株式会社において,取締役の利益相反取引の承認を要する場合,取締役会設置会社にあっては取締役会,取締役会設置会社以外の株式会社にあっては株主総会が承認機関である(会社法第356条第1項第2号,第365条第1項)。
会社法は,この点に関する別段の定めを許容する条文を置いていない。
ところで,取締役会設置会社における株主総会の権限は,会社法に規定する事項及び定款で定めた事項に限られる(会社法第295条第2項)が,この場合の「定款で定めた事項」に制限はないと解されているので,会社法上取締役会の決議事項とされているものであっても,定款に定めることによって,株主総会の決議事項とすることができる。ただし,取締役会の権限を奪うことはできず,株主総会及び取締役会のいずれもが決議をすることができることになる。
したがって,取締役会設置会社において,定款の定めをもって,取締役の利益相反取引の承認に関して,株主総会の決議事項とすることは可能である(取締役会が承認をすることもできる。)。
というわけで,平成22年9月17日付「取締役会の決議の定足数算定の基準」において,対応策②が考えられると述べたものである。
なお,コメント欄でみうらさんが指摘された「総株主の同意があれば」の点について,例えば譲渡制限株式の譲渡承認の場合のように純粋に株主間の問題であれば,所定の承認機関の承認がなくても「総株主の同意があれば」有効と解されているが,取締役の利益相反取引の承認に関しては,債権者の利害にも影響があるところなので,たとえ総株主の同意があっても,所定の承認機関の承認がない限り,無効である。
ただし,急を要するのであれば,事後の承認(追認)という対応も一策である。
会社法は,この点に関する別段の定めを許容する条文を置いていない。
ところで,取締役会設置会社における株主総会の権限は,会社法に規定する事項及び定款で定めた事項に限られる(会社法第295条第2項)が,この場合の「定款で定めた事項」に制限はないと解されているので,会社法上取締役会の決議事項とされているものであっても,定款に定めることによって,株主総会の決議事項とすることができる。ただし,取締役会の権限を奪うことはできず,株主総会及び取締役会のいずれもが決議をすることができることになる。
したがって,取締役会設置会社において,定款の定めをもって,取締役の利益相反取引の承認に関して,株主総会の決議事項とすることは可能である(取締役会が承認をすることもできる。)。
というわけで,平成22年9月17日付「取締役会の決議の定足数算定の基準」において,対応策②が考えられると述べたものである。
なお,コメント欄でみうらさんが指摘された「総株主の同意があれば」の点について,例えば譲渡制限株式の譲渡承認の場合のように純粋に株主間の問題であれば,所定の承認機関の承認がなくても「総株主の同意があれば」有効と解されているが,取締役の利益相反取引の承認に関しては,債権者の利害にも影響があるところなので,たとえ総株主の同意があっても,所定の承認機関の承認がない限り,無効である。
ただし,急を要するのであれば,事後の承認(追認)という対応も一策である。
」(手元にあるのは第3版)によれば「取締役会を設置することにより株主総会の専権事項を取締役会が決定できる場合」に利益相反取引の承認を分類されています。「出来る場合」とは株主総会でも取締役会でも承認できると解されていると読めるのですが。実務的にも定款に別途の定めがなくとも株主総会の承認でも良いとされていると思うのですが。
取締役会設置会社において,定款の定めなく取締役会の決議事項を株主総会で決定しても,それは取締役会に対する勧告的なもの(いわゆる「勧告的決議」)に過ぎないとするのが支配的な考え方で,登記実務もこれで動いていると理解しています。
例えば,ブルドッグソース事件では,新株予約権の無償割当てを株主総会で決議していますが,その前号議案で定款変更をして,株主総会へ権限を移譲する規定を設けていますよね。
「実務的にも定款に別途の定めがなくとも株主総会の承認でも良いとされている」と指摘されているのは,おそらく不動産登記実務のことだと思います。確かに,不動産登記の実務においては,利益相反取引の承認を証する取締役会議事録の添付を要する場合で,取締役会の承認ができないケースであるとき,株主全員の同意を証する書面をもって,これに代えることができるとして,登記が受理されています。株主総会議事録でもよいとされているのは,株主全員が出席し,かつ,全員が賛成しているのであれば,株主全員の同意を証する書面として取り扱うこととされているからです。しかし,会社法的には問題があるというのが,記事の末尾のなお書です。
定款変更を行えば,株主総会の承認決議は,普通決議で足りることを考えると,不動産登記の実務において,「株主全員の同意」で処理することを否定するわけではありませんが,会社法的には無効と解さざるを得ないと思われます。万全を期すためには,承認が可能となった時点で,事後の承認(追認)という対応をしておくのがよいと思います。
最高裁が下した判断は,「当該事件に限り」,下級審を拘束するのみで,別の事件において,下級審が最高裁判例と異なる判断をすることは禁止されていません。
実務的には,最高裁の判例に従っておけば安全という面はあるにせよ,いつ覆されるかわからないのですから,盲従することなく,リスクがあることは承知しておくことが必要です。
fujiさんへ
登記原因に無効事由があれば登記は受理されないのが原則ですが,あまりに硬直過ぎると実務が回らないことから,いわゆる「善解」理論によって,柔軟な対応がされている場面は多くあります。登記が受理されているから100%問題ない,というわけではないのです。
そこが理解できないようであればもういいです。
匿名の方との議論はなかなか難しいですよね。
ところで記事の逆のパターン、つまり株主総会から取締役会への権限の委任はどこまで許されるとお考えでしょうか。
ある程度の制限内で限定的な委任であればよいような説もあるようですが。
例えば定款変更など、追加する予定の目的を株主総会で決めて、その中から一年以内に取締役会で選択した事業目的のみ定款に反映されるなどは可能でしょうか。
私は募集株式の発行など、わざわざ限定的に条文化されているものがあるので
それ以外の定款変更は無理なのかなと思っています。