前略、男子トイレの前より

出勤時、降車駅にて用を足したくなったのでトイレへと向かう。

私の前をよろよろ歩いていた高齢のご婦人が当然のごとく男子トイレに入る。

私は「ここは紳士用ですけど」声を掛ける。ご婦人、振り返り様に私を睨みつけ

「私はね、改札に行こうとしたの！私はね改札に行こうとしたの！」…何かキレている。

更に言い訳めいた言葉を発していたけれど

こちらは早く用を足したいし、職場へもいかなければならないので、かまってはいられない。

申し訳ないが放置。



しかしながら、改札口とトイレを間違えるものだろうか？

降車駅は構内トイレの場所がわかりづらくてお馴染みなんだけどな。

加齢とともにここまで思考力が低下するものなのですかね…


実は変態婆さんで、男子トイレを覗こうとした…という可能性は極めて低い。

これ、男女入れ替えて、私が女子トイレに乱入し「改札に行こうとした」等と言っても、

書類送検程度では済まないだろうな。


とはいえ、自分も近い将来、いろんな事が弱ってきてイレギュラーな行動を取るかもしれない。

その時は素直に「あ、間違えちゃった。ごめんね。」

…って言える年寄りになりたい。

専務は弁当を運ぶ

当店に配送されるはずの弁当の一部が他店に誤って配送される、というアクシデント。

店長大慌て。

「弁当が10個くらい無くても大丈夫では？」私は内心思っていたけれど

5円10円の積み重ねで商売しているのだから、そんな事を言ってはいけない。

店長が電話であちらこちらに泣きついた結果

当社専務が自ら弁当を持ってきてくれることで一件落着。

専務ってそんなに暇なのかいな…私の疑問も解決せぬまま時は過ぎ、駐車場に専務到着。

がらがら手押し台車を押して店長と共に向かう。店長が携帯で駐車場のどの辺にいるのかを確認。

目印近辺にハザードが点灯したミニバンが。

これはこれは…近寄るとドアがぺっこり凹んだ年代物のミニバン。


（同型車）

「参ったなあ、マイカー出勤だよ。はははは。」専務は笑う。

しかしながら、当社は専務クラスがこんなクルマに乗っていることに驚く。

私のような下っ端が底辺労働者なのもいたし方ないのか…。


後になって、「マイカー」ってのは冗談で本当は社用車なのかな？って考えだして。

それなら安心…ではない。あれが社用車でもどーかと思うレベル。

それに他県ナンバーだったし「マイカー」話は本当か…

金の動きがわからん会社だ。

愚かな者よ。今夜は眠れよ。

当店にもお得意様は存在する。

私はお得意様の前ではちょー緊張してしまい、必ずと言っていいほどミスをする。

主にレジの入力ミス。お買上げ商品を袋詰めする際の入れ忘れ…だ。

馴染みのお客様だから、にわかに逆上して本社にクレームを入れる…ってことはないけど

仏の顔もなんとやら。いつまでも善意に甘えるわけにはいかない。



最近はお得意様から完全に「愚かな者」として扱われるようになっている。

「ゆっくりでいいのよ～」なんて優しく接してくれているように見えるが

「間違えるよりいいからね」としっかり嫌味も言ってくれる。

商品の袋詰めにしても「私がやってあげるから」袋を横取りされて、成す術もないことも。



人間何か取り柄があれば、ミスを犯しても、それが社会的制裁を受けようとも

引っ張って行ってくれる人、支持してくれる人が現れようものだけれど

私のように愛想もなく人懐っこくもなくこれといった才能もない中年男は

もはや身も蓋も無い。



「愚かな者」に出来る事は前向きな姿勢を保つ事。

ミスは忘れて今夜は眠る。

パンをもらって働いて

クリームパンと梅のおにぎりの差し入れ。

当店が出店しているショッピングモールの本部から。なんで今日なのか店長も知らない、と言う。

まあ、もらえるモノは何でももらうし（何でもは大袈裟）食料は特にありがたい。



年度末だから、お前らいつも以上に働け！…って意味かしらん？

何でもショッピングモール全体の売上が落ちているとかでなかなか大変らしい。

販促策は打っているようだけど、今時「オリジナルマグカッププレゼント」ごときで

お客様が来店するとは到底思えないのだけれど、エラい方々が会議を重ねた結果の試みらしい。

某映画の「会議室で起こってるんじゃない！現場で起こってるんだ！」を思い出した。


勤務中は食さず、帰宅してから食べた。

クリームパンがこんなに美味しいとは思わなんだ。いいパン屋から仕入れたのかな？

なんだかんだで1食浮いたのだから本部に感謝。

次回は飲み物もつけてくれ。

前略、ATMの前より

小さな郵便局。ATMはたった1台のみ。

私の前にはご高齢のご婦人がそのATMと独りで戦っている。

なにと戦っているかは不明だけど、刻々と時間は過ぎてゆく。

まあ、高齢者だから仕方ない…諦めてスマホを眺めたりする。


3分ほど経過して戦闘終了。ご婦人は傍らの手提げバックを手に持ちATMを後へ。

しかしながら、ATMはピンポンピンポンなっている。見れば受取口に札が入ったまま。

「お金が入ってますよ」ご婦人に投げかけても、我関せずの態度。

少々イラついていたのもあって「お金お金お金！」やや怒鳴り気味に。

局員がざわつき駆け寄ろうとする者まで。

ようやくご婦人が気付き「あらあらあら」などと言いつつ戻ってきてお金を受け取る。



何の根拠もないけれど、こういうタイプの高齢者がいろんな詐欺に騙されるのでは

…と思った次第。

私が高齢者になった頃に、今では想像できないような詐欺事例が出てくるかもしれない。

自分の金は1銭たりとも死守するべく生きていきますね。