司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

医療法人の社員総会における「委任状による出席者」は,「出席者」にカウントされない?

2018-10-20 02:53:53 | 法人制度
兵庫県HP
https://web.pref.hyogo.lg.jp/kf15/hw11_000000111.html

 上記HPの「医療法人に関する申請・届出」の「2 よくある申請・届出 (1)医療法人の定款変更認可申請」の項の「社員総会議事録例」に次のとおりの注記がある。

「委任状提出者は、議決権はありますが、出席者数としては数えられません。」

???

 医療法人の社員は,原則として(定款に別段の定めがなければ),代理人によってその議決権を行使することができる(医療法第46条の3の3第5項本文)。

 このような場合,例えば,会社法や一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の実務においては,定足数の充足の算定において「出席者」にカウントされるし,決議要件の充足の算定において「出席者」にカウントされる取扱いである。

 医療法と同じ規定ぶりである特定非営利活動促進法第14条の7第2項に関する取扱いも同様である。

 しかし,兵庫県HPでは,「議決権はあるが,出席者数としてカウントされない」という不可解な解説をしている。

 情報提供者によれば,厚生労働省のお墨付きがあるらしい。

 医療法人の社員総会の運営の在り方として,「社員の本人出席が望ましい」という考え方は理解することもできるが,代理人による議決権の行使を許容しながら,出席者数としてカウントしないというのは,背理である。

 然るべき是正が望まれる。


医療法
第46条の3の3 社員は、各一個の議決権を有する。
2 社員総会は、定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の過半数の出席がなければ、その議事を開き、決議をすることができない。
3 社員総会の議事は、この法律又は定款に別段の定めがある場合を除き、出席者の議決権の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
4 前項の場合において、議長は、社員として議決に加わることができない。
5 社員総会に出席しない社員は、書面で、又は代理人によつて議決をすることができる。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
6 社員総会の決議について特別の利害関係を有する社員は、議決に加わることができない。
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町議会で議長選が49回,未だ議長が決まらず

2018-10-13 08:43:23 | 会社法(改正商法等)
讀賣新聞記事
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20181012-OYT1T50112.html?from=ytop_main4

「沖縄県与那国町議会(定数10)で議長の選出が難航し、9月末から議長選が49回も行われる異常事態となっている。9月の町議選で与野党勢力が同数となり、採決に加わらない議長に選出されれば、過半数を占められないため、選ばれても辞退を繰り返している。」(上掲記事)

 地方自治法第116条の規定によるものである。


地方自治法
第116条 この法律に特別の定がある場合を除く外、普通地方公共団体の議会の議事は、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
2 前項の場合においては、議長は、議員として議決に加わる権利を有しない。


 なお,取締役会や理事会の場合は,議長は,議決に加わる権利を奪われるものではなく,議決権の行使を留保しているに過ぎないので,賛否が分かれるケースでは,難しい問題を生ずる。

 この問題に関しては,次の記事で詳説している。

cf. 平成26年9月14日付け「可否同数のときは,議長の決するところによる」旨の定款の定めの可否
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積水ハウス詐欺事件,調査報告書まとまる

2018-02-24 07:55:15 | 不動産登記法その他
日経記事(有料会員限定)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27322100T20C18A2EA6000/

 調査報告によると,

「5月上旬、本物の土地所有者と名乗る者から「売買契約はしていない」という内容証明郵便が届く。「別人との取引で偽造されている」との文面も届いたが、積水ハウスは「怪文書」とみなし、十分な対応を取らなかった。

 49億円を払い込んだ6月1日。積水ハウスのスタッフが建物に入ろうとしたところ何者かの通報でかけつけた警察官に任意同行を求められた。だが「取引を妨害しようとする人たちの仕業」と判断、契約を続行した。」(上掲記事)

ということらしい。ん~,これは・・・。

 そして,会長及び社長の辞任につながったようだ。

cf. 日経記事(有料会員限定)平成30年2月20日
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO27119570Z10C18A2EA1000/

 ところで,取締役総数は,11名であるとすると,解任対象者は,同議案について特別利害関係を有するので,10名が基準となり,全員出席であれば,可決に必要な過半数は,6名となる。「議長は,表決権の行使を一旦留保し,可否同数の場合にはじめて自らの賛否の意思表示をする」という内部ルールを設けているケースが多いのであるが,この場合,議長を除いて6名以上の賛成が必要となる。反対が4名以上あれば,否決ということになるのである。議長を除いて「賛成5名,反対4名」では,否決ということになるのだが。さて・・・。

cf. 「可否同数」に関する過去の投稿
http://blog.goo.ne.jp/tks-naito/s/%E5%8F%AF%E5%90%A6%E5%90%8C%E6%95%B0
※ ぜひ御覧ください。

積水ハウス株式会社 コーポレートガバナンス基本方針
https://www.sekisuihouse.co.jp/company/info/Governance_Guideline.pdf
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学校法人の新理事長選定の理事会決議が無効

2016-09-02 13:09:28 | 法人制度
西日本新聞記事
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/271617

 前提である理事選任の理事会決議が,私立学校法第36条第6項の寄附行為の別段の定めに違反したものであるようだ。

私立学校法
 (理事会)
第36条 学校法人に理事をもつて組織する理事会を置く。
2 理事会は、学校法人の業務を決し、理事の職務の執行を監督する。
3 理事会は、理事長が招集する。理事(理事長を除く。)が、寄附行為の定めるところにより、理事会の招集を請求したときは、理事長は、理事会を招集しなければならない。
4 理事会に議長を置き、理事長をもつて充てる。
5 理事会は、理事の過半数の出席がなければ、その議事を開き、議決することができない。
6 理事会の議事は、寄附行為に別段の定めがある場合を除いて、出席した理事の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
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取締役会と秘密投票

2016-04-18 09:53:45 | 会社法(改正商法等)
日経記事(有料会員限定)
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO99726180V10C16A4EN2000/

 件のセブン&アイの取締役会で,秘密投票(無記名投票)が行われたというお話。

 記事は,批判的であるが,取締役会の表決の方法については,会社法等に特段の規定はなく,また無記名投票が行われたのも,当該議案に限ってということのようであるから,問題なしであろう。

 ところで,取締役会における表決の結果は,取締役15名全員が出席し,当該議案については,賛成7名,反対6名,棄権2名ということだったようである。

 一見賛成多数で可決のように見えるが,特別利害関係人がないということであれば,いわゆる過半数要件は「15名」を基準に考えるから,「8名」の賛成がなければならず,「7名」では過半数に及ばず,否決ということになる。

 このような重要な議案に関して,「棄権」した2名は誰という話もあるが,一般論としては,議長である取締役社長(村田氏)ともう一人であり,私は,信認を問われた形である井阪氏ではないかと推測する。

 通常のケースであれば,議長は,表決権の行使を一旦留保し,可否同数の場合にはじめて自らの賛否の意思表示をするのであるが,今回はどうだったのであろう。

 退席せずの「棄権」は,「賛成しなかった」ということで,結果として「反対」の効果となったものであり,そういった意味では,今回の帰趨を決し得たわけであるが・・。

 通常の取締役会においても,表決の結果,賛成7名,反対6名,留保1名という事態は一般に起こり得るわけであるが,そこで,議長が「じゃあ私は賛成」と表決権を行使することを認めるのか,認めないのか,取締役会規程等で明確にしておくべきであろう。

 議長も取締役会の一員であることから,表決権の行使を認めない取扱いは,難しいと思われるので,「じゃあ~」の時点で「棄権」扱いとすることを不文律としておくことになろうか。
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「可否同数のときは,議長の決するところによる」旨の定款の定めの可否(その2)

2016-02-07 16:03:06 | 法人制度
<解説> 理事会の決議について by 公益法人協会
http://www.kohokyo.or.jp/kohokyo-weblog/topics/docs/20150821kaisetsurijikaiketsugi.pdf

 「可否同数のときは,議長の決するところによる」旨の定款の定めの可否の問題について,丁寧に論じられている。

cf. 平成26年9月16日付け「可否同数のときは,議長の決するところによる」旨の定款の定めの可否
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「可否同数のときは,議長の決するところによる」旨の定款の定めの可否

2014-09-16 14:25:47 | 会社法(改正商法等)
 取締役会又は理事会の決議の方法について,「可否同数のときは,議長の決するところによる」旨の定款の定めを設けたいというニーズがあるようである。

【事例1】
取締役総数9名のうち8名が出席→過半数は5名
議長は,当初から議決権を行使する。
第1号議案については,賛成4名,反対4名
可否同数につき,議長がさらに議決権を行使して賛成票を投じ,承認可決(?)

【事例2】
取締役総数9名のうち8名が出席→過半数は5名
議長は,議決権の行使を一旦留保する。
第1号議案については,賛成5名,反対2名→承認可決
第2号議案については,賛成4名,反対3名→承認可決(?)

【事例3】
取締役総数9名の全員出席→過半数は5名
議長は,議決権の行使を一旦留保する。
第1号議案については,賛成5名,反対3名→承認可決
第2号議案については,賛成4名,反対4名
可否同数につき,議長が議決権を行使して賛成票を投じ,承認可決

 【事例1】のように,特定の取締役(議長)に2個の議決権を与えることとなるような定款の定めは,無効である。

 【事例2】のうち第2号議案のケースについて承認可決の取扱いをするような定款の定めは,会社法が定める決議要件(第369条第1項)を緩和するものであり,無効である。しかし,第1号議案のケースを可決とし,第2号議案のケースを否決とするような定款の定めについては,もちろん有効と解すべきである。

 【事例3】のうち第2号議案のケースについては,【事例1】とは異なり,特定の取締役(議長)に2個の議決権を与えるものではないので,そのような定款の定めは,有効である。

 したがって,次のような定款の定めを置くことが考えられる。

定款第○条 取締役会の決議は,議決に加わることができる取締役の過半数が出席し,その過半数をもって行う。この場合において,議長は,議決権の行使を一旦留保するが,可否同数のときは議長の決するところによる。

 しかしながら,日本公証人連合会の定款認証実務においては,先例の解釈を「議長が当初の決議に参加したか否かを問わず,決議の要件の軽減になるから無効」であるとして,「可否同数のときは,議長の決するところによる」旨の定款の定めを一律に無効であるがごとく取り扱っており,甚だ疑問である。

【参考文献】
松井信憲「商業登記ハンドブック(第2版)」(商事法務)164頁
江頭憲治郎「株式会社法(第5版)」(有斐閣)414頁
江頭憲治郎・中村直人編著「論点体系 会社法3 株式会社Ⅲ」(第一法規)215頁以下
東京弁護士会会社法部編「新・取締役会ガイドライン」(商事法務)55頁以下
公益法人協会「公益法人・一般法人の実務」(公益法人協会)83頁
公益法人information FAQ 1-3-11-6

 なお,拙編著「会社法定款事例集」(日本加除出版)227頁の記載については,改訂の際に調整します。
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可否同数のときは,議長の決するところによる

2013-05-09 12:49:20 | いろいろ
朝日新聞記事
http://www.asahi.com/politics/update/0509/SEB201305080073.html

 村議会において,村長支持派と反対派が勢力均衡している場合に,議長を自派から出すと不利になるからという理由で,就任固辞が繰り返されたという話である。何をか言わんや。


cf. 地方自治法
第116条 この法律に特別の定がある場合を除く外、普通地方公共団体の議会の議事は、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
2 前項の場合においては、議長は、議員として議決に加わる権利を有しない。

日本国憲法
第56条 【略】
2 両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
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