大好評でした。

他にもあったのですが、ノイズがなかなかきれいにならず、一部のみ公開させていただきました。

白取さん本当に有難うございました。

最後にオマケです。

当時のUKでの人気ぶりがうかがえる1枚です。Scottのパフォーマンス、これじゃあ女の子は悩殺ですわねぇ。彼もよくやる。反則でしょ。

ほっぺをタッチされた女の子のうっとりとしたこの表情❣

次回はBridgeさんのBBCインタビュー翻訳大会です~


5月の空にあの人を想う日 John Walker 8回目の命日

2019-05-06 21:11:16 | John Walker

大連休いかがでしたか?

私は前半に娘家族と遊びに行きましたので、後半はグダグダと家の中で過ごしました。なにせ、公共機構も銀行もほとんどやっていないし、肩が痛いから整形に・・・ってお休みだし。まあ衣替えはいつもよりはかどりましたけど。断捨離もね。

庭木の剪定などしながら空を見上げると五月晴れの青い空。そうだなぁー、Johnが亡くなった5月だぁ。

もう8年も経ってしまったんですね。

あの当時は勿論びっくりしましたし、悲しかった。でもまだScottが居る。そう思ってJohnには申し訳ないけどそんなに応えなかったのは事実です。

でも今年はScottも・・・あの時のJohnのファンの方達の悲しみがいまとてもよくわかります。これから毎年Scottの命日も書かなければならないなんてああ正直辛いです。でも彼らの残した功績は永遠ですもの、素晴らしい宝物を胸に生きていけます。

そんなことを考えながら作りました。Johnの力強いハスキーボイスが男らしい曲。Taking it All in Stride

私はこの頃のJohn好きです。なんだか若い頃よりがっしりして男前でした。

Scottが「僕よりずっといい男だよ。ハリウッドスターみたいだ」と言っていましたが、んー・・・いやいやScottも素敵よ。

私達はこの素晴らしい2人のアーティストに巡り合って本当に幸せだと思いますね。