totoroの小道

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山の魔王の宮殿にて(ペールギュント ) 鑑賞の授業

2014-03-12 09:19:34 | 歌・音楽

新採研修の係として、この1年4人の初任者の先生とともに研修をしてきた。

幸いにも、熱心な優秀な先生方に恵まれた。
おかげで、純粋に教材と向かい合い、ともに子どもや学級作りについて語り合う日々だった。
今週は、その4人の先生方が、全員最後の研究授業を行った。
一年間の総仕上げの授業だ。

その4人の先生のうち3人は講師の経験がある。
本当に新卒なのは1人だった。
1年の流れ、学校という組織、学級という組織、教科の体系など
そられらの全てに対して
全体が見えないことによる戸惑いや意識のずれがあった。

目先の一つのことしか見えない。
その中でも、一生懸命に走り続けた。
先輩に聞き、教えられたことを誠実にこなすしかなかった。
そんな1年だった。
(それをフォローするために私がいるのだけれど、機能していなかったね。)



だから、
彼女には満足して終わってほしかった。

そこで、最後の授業は得意分野である音楽での授業を提案した。
教師が自分の土俵で相撲をとる。
それが、一番力が出る。
子どもも育つ。

授業が始まった。
山の魔王の宮殿にて(ペールギュント ) の鑑賞の授業だ。

まず一度、全体を通して聞く。
この曲は同じメロディが18回繰り返される。
ただぼやっと聞いても退屈だ。
気づきもない。
考えながら聞かなければならない。
考える=比較するだ

T:何回目から曲想が大きく変わるか、数えながら聞きなさい。
この発問が、子どもたちの思考を考える方向に向けた。

皆、考えながら、聴く。
今、何回目のメロディなのかを指を折って数えながら聴く。
どこで、曲想が変わるか。 
曲想が変わるとはどういうことか。
考えながら聴く。
 

S:一番激しい感じは、13~17回だね。
S:なんだか、ペールが魔王と戦っているように感じる。
S:それまでは、来るぞ、来るぞと思わせておいて、いよいよでた~みたいな感じになる。
S:一番激しいと感じさせるために、どんな「音楽のしかけ」があるか考えたいね。

こうして、本時の目当てが決まった。
見事な導入だと思った。

S:強弱をつけている。
S:速さの変化がある。
S:音の長さの変化がある。
こんな予想がだされた。
この予想を、確かめていく。

分からないとき=「切る」  これが鉄則だ。
分かる=分ける と考えていい。
分けることによって、多くのことが見えてくる。
多くのことを、混ぜるから比べられない。
分けて、一つ一つを見ていけば、比較できる。

彼女はワークシートを用意してあった。
18回繰り返すメロディを、4つの部分に分けて学ぶ形式になっていた。


T:曲を4カ所で止めながら聴きます。「音楽のしかけ」を見つけて書きなさい。
こう指示した。

子どもたちは、耳を澄まして聞かなければならなくなった。
わずかな違いを聞き逃してはならない。

本日2回目の鑑賞。
1回目~6回目で止める。


7回目~12回目で止める。
S:え~、ここで止めるの!
S:次が聞きたい。

13回目~18回目までを聴く。

最後までを聴く。

S:先生、早いよ。もうちょっとしっかり聞かせてよ。
というリクエストに応えて、
同じように4カ所で切りながら、3回目の鑑賞を行う。

それぞれワークシートに調べ終わると、相互交流を行う。



ここから全体で話し合う。
1~6回目
S:音が低いから不安な感じだね。
S:太い音色だからさまよっているようだね。
S:ゆっくりだから、おそるおそる歩いている感じがするね。

7~12回目
S:だんだん強くなると、走っている感じだね。
S:だんだん速くなると、どきどきするね。

13~18回目
S:強くなったね。必死な感じがするよ。
S:楽器が増えたね。大勢の敵がいるように思えてきたよ。
S:速くなったね。戦っているのかな。

終わりの部分
・高くなったり低くなったりするから、不安な感じだね。
・強い音で決着がついたように思うよ。

最後に、この日4回目の鑑賞を行う。
分けて考えたら=「最後に、組み立てて全体を見る」  これが鉄則だ。
今度は、切らずに最初から最後まで通して聴いた。
S:やっぱり、リズムや強弱、速さが4つの部分でどんどん変わるね。
S:楽器も、コントラバスだと不気味だね。
S:シンバルは戦いみたいだね。
こんな意見が出た。
(せっかくなら、それぞれにペールの話を語らせたらおもしろい。学級全員で、ペールの話を作ったらおもしろい。)

最後に、感想をワークシートにまとめた。
・激しい曲で、音の強弱をよく聴くと、物語がうかんでくるように感じた。
・楽器を増やす音楽の仕掛けで、物語ができていることが分かった。
・音楽には、いろいろな場面があることがわかって、すごくおもしろかった。

 

授業後の授業の振り返りでの、彼女はこんな感想を話してくれた。
・表を4段階に分けたこと、○○だから△△な感じという話形を指定したことが、効果的だった。
・本時の目標を達成するために、金曜から仕掛けてきた。ゴールを見据えて、計画的に取り組む良さを感じた。
・13回目の繰り返しの前で曲を止めるのがいいのかどうかを迷っていた。しかし、子どもたちの反応を見て楽しんで聴いていたのだと思った。
・4つに分けることで、それぞれ聴く時間ができた。子どもの実態に合わせたワークシートの工夫の大切さを学んだ。
・1年間、初任者研修で学んできたことを、本時に生かすことができた。

手応えをもって最後の授業を終えるとともに、大事なことをつかんだことが分かった。
彼女が一番つかんだものは、
・良い授業はその1時間だけで完成するものではない。
・教師も子どもも、この授業のために積み上げ準備してあることが必要。
・その全てを総動員して本時の課題解決に取り組んでいく。
・そのためには、最初に単元全部を教師が教材研究しておく。
・教材研究をもとに単元計画を立て、本時の成功のために、どこで何を身につけさせておくか作戦をたてておく。

と、いったものだった。
こうした素晴らしい気づきがあったのは、それだけ一生懸命に授業を作った証拠だと思った。

 

1年間、お疲れ様でした。すばらしい先生とともに研修でき幸せでした。 

41回 2014年4月12日  土  9:00  12:00  天竜壬生ホール  第2会議室
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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
1年間待ちました (コウタです)
2014-03-14 09:12:34
お久しぶりです。1年間待ちました。また、音楽書き込みや、動画載せて下さい。お願いします。色々な1年でしたが、音楽の書き込み無い1年は寂しい。
コウタさん ありがとうございます (totoro)
2014-03-14 09:22:38
コウタさんこんにちは。
いつもコウタさんの言葉に励まされています。

今年は私にとっては特別な1年でした。
始めて、授業を1時間も行いませんでした。
授業の代わりに、初任者の先生が一人前の先生になるためのバックアップを行ってきました。
授業を彼らの目を通して見ることを通して、ちょっと客観的に見ることができました。

来年はまた授業をもたせてもらえることになります。ただ、大きな学校ですので音楽が持てるかどうかは?です。楽しみにしています。

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